プロジェクトマネージャ試験のステークホルダの午後Ⅰ演習 (情報処理教科書 プロジェクトマネージャITのプロ46 (著), 三好 康之 (著)の第1章)

 

プロジェクトマネージャ試験のステークホルダのの午後Ⅰ演習 

 

情報処理教科書 プロジェクトマネージャ 2021年版

を読んでインプットした内容を、要点を引用したり、重要だと思った点を要約したり、
私の感想や考察することで、このブログでアウトプットしようと思います。

 

情報処理教科書 プロジェクトマネージャ 2021年版

 

情報処理教科書 プロジェクトマネージャ 2021年版

  • 作者:ITのプロ46,三好 康之
  • 発売日: 2020/09/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • 本書は、プロジェクトマネージャ試験に合格するための知識とテクニック、
    学習方法など、さまざまな情報を結集した対策テキストです。

の「午後Ⅰ演習 」の紹介された平成30年度 問3の問題を紹介します。

 

問題文

問3 情報システム刷新プロジェクトのコミュニケーションに関する次の記述を読んで、設問1~3に答えよ。

A社は中堅のSIベンダーであり、本社は東京にある。A社は、東京近郊にある中堅不動産P社から現行のCRMシステムを刷新するプロジェクト(以下CRMプロジェクトという)を受注することが決まり、締結契約に向けて準備している。
P社では、現行のCRMシステムが間もなく保守期限を迎えることもあり、P社社長の意向により、最先端のCRMシステムを刷新し、顧客の拡大を図る方針が打ち出された。〔CRMプロジェクトの体制〕

(中略)

〔ステークホルダ登記簿の作成〕
(中略)
B課長はCRMプロジェクトの推進において、これらの問題が再発させないように、ステークホルダマネジメントの観点から事前に対策を検討することとした。
①そこでB課長は、CRMプロジェクトに関わるP社のステークホルダを特定し、その特性を表1の主要なステークホルダ登記簿に整理した。
(後略)

(★以降の問題文は、関連する問題の前後に紹介します)

 

設問1〔ステークホルダ登記簿〕の作成について、(1)から(3)に答えよ。

(1) 本文中の下線①について、B課長が、現行のCRMシステム構築時の問題を再発させないために、ステークホルダ登記簿(P社分)を作成してステークホルダの特性を把握した狙いは何か。
30字以内で答えよ。

▼問題文から抜粋

・P社のプロジェクト責任者と合意した内容について、しばしばP社社長からの見直しの依頼により、スケジュールが遅延した。この原因は、P社側のプロジェクト体制において、P社社長への報告経路や報告の会議体が不明確で、プロジェクトの状況が適切に報告されていないと考えられた。
・開始の参加者に不足があり、会議後に結論が覆されることがあった。

B課長は、CRMプロジェクト推進において、これらの問題を再発させないために、
ステークホルダマネジメントの観点から、事前に対策を検討することになった。
そこでB課長は、CRMプロジェクトに関するP社のステークホルダを特定し、その特性を表1の主要なステークホルダ登記簿(P社分)に整理した。

 

 

解答例
・主要なステークホルダに適切な対応をとること(24文字)
・P社社長などへの報告経路や報告の会議体を整備すること(26文字)
・P社社長など主要なステークホルダに報告し承認をとること(27文字)
・主要なステークホルダへの報告経路や会議体を整備すること(28文字)

 

(2) 本文中の下線②について、R氏からP社社長への報告に際しては必ず事前に
このような対応をしてもらうことでB課課長が防ぎたかったことは何か。
40字以内で答えよ。

 

▼問題文から抜粋

・R氏は、責任感と使命感が強い人物であるが中途入社ということもあり、社長に直接報告した経験が少ない。しかし、プロジェクト責任者として、CRMプロジェクトの状況などP社社長に報告する立場なので、②R氏からP社社長への報告に際しては、P社社長の思いや関心に応える内容になっているか、事前にR氏からQ部長に確認してもらうのがよいとB課長は考えた。

解答例
・P社社長の意向を踏まえた報告内容で再提出が求められること(31文)
・P社社長の知りたいことを適切に報告できず見直し依頼が発生すること(33字)
・P社社長から報告の再提出を求められ、スケジュールや予算に影響すること(34字)
・P社社長の意向に反した報告内容で、報告の再提出や見直し依頼が発生すること(37字)

 

(3) B課課長が、S部長について、
しっかりとしたコミュニケーションマネジメント計画を作成するうえで、重要な人物であると考えた理由は何か。35字以内で述べよ。

▼解答例
・プロジェクトに抵抗感があるが、影響度が高いから(23字)。
・業務要件の確定にS部長の承認が必要だから(20字)
・影響度が高く業務要件の確定にS部長の承認が必要だから(26字)

 

▼問題文から抜粋

・ステアリングコミッティ
 重要方針の意思決定が必要な時点で開催する。
P社社長、Q部長、S部長に出席してもらい、A社とP社で協議してきた重要事項について、R氏からP社社長に報告してもらう。
A社側から【 a 】が出席することによって、意思決定の内容を最終合意する。

 

設問2〔コミュニケーションマネジメント計画の作成〕について、(1)、(2)に答えよ。

(1)本文中の【 a 】に入れる適切な語句を答えよ。

▼問題文から抜粋

〔コミュニケーションマネジメント計画の作成〕


B課長はR氏に対して、表1の記載内容を基に作成したA社のP社のステークホルダに関わるコミュニケーションマネジメント計画案を説明した。

・ステアリングコミッティ
 重要方針の意思決定が必要な時点で開催する。
P社社長、Q部長及びS部長に出席してもらい、A社とP社と協議した重要事項について、R氏からP社社長に報告してもらう。
A社側からも【  a  】が出席することによって、意思決定の内容を最終合意する。

・全体会議CRMプロジェクトの意思と統一を図るために、P社の総務部及び営業部のCRMプロジェクト関係者及びB課長が出席し、月次で開催する。特にS部長には、事前打ち合わせの時間を取ってもうらい、③最先端のCRMシステムを有する機能の利点や日々の営業業務の効果などを説明する。 

 

▼解答
A社社長

 

(2)本文中の下線③について、B課長がS部長に、このような対応を
行う狙いは何か。40字以内で述べよ。

 

▼解答例
・S部長に、CRMシステムが売上向上の効果があることを理解してもらうため(36字)
・最先端のCRMシステムの有する機能をS部長に理解してもらい協力してもらうため(40字)

 

 

設問3〔X社の業務範囲の拡大〕について、(1)から(3)に答えよ。

▼問題文からの抜粋

〔X社の業務範囲の拡大〕
B課長は、X社に委託する業務範囲を拡大するための検討を行った。そこでB課長は、
X社を訪問し、Y主任にヒアリングして状況を確認した。
・X社は、これまで地場の取引先の比較的小規模なシステム開発や保守を中心に行ってきた。また、複数のメンバでチームを組んでプロジェクトを遂行した経験が少ない。

・X社のメンバは、個人の技術スキルは高く、技術面の勉強会も活発に行われいるが、プロジェクト管理の重要性に関する意識が希薄で、プロジェクト管理ルールが浸透していない。
・Y主任は、X社の業務範囲を拡大するためには、プロジェクト管理ルールに従って業務を遂行するとともに、チームとして業務を進める上でプロジェクト管理に関する理解を深めることが必要だと感じている。

 B課長は、これらの状況を改善してX社の業務範囲を拡大するためには、Y主任が推進役となってX社メンバの【  b  】に関する意識を変えることが重要であると考えた。そこでY主任と協議して次の対応策を取ることに合意した。
CRMプロジェクト向けのプロジェクト管理ルールをX社内で規定し、X社からの報告事項、報告時期、報告方法をB課長とY主任の間で合意する。Y主任はX社メンバに周知する。

・プロジェクト管理ルールをX社メンバに定着させるために、Y主任はルールの遵守状況を定期的に確認する。ルールがある程度定着したら、Y主任は④__X社としてプロジェクト管理を関する理解を深める活動を検討する。

さらに、B課長は、X社に設計工程において、顧客とレビューを繰り返しながら仕様を確定していくという経験が少なく、設計工程の進め方がイメージできていない、という状況も確認した。そこで⑤_設計工程からある対応_をしてもらうことを提案した。これらの検討の結果に基づき、B課長はP社及びX社との契約内容を整理することにした。

 

 

(1) 本文中の【  b  】に入れる語句を答えよ。

 

▼解答

プロジェクト管理の重要性


(2) 本文中の下線④について、Y主任が検討するプロジェクトに関する理解を深める活動とは何か。35字以内で述べよ。

 

▼解答例

・プロジェクトにおけるチーム活動の重要性についての開催(30字)

・複数メンバでのプロジェクトチームを組むことによって業務の遂行(28字)


(3)本文中の下線⑤について、B課長が提案した設計工程からのある対応とは何か。30字以内で述べよ。

 

▼解答例

・顧客とA社とのレビューにY主任も同席してもらうこと(25字)

 

 

■ソフトウェア開発の名著の紹介

 

上記の本については、以下のブログでも紹介していますのでご参考になれば幸いです。

 

以上

 

以下は第1章のステークホルダです。

第1章 ステークホルダ

1. ステークホルダ
1.1 基礎知識の確認
1.2 午後Ⅱ 章別の対策
1.3 午後Ⅰ 章別の対策
1.4 午後Ⅱ 章別の対策
午後Ⅰ演習
午後Ⅱ演習

W-SCOPEのWCP株式売却のプレスリリース(売却先 漢拏(ハンラ)グループやWCPの時価総額など)


W-SCOPEの韓国子会社W-SCOPE CHUNGJU PLANT CO., LTD.(以下、WCP)の株式譲渡のプレスリリースからわかる、その譲渡先や今後の展開、WCPの株式数、時価総額など紹介します。

 

▼目次

【WCP株式の一部売却

当社は、2021 年 9 月 9 日に開催した取締役会において、当社の連結子会社である W-SCOPE CHUNGJU PANT CO., LTD.(以下、「WCP」といいます。)の一部の株式を、KB Securities Co., Ltd.と Next Level Co., Ltd.に譲渡することを決議し、本日、譲渡する株式数が確定しました

ので、下記のとおりお知らせいたします。 

といったプレースリリースが、ダブルスコープから出されました。

【譲渡先、譲渡株数は

譲渡(売却)先、譲渡株数は、

合計 2,206,764 株 
内訳

・KB Securities CO., Ltd.:510,644 株

・Next Level Co., Ltd.:1,696,120 株

となっています。

 

譲渡(売却)先は、

KB Scurities Co., Ltd. という韓国の大手の証券会社(投資銀行)と

とNext Level Co., Ltd.  という漢拏(ハンラ)グループの株式投資会社です。

WCP株式譲渡の相手先など-IR開示資料より抜粋

WCP株式譲渡の相手先など-IR開示資料より抜粋

 

WCPの10%以上(約11%)株式を所有することとなったNext Level Co., Ltd.、Next Level Co., Ltd.が属する漢拏(ハンラ)グループに注目したいです。

 

漢拏グループは、鄭周永(現代グループ創業者)の弟 鄭仁永(ジョンインヨウン、1920年 5月6日〜2006年 7月20日)を創業した韓国の財閥企業グループです。

 

創業者が現代財閥 創業者の弟で、創業時の会社が、現代洋行という社名でもわかる通り、源流は現代自動車と同じく、現代財閥です。

主力の事業会社は、マンド(Mando Corporation・万都)という韓国の大手自動車部品企業です。マンドは、ブレーキ装置、ステアリング装置、懸架装置の生産、販売に加え、最近は先進運転支援システム(せんしんうんてんしえんシステム、英: Advanced driver-assistance systems、略称ADAS〔エイダス〕)にも注力しています。

売上高 約5.5兆ウォン(日本円で5000億円程度)の会社で、約1万2千人の従業員で、韓国54.10%、中国23.24%、米国15.85%、インド市場7.91%が主な販売市場です。

 

現代自動車は、Hyundai Mobis Co., Ltd.[現代モービス (株)]という自動車部品会社があり、マンドの販売先でもあると思いますが、マンドの競合する部分もありそうです。

ただ、マンドは、2002年07月    一部の事業を現代モービスに売却していますので、現代自動車現代モービスとは、良好な関係を築いているのではと察しています。

 

 

現代自動車については、上記のブログも参考にしてください。

 

おそらく資本提携だけでなく、具体的な事業提携も期待できると考えています。

 

【WCPの株数は

100%子会社であったWCPの譲渡前株数 14,479,600 株 (約1448万株) とありますので、これが発行済株式総数と考えて良さそうです。

 

にて

有価証券報告書
第1回 新株予約権発行による潜在株式 33293株 ノエンパートナーズの分
第2回 新株予約権発行による潜在株式 16212株
第3回 新株予約権発行による潜在株式  6369株
第4回 新株予約権発行による潜在株式  5790株
と潜在株式数(転換社債分の株式数)合計61664株 約6万株という数字は確認できましたが、分母になるWCPの発行済株式数はわかりませんでした。

といった記事を記載しましたが、分母になる今回のWCPの発行済株式数がわかりました。

 

 

【W-SCOPEの持株比率は

転換社債新株予約権)を考慮した株式数は、

発行済株式数 + 転換社債新株予約権

14,479,600 + 61,664 =14,541,264

となります。

転換社債新株予約権)の潜在株式数は全体の割合、比率(転換前でも、転換後でも0.4%程度の比率)から考えると意外なほど少ないものでした。

 

転換社債新株予約権)の潜在株式の割合が意外なほど少ないこと、WCPの発行済株式数が約144万株と未上場の会社としては意外なほど多く、以前のブログで紹介した記事の転換社債分の株式の比率から、有価証券報告書記載時から大幅な株式分割が実施された可能性が高いので、転換社債新株予約権)の潜在株式が、0.4%という比率(割合)はあり得ないようです。

 


WCPの転換社債の転換価格 1株当たり3,454,134ウォン は、
今回のディールのWCP株価 75,445ウォンの約45倍で、分割されたと考えるのが合理的なようです。

1株を50株に分割したと仮定すると、
14,479,600 + 61,664 ×50  =17,562,800
転換社債新株予約権)を考慮した株式数(潜在株式も加えた株式数)となります。
この場合、W-SCOPE持株比率は、今回の譲渡前で約82%、譲渡後で、約69%となります。

1株を100株に分割したと仮定すると、
14,479,600 + 61,664 ×100  =20,646,000
転換社債新株予約権)を考慮した株式数となります。

 

この場合、W-SCOPE持株比率は、今回の譲渡前で約70%、譲渡後で、約59%となります。
今回の譲渡で、持ち株比率は100%から85%に下がり、上場時に株式の追加売却は難しいかもしれませんが、上場後も、6割程度の株式保有は可能なようです。

 

【WCPの時価総額

譲渡金額:166,490,000,000 ウォン (約1664億ウォン)

譲渡株式数 2,206,764 数
ですから、1株当たり約 75,445ウォンの時価がWCPの株式にあると算定できそうです

時価総額は、発行済株式数 × 時価で、計算しますので

14,479,600 × 75,445ウォン =1兆924億ウォン

日本円(1円 0.095ウォン で換算)で、約1037億円の時価総額となります。

譲渡後でも、約85%(12,272,836の株式数)のWCP株式を保有するW-SCOPEの持分は、

約880億円で、『この880億円を考えると現状の株価、時価総額が安い』と考えるか、

『現状の株価、時価総額に反映されている』と考えるか、人によって意見は分かれそうですね。

ただ、『現状の株価、時価総額が高い』という人は少ないでしょうし、私は、2倍、3倍とすぐになるようなことはないけど、2割、3割ぐらいの上昇は期待できると考えています。

 

【本の紹介】

企業価値評価に関する本を紹介します。

 

 

株式投資でも企業評価の実務が学べる良本です。財務用語の専門知識の理解がない方だと難しく感じられれるようです。ただ、具体例も多く、文体も、口語体なので、読みやすいと評判です。

 

 

 

著者の企業価値評価(実践編)の基本パターンを一冊まるまる使用して解説した本で、。学生か、これから関連実務に携わる者が始めに読む本。企業価値評価の初学者向けに、前半でバリュエーションに必要なコーポレートファイナンス理論の基本を纏め、後半でモスフードサービスなどの事例を紹介しています。

 

以 上

 

 

湯之上隆氏と国会議員との質疑応答 後半(2021年6月1日衆議院・科学技術特別委員会)

▼目次

 

■はじめに

  の続きですが、国会(衆議院)の科学技術・イノベーション推進特別委員会(令和3年:2021年 6月1日(火曜日))で湯之上隆氏が参考人としての意見を開陳し、その後、質疑を行われています。

湯之上隆氏の著書や意見はこのブログでも何度か取り上げていますが、
国会での参考人としての発言も半導体産業(半導体の材料や製造装置も含む産業)だけでなく、自動車産業など幅広い産業の将来に示唆を富む内容と思われるので、利用されたスライドの画像とともに、その内容を紹介します。

 

湯之上隆氏の著書

日本型モノづくりの敗北 零戦・半導体・テレビ (文春新書 942)

日本「半導体」敗戦

「電機・半導体」大崩壊の教訓



■ 維新の会 青山議員の質問で、TSMCの強さなどついて語る

 

青山(雅)委員 日本維新の会無所属の会青山雅幸でございます。

 今日は、大変貴重な意見をありがとうございます。

 私からは、湯之上参考人にお伺いをしたいと思います。

 私は、率直に言いまして、今この半導体というものを、幾ら巣ごもり需要とかいろいろなことで騒がれているとはいえ、取り上げることが、一体どれほどの意味があるのかというふうに思っていたんです。

 今日、湯之上参考人のお話を聞いて、本当に、私が漠然と思っていたこと以外のことで大変重要なことがあるということ、そして逆に、私が直感していたことがやはりそうだったなと確証を持てた点、二つございまして、現実に基づいて物を考えていくということが本当に必要なことだと思っておりますので、湯之上参考人を中心にお話を聞きたいと思っております。

 私の申し上げることで違っていることがあったら、遠慮なく御指摘ください。

 私が思っていたのは、我が国の半導体産業は、ずっと携わってこられていたDRAMとか、確かに世界を席巻しておりましたけれども、いわゆるメモリー半導体の分野である。恐らく付加価値も高く、そして値段も高いロジック半導体は、かねてからインテル、昔はインテルかどうか、的なところ、そこにAMDが加わり、今、GPUでエヌビディアとかが入ってくる。一方、ファウンドリーの部分では、今日も盛んに話が出てくるTSMCが大変な力を持っている。

 そういった中で、漠然と半導体産業をどうにかしようなんといっても、もう到底追いつけるレベルではないと私は思っていまして、例えば、インテルの二〇二〇年の研究開発費は推定で百二十九億ドル、つまり、一兆四、五千億円ですかね。研究開発費の上位十社の総額は四百三十五億ドルで、六四%を占めている。到底、今の日本の企業には、この分野で追いつけるものではないなとは思っております。

 一方で、今日、参考人が大変熱意を持ってお調べいただいたとおり、確かに、そういった最先端のトップのところも、日本の産業なくしてはできないという状況もある。そこを非常に強く思って、やはり何をやるべきかを基本的にきちんと見据えた上で取り組んでいかないと、逆に邪魔するくらいな話である、政府のやることは。

 というのを思ったわけですけれども、その辺について、すごく漠然とした質問で申し訳ないんですけれども、まず、どういうふうにお考えなのか、ちょっと教えていただければ。

○湯之上参考人 何をやるべきかは、非常に重要です。

 アペンディックスの資料を示させていただきます。

半導体材料の韓国への輸出規制 

半導体材料の韓国への輸出規制 


 下手なことをやるぐらいならやめてくれというのが僕の意見なんですけれども、そんな下手なことの代表例が、二〇一九年七月一日に起きた韓国への半導体三材料の輸出規制です。これによって、日本の材料メーカーは大きな被害を被りました。

 

半導体の製造工程のフッ化水素

半導体の製造工程のフッ化水素



 半導体の製造というのは、大体こんなふうになっています。ウェハーがあって、そこを洗浄して、膜を積んで、リソグラフィーでパターニングして、エッチングして、また洗浄して、検査してと。二次元のウェハー上に三次元の構造物を作っていくんですけれども、大体これが千工程ぐらいになります。千チップが同時形成される。

 この洗浄というのが、全部で千工程だとすると、三百工程ぐらいあるんですね。そのうちの百工程ぐらいがフッ化水素なんですよ。フッ化水素の洗浄というのは百工程ぐらいあるんですよ。このフッ化水素を輸出規制しちゃった。

 三材料は、フッ化ポリイミド、EUVレジスト、フッ化水素なんですけれども、このフッ化水素がないと、テレビもできませんし、どんな半導体も、これは丸じゃなくてバツにした方がよかったのかと思うんですけれども、全部にインパクトがあるということですね。

 六月三十日まで大阪でG7のサミットをやっていたんですよ。安倍前総理大臣が、世界の貿易、安定して、仲よく手を取り合ってグローバルにとやっていた翌日に、韓国に対してこれをやったんですね。これは韓国中が大騒動になりました。これは第二の真珠湾攻撃と言われています。韓国のサムスンとハイニックスにフッ化水素の在庫がなくなったら、一個も作れなくなったところなんです。

 これで懲りて、韓国メーカーは、全て日本のボトルネックを洗い出せ、日本がボトルネックになっている材料、装置、部品、全部内製化を目指せというふうにかじを切ることになりました。これは、日本のフッ化水素メーカーにとっては大迷惑、ほかのメーカーも大迷惑なんです。シェアがどんどん下がっていくんです。成功したところから、日本はもういいと締め出されていくんです。ということが起きました。

 ちょっと話がそれたんですけれども、こういう政策をやめてほしいんですよ。

 今、TSMCがRアンドDセンターをつくばに造るなどということを言っています。僕の臆測ですよ、臆測なんですけれども、この第二の真珠湾攻撃が行われたときに、TSMCとかアメリカの半導体の僕の知人が、日本政府というのは怒るとこういうことをするのか、まさかと思うが俺たちにもしないよな、そういうことを言いました。TSMCに、一生懸命、経産省が口説いているわけですね。これを足蹴にしてしまうと、まさかと思うけれどもこれはやらないよなというような警戒感があるんじゃないかと思います。やむなくボードミーティングで百八十六億円計上して、RアンドDセンターを造るかもしれないよというような決定をしたんですけれども、海外から日本というのはこういうふうに見られているんですよ、何か怒らせるとこういうことをやると。だから、是非こういうことはやめていただきたいんですよ。

 では、何をしたらいいのということなんですけれども、一つ提案してもよろしいでしょうか。

 このTSMCと仲よくするということは、日本の未来にとって非常に重要なことなんです。だから、TSMCが今何に困っているということを考えていただきたいんです。

 TSMC、台湾では五月に入ってコロナ感染者が急増しました。今まで完璧に抑え込んでいたのに、コロナ感染者が急増しました。国際線のパイロットを経由してコロナが入ってきたんじゃないかと言われています。これに対してさっと動いたのはアップルです。アップルは、TSMCに対してワクチン支給、こういう協力を申し出ているわけです。

Appleが台湾のワクチンを支援

AppleTSMCへワクチンを支援


 TSMCがある台湾では、もっと困っていることがあります。水不足。

水不足の台湾のダム 

水不足の台湾のダム 


 これはダムなんですよ。今、貯水率が一%なんだそうです。TSMCは、工場全体で二十万トンの水を毎日使います。それで、もう水が足りなくて、まず一七%の取水制限を受けている上に、それでも足りなくて二トンのトラックでピストン輸送しているんですよ。もしそれが途切れたら、半導体工場は止まります。世界的規模でパニックが起きます。

 これはある意味、チャンスかもしれないんです。台湾にとってはピンチなんですよ、世界のインフラが止まっちゃうんですから。TSMCの半導体工場、今、水不足で綱渡りなんですよ。チャンスというのは、日本のトップである皆さんが台湾を訪問して、TSMCを訪問して、創業者のモーリス・チャンとか現会長のマーク・リュウに水不足の解消のための協力を申し出たらどうですか。喜ぶでしょうね。

 これを、ある車メーカー、日本最大の車メーカーで講演する機会があって進言したんですけれども、無視されました。何で我々が三次サプライヤーの台湾メーカーごときに気を遣わなきゃいけないんだと。冗談じゃない、TSMCなくして自動運転車をあなたたちは造れないんだよと反論しましたが。

 でも、日本政府が台湾政府を通じてTSMCに半導体の増産要請をするなんというのは、ちょっと小っ恥ずかしい話です。何か、小学生が先生にチクって気に入らないやつをとっちめているような構図にも見えます。

 日本政府が水不足で困っているTSMCを助けてあげたら、その見返りは大きいと思いませんか。こういうのを戦略的互恵関係、ウィン・ウィンの関係というのだと思います。是非、一考していただければと思います。

日本は水不足問題でTSMCへの支援を 

日本は水不足問題でTSMCへの支援を 



 ちょっと話がそれちゃったんですけれども、済みません。

青山(雅)委員 大変貴重な御提言、ありがとうございます。

 そこで、私、今日のお話を聞いていて非常に強く思ったのが、なぜTSMCがそこまで強いのか。あのインテルでさえも十ナノメートルで限界なところ、七ナノメートルというんですから、これはすごいですよね。二酸化炭素分子で二十個か三十個分くらいの物すごい微細なところですよね。何でそんなことができるのか、どういうゆえんがあって、どういうことで今そこまで強いメーカーになっているのかということを、ちょっと教えていただきたいと思います。

湯之上参考人 お答えします。

TSMCのプラットフォーム 

TSMCのプラットフォーム 

 

 TSMCがロジック半導体のプラットフォーム、デファクトスタンダードを二〇〇四年ぐらいから構築しちゃって、もう盤石なんです。

 垂直統合型、設計から前工程から後工程まで全部やるのを垂直統合型の半導体メーカーといいます。日本はかつてこれが多かったわけです。ところが、ファブレスファウンドリーというのは徹底的に水平分業を推し進めたわけです。

 

IC設計のイメージ

IC設計のイメージ 


 IPベンダー、例えばARMなんというのがありますね。あれはプロセッサーのコアを、設計段階も四段階ぐらいあるんですけれども、その上流工程にARMのプロセッサーコアを提供するわけです。IPとして提供します。それを基にしてファブレスが、例えばスマホ用のプロセッサーというのを設計するんですよ。それで、ファウンドリーがその設計したものを基にウェハー上にチップを作り、後工程の専門の組立てメーカーがパッケージングをするんです。こういうプラットフォームをつくったんです。

 

TSMCのセルライブラリー

TSMCのセルライブラリー 



 これは非常に簡単で、セルライブラリーというのがありまして、これは中馬先生言うところのデザインキットのようなものです。この中に、設計をするための部品が入っています。ファブレスは、ここに入っている部品をぽんぽんぽんと並べるだけで設計ができちゃうんですよ。まず、こういうセルライブラリーという仕組みをつくっちゃいました。デザインキットとも呼ばれます。

 そうすると、メモリーはここに配置、ARMのプロセッサーはここに配置、テキサス・インスツルメンツのDSPをここに配置、この論理回路だけ設計すればいいやと。もう非常に簡単。レゴブロックを作るように設計できるようになっちゃったんです。

熊手のイメージ 

熊手のイメージ 



 これは九州工業大学の川本先生というのが二〇〇五年に示してくれた構図なんですけれども、二〇〇五年ですよ、もうこれをつくっちゃったんです。TSMCのセルライブラリーにアクセスできれば、どこにいようとも、いつでも誰でも同じ設計ができますよ、こういう仕組みをつくっちゃったんです。

 これで、川本先生は非常にユニークなんですけれども、熊手、熊手で世界中のファブレス半導体をかき集めている、こういう構図をつくっちゃったんですよ。非常に便利なセルライブラリー、そこにアクセスしてぽんぽんぽんとキットを並べたら、もう設計が完了しちゃうんだと。

TSMCのファウンドリーシェア 

TSMCファウンドリーシェア 


 その結果がこれです。五十何%のシェアを独占。これがTSMCの強さです。だから、製造が強い、今、最先端を行っているからそこだけが注目されるんですけれども、そうじゃなくて、設計を制しちゃったんです。ファブレスが寄ってくるような、そういうシステムをつくっちゃった。これをプラットフォームとしてつくってしまった。これがTSMCの強さです。

以上です。

 

 

 

■国民民主党(の会派の) 高井議員からの質問で、経済産業省の失敗を語る

○高井委員 国民民主党・無所属クラブの高井と申します。

(中略)

 それでは、湯之上参考人にお聞きしますが、私、この一番最後のページの付録リストというのが、一から八まであって、全部聞きたいなというぐらい興味があるんですけれども、一番聞きたかった八は、今、青山委員の質問で答えていただいたので、ちょっと、七の車産業のボトルネックはTSMCというお話と、あと、あわせて、もう一つ私が聞きたかったのは、やはり、経済産業省がこの間駄目だった原因とか、あるいは何で駄目で、そしてこれからどうすべきかということを、さっき青山委員の質問で大分答えていただいた気はするんですけれども、もし足りない点があれば、その二点、教えてください。

 

○湯之上参考人 最初に、経産省が何で駄目だったかということを答えます。

 セリートというコンソーシアムに属していて、あすかプロジェクトという国家プロジェクトに参画したときのことです。あすかプロジェクトの目標は、日本半導体産業の復権というふうに定義されました。ところが、どうなったら復権と言えるんですか。それは分からぬのですよ。僕はそこに疑問を持った。僕は一課長だったんだけれども、部長に、どうなったら日本半導体復権したと言えるんですか。部長も分からない。今度、取締役のところに行ってきた。分からない。社長まで行った。おまえはつべこべ言わずに技術開発をやっていればいいんだと言われました。

 誰も日本半導体産業の復権の姿を具体的にイメージできていない。そんな中で、技術開発をやる意義を失ってしまった。日立を辞めたのはそういう理由です。

 あすかプロジェクトは、五年間を二回やりました。つまり十年間。その多くをNEC出身の渡辺久恒さんという方が社長をやられたんですが、二〇一〇年にセリート、あすかプロジェクトを閉じるときに記念冊子を作って、最後までセリート、あすかプロジェクトの目的がよく分からなかったと書いているんですよ。最後まで分かっていないんですよ。こんなものをやったって無駄だと思います。

 具体的に、シェアをどのぐらい上げるとか、あるデバイス、あるいはロジックデバイスならロジックデバイスの世界のシェアをこのくらいに上げるとか、何かこういうものがないと、復権と言われたって、ぼんやりした目的を言われても分からないんですよ。

 だから、経済産業省が何か政策立案して、金をつぎ込んで何かやるときに、具体的な、明確な、誰もが分かるような目標を書いていただきたいんですよ。日本の復権とか言われても、どうしたら復権なんだって分からない。これが第一です。

 

 

 次は、車産業ですね。車産業について、皆さん、もっと心配してください。日本の車産業は二〇三〇年ぐらいに壊滅しているかもしれません。壊滅ですよ。


 その理由は、今、ちょっと小さくて申し訳ないんですけれども、車載、車用の半導体メーカーは、四十ナノ以降を全てTSMCにぶん投げているんです。全てTSMCが作っているんです。

車載半導体メーカーのファブライト化

車載半導体メーカーのファブライト化

 世界的な構図というと、こんなのになっているんですよ。完成車メーカーがあります。一次下請、ティア1があります。日本だとデンソーなんというのがありますね。その下に車載半導体メーカーがあります。十社ぐらいあるんですけれども、日本だとルネサスというのがあるんですね。どこにどう注文しようと、最終的に四十ナノ以降は全部、TSMCに行っているんですよ。TSMCがちょっと作るのが足りないとなると、世界中が造れないという事態になるんです。

車載半導体のTSMC依存について 

車載半導体TSMC依存について 

 具体的に言うと、ちょっとややこしいので図を説明しませんが、TSMCの売上高で車載が一%足りない、その額は三千五百万ドル、五億ドルの中の三千五百万ドル足りないというだけで、日米独が、各国車メーカーが造れないという事態になって、TSMCに増産要請するという事態になっているんですよ。これをもっと車メーカーは深刻に受け止めてほしいんです。

TSMCの分野別半導体出荷額

TSMCの分野別半導体出荷額

 

 TSMCの寄与分というのは、車載の世界市場というのは大体五百億ドル、そのうち十五億ドル、たった三%なんです。その三%のうちの〇・一%ぐらい作れないというだけで世界中が大騒動になるぐらいインパクトがあるんです。

 

世界の半導体の分野別出荷額 

世界の半導体の分野別出荷額 

 もっと困るのは、これなんですよ。

 今、自動運転車、自動運転EV車というのをあちこちで開発しているわけです。ホンダがレベル3を出した。トヨタがレベル2を出した。この自動運転EV車の時代、二〇三〇年にはもう来ていると思いますが、この覇者は日本メーカーではないと思います。ここはアップルも乗り出しているわけですね。アップルに対して既存の自動車メーカーは批判的です。トヨタ豊田章男社長は、アップルなんぞ四十年早いとまで言っています。

 

Appleの自動運転EVの可能性

Appleの自動運転EVの可能性

 ところが、アップルにはストロングポイントがあるんですよ。TSMCの売上高に占める割合、TSMCの売上は五兆円ぐらいなんですが、二五%以上、一・三兆円以上をアップルが占めているんです。TSMCをコントロールしている、支配しているのはアップルなんですよ。

 

TSMCの売上(5兆円)の割合 

TSMCの売上(5兆円)の割合 

 車載用の半導体というのは、全ての車用の半導体を含めてもTSMCの売上高の四%にすぎないんですよ。ここにひょっとしたら百社ぐらいが群がっているんですよ、百社ぐらいが。一社当たり〇・〇四%ですかね。TSMCがどっちを優先するというのはもう火を見るより明らかですよね。


 自動運転車を造ります。そうすると、5Gの通信半導体が必要です。これは最先端が必要です。それから、人工知能半導体が必要です。これも最先端が必要です。これを十分に調達できるのはアップルなんですよ。日本の車産業界は、残念ながらこの調達力がないんですよ。

 ということを日本最大の車メーカーに警告したんですけれども、大きなお世話だと言われました。だけれども、政策立案者はもっと深刻に考えてください。これを調達できなかったら日本の車メーカーは壊滅ですよ。二〇三〇年、自動運転車はなくなります。ここを警告しておきます。何とかしてください。そのためには、TSMCとシェークハンドする必要があるんです。

 

 

自民党 松島議員の質問で、エルピーダ倒産の理由を語る

○松島委員 自民党の松島みどりでございます。

 今日、半導体は産業の米という懐かしい言葉を何回か伺いました。実は私、委員長からこのテーマでやらないかという声かけがありましたときにすぐ賛成いたしましたのは、私自身、政治家、国会議員という仕事に就く前、朝日新聞の記者をしておりました。一九八四年から八五年にかけて福岡で経済部の記者をして、シリコンアイランド九州には、日本電気、熊本や大分、そしてまた東芝、TI、三菱電機、いろいろなところに半導体メーカーが来て、それぞれの工場見学もいたしましたし、いろいろ勉強して、非常に胸を張る気持ちで日本の状況を感じたものでした。それがいつの間にこういうふうになってきたやらということで、今日お三方のお話を伺ったわけです。

 特に湯之上さんには、人生を懸けた、小説を書いていただきたいような面白さを感じながら伺っていたのですが、その中でおっしゃった、最後に言われた、台湾に日本からタンカーに入れてでもお水を届ける、台湾というか、特にTSMC。これについては日本と台湾の政治的な関係の難しさもあるかもしれないけれども、これは、産業を考えるときに、本当に要所要所のところにこれから声を上げたいと思っております。

 質問ですが、まず、超高品質をやっていたから韓国に負けた、そこまでは分かるんですが、TSMCに、まあさっきも少し説明がありました、ここは製造が強いだけじゃなくて設計もいろいろなところから取り込んでとあったんだけれども、何で日本のメーカーはTSMCになれないのか、それに近い、代わる存在とか代替できるようなところになれないのかという基本的な質問が一つ。

 もう一つ、付録のリストに書かれた中でまだ答えが出ていない、なぜエルピーダは経営破綻したのか。これも、経産省の問題と、あと、二社が派閥争いという壮絶な戦いというのがありましたけれども、そういったことによるんだろうか。この五番目に、ルネサス那珂工場の火災まで出てきたんですけれども、これも何だったんだろうかというのを教えていただきたいと思います。

 以上です。

○湯之上参考人 湯之上です。

 何か質問がいっぱいあるんですけれども、まず、何で日本はTSMCになれないの、そこからですね。

垂直統合型とファブレス・ファウンドリーの違い

垂直統合型とファブレスファウンドリーの違い

 垂直統合型の企業とファブレスファウンドリーは違いますというこの図を出したと思います。

 日本は、DRAMで強かった時代、DRAMで償却したファブでロジック半導体を作っていました。でも、各メーカー、NEC、東芝、日立、それぞれ違う設計ツール、違うセルライブラリー、違う製造プロセス。世界のデファクトスタンダードじゃないんですよ。それぞれ違うんです。

 ところが、TSMCを中心としたこのファブレスファウンドリー・モデルは、世界標準のIPコア、ARMのプロセッサーとか、それから、世界標準の設計ツール、EDAツール、シノプシスとかケイデンスを使い、世界標準の製造装置を使って世界標準のプロセスをつくる。世界標準なんですよ。だから、世界が、このセルライブラリーを使えば全部TSMCが作ってくれるじゃんといって、こういう構図になったんです。

TSMCのプラットフォーム

TSMCのプラットフォーム

 日本は、それぞればらばらだったんです。設計ツールも違う、IPも違う。それは使いにくいんですよ。日立に頼めばこれだけできるんだけれどもね、でもキャパはこれだけだよね、でも、NECに頼むとなるとまた設計をやり直さなきゃいけないんだけれどもねと。これが日本にTSMCが誕生しなかった理由です。

 次は何でしたっけ。

○松島委員 エルピーダの経営破綻。

○湯之上参考人 ああ、エルピーダが何で倒産しちゃったの。

エルピーダの4回の敗戦

エルピーダの4回の敗戦

 

 エルピーダは四回敗戦したと思っています。

 第一回目、日立とNEC、それぞれ単独でできなくなっちゃったから合弁会社をつくりました。もうこれで敗戦ですよ、実際は。

 僕はここに一年いたんですけれども、シェアは毎年半分ずつになっていった。二〇〇二年には潰れると思いました。ここに、坂本社長、テキサス・インスツルメンツじゃなくてUMCジャパンだったかな、の坂本さんが来て、シェアを上げていったわけですね。この功績はあるんですよ。

 ところが、シェアが上がっているところで、二〇〇九年に産業再生法適用というのを受けるんですよ。三百億円の税金が注入されるんですね。何でシェアが上がっているのにこんなのを受けるのと。

エルピーダの坂本社長の弁明 

エルピーダの坂本社長の弁明 

 更に、二〇一二年には経営破綻しちゃうんですね、あっけなく。

 このときに、経営破綻したときに、東京証券取引所でこんなことを言いました。まとめると、DRAM価格が下落しました、歴史的な円高です、東日本大震災がありました、タイに洪水がありました、以上と。これは全部、外部要因なんですよ。外部要因で倒産した。そんなんだったら誰でも社長はできますよ。外部要因に対応して何とかかじ取りをするのが社長の役割なんですよ。だから、この坂本さんの発言は全部間違っている。社長の発言じゃない。

 じゃ、何で倒産したのというと、こういうことになります。

 いいですか。僕は、ここに一年間社員として在籍したんですね。坂本社長が来て、シェアが急回復。

 

エルピーダの坂本社長の経営の問題点

エルピーダの坂本社長の経営の問題点  

 

 これは営業利益を示しています。赤は赤字、こっちは黒字なんですけれども。

 二〇〇四年から五年にかけて、エルピーダを二回調査しました。その結果、さっき、僕の一番最初の意見陳述のとき、日本は最後のときに三十枚近くのマスク枚数、微細加工の回数をやっていて、韓国より、韓国二十枚、マイクロンの十五枚より随分多いぞと。このとき、エルピーダのマスク枚数は五十枚もあったんですよ。とんでもないなと思ったんです。パソコン用でしょう、このマスク枚数の多さはあり得ませんよと。工程数は千を超えている、千五百ぐらいあって、検査工程も通常の十倍以上あるんですよ。

 ということを坂本社長に直接、これはまずいですよと言ったら、警告したわけですね。広報担当の取締役から出入り禁止になっちゃったんですよ。あいつは何かエルピーダの欠点を次々とあげつらうと、出入り禁止になった。

 要するに、日本半導体産業の過剰技術、過剰品質の病気はずっと引き継がれて重病化していたわけです。この利益率向上対策というのはほとんど行われなかったんです。

 僕は、内部に部下がいたので、何をしていたか全部分かっています。一回だけ利益を出したところはあるんですよ。だけれども、DRAM価格が下落して赤字になり、リーマン・ショックが起きて大赤字になって、円高が進行して、もうこれじゃ立ち行かないから産業再生法を適用して金を注入してもらって、だけれども、大震災とタイ洪水が起きてまた大赤字になって、その二〇一一年、倒産する直前の夏に日経新聞にこういう記事が出ました。エルピーダが設計を大幅に見直して工程数を大幅削減。やっとやったんですよ。だけれども、時既に遅し。倒産しちゃった。

 要するに、マスク枚数が多い、微細加工の回数が多い、原価が高い、利益が出ない。利益を出していないわけですよ。生涯利益は赤です。だから倒産したんです。これが答えになります。

 もう一つ、何かあったけれども。

○松島委員 ルネサスで火災の発生まで出ているから。

○湯之上参考人 ルネサスで三月十九日に火災が発生しました。後にも先にも、こんなにすごい火災になったのを見たことはありません、三十三年間の人生で。先輩に聞いても、半世紀、こんな火災が起きた記憶はないと。半導体工場では火災が起きない、これが唯一の取り柄だった。

ルネサス工場火災の写真

ルネサス工場火災の現場写真

 何で起きたの。幾つか理由が考えられます。僕の推測があります。

ルネサス那珂工場の稼働率

ルネサス那珂工場の稼働率

 まず、これはルネサス那珂工場の稼働率なんですよ。平均稼働率、大体六〇%ぐらいなんです。ちょっと見にくいですけれども、二〇一九年は半導体不況の年で、六〇%に落ちたまま。二〇二〇年、半導体不況から脱したんだけれども、六〇%のまま。多分これは、TSMCにぶん投げていた方が安いものだから、自分たちよりも工程数が短くて歩留りが高いからぶん投げているだけだと思うんですね。

 まず思い出してほしいんですけれども、二月十三日に福島県沖の地震があって三時間停電しました。五百台ぐらいある装置が、全部ばしゃあんと電気が落ちた。その後に、半導体不足だ、車載半導体不足だと、急速立ち上げをする。その最中に、三月十九日にひどい火災が発生したんですよ。この福島県地震による三時間の停電と火災には因果関係があると思っているんです。

 

ルネサスの売上・営業利益・社員数の推移

ルネサスの売上・営業利益・社員数の推移


 ここに至るまでの経緯はちょっと省くんですけれども、まず、これは社員数です。二〇一〇年には四万九千人もいた社員を、作田会長がオムロンからやってきて半分以下に減らした。今、ルネサスには一万八千九百人しかいません。三万人減らしたんですよ。工場関係者、プロセス技術関係者、三万人も減らした。そのような中で、急速に停電した五百台の製造装置を立ち上げる。全部説明すると長くなるので、安全点検がおろそかになっていたと思わざるを得ませんね。あるいは、ばしゃあんと落ちたから、一部、保護回路、保護回路がついていたはずなんですけれども、保護回路が壊れた、そういう装置があった、それが銅配線のメッキ装置だった。そう思っていたら、多分また起きるぞと思っていたら、二回目、ぼや騒ぎがありました。これは更に起きると思います。

 ですので、ルネサス那珂工場の火災というのは、二月十三日の福島県地震で三時間停電した、それを急速に復電して立ち上げなきゃいけなかった、三万人もいない、マンパワーはいない、ベテランもいない、安全点検がおろそかだった、これが火災の要因ではないかというふうに推測しています。

 以上です。

 

立憲民主党 岡本議員の質問で、車載半導体TSMC依存の実情について語る

○岡本(充)委員 ありがとうございます。

 今日は、参考人の皆様方に貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。立憲民主党の岡本でございます。


 今、湯之上参考人の方からお話がありました自動車産業のこれからということで、私、愛知県が地元でございまして、昨日もトヨタの関係者の方とお会いしていたわけでありますが、まさにこれからの新しい自動車の技術、自動運転、そして、EVなのか電動車なのかいろいろ言い方はあるとはいえ、我々は電動車ということで今主張してきているわけでありますけれども、この自動運転電動車が日本の車じゃないんじゃないか、こういう御指摘もあったわけであります。

 まずお聞きしたいのは、この実現ができたときに、先ほど来お話しのTSMCの中におけるいわゆる半導体のシェアが、今は使われているシェアは確かに四%かもしれないけれども、これが世界で実現したときにはもっと増えるんじゃないか。先ほどの話で、発言権はアップルが今は多いかもしれないけれども、これだけの5Gの半導体、それからAIの半導体、こういったものがもっともっと数量、金額が増えてくるというふうになってくると、ここは変わるんじゃないかというのが一つ目の質問で、どうなってくるとお考えなのか。

 もう一つは、この車をやはり日本が生産する、日本が世界をリードしていくためには今まさにその転換が求められているんだというのが参考人のお話だったと思いますけれども、これを日本の車にするそのチャンス、まだあるのではないかと思うんですけれども、そのためにするべきことというのは何なのか、お話しいただければと思います。よろしくお願いします。

 

○湯之上参考人 湯之上です。

 まず、今、TSMCの売上高に占める車載半導体の割合は四%しかありません。これはもっと上がるのではないか。上がる可能性はあるんです。あると思います。あると思いますが、TSMCは積極的にこれはやりたくないんですよ。やりたくない。

 なぜかというと、この車載半導体というのは非常に過酷な条件に耐え得るような仕様を求められます。その仕様をちょっと今日、この図の中には、アペンディックスには用意してこなかったんですけれども、コンシューマー用に比べるとはるかに高い、過酷な条件に耐え得るような、そういう半導体に仕上げないといけないんです。だから、検査工程がやたら多いんです。コンシューマー用に比べると、それこそ十倍以上やらないといけないんです。

 これが、車メーカーあるいはティア1のデンソーなどの言い分は、不良率一ppm、そんなことはあり得ない、百万個に一個不良があったとしても、それで交通事故が起きたら一体誰が責任を取るんだと、不良はゼロでなければいけないということを車載半導体を作るところに要求するんですよ。車載半導体を作るところはそれをどうやって実現するかというと、工業製品にゼロなんてあり得ないんですけれども、でも、ゼロに近づけようと努力はするんですよ。それをライン認定というんですけれどもね。

 例えば、トヨタの自動運転車用の何物かのチップを開発したとします、TSMCが。工程が千工程ある。プロセス開発が完了した。そうしたら、そのプロセスを、一年間ぐらい作り続けるんですよ、それで。安定的にできるようになったらライン認定というのをするんですよ。ライン認定ということをやると、もう製造装置もプロセス条件も一切変えてはいけないというふうに、こういう縛りを受けるんですね。TSMCはそんな縛りを受けたくないんですよ、本当は。

 元プロセス技術者から言わせれば、ここをこう変えればもっとスループットは上がりますよね、生産効率は上がりますよね、歩留りは上がりますよねと、改善点はもう山のようにあるんです、やろうと思えば。それを一切やるなと言われるんですよ。

 TSMCはこの四%を、そういうライン認定を受けて生産しているんですよ。そんな縛りを受けた生産を、じゃ、喜んで今後もやりますか。本気でやるとは思えないですね。今やむなくこれをやっているのは、日米独の政府から怒られちゃった、増産要請を受けちゃった、政府越しに作れと言われちゃった、やばいな、政府に盾突いてろくなことはないから、ちょっとこれは増産しようぜと。TSMCの心のうちを忖度すると、そんなような感じがします。だから、積極的にやりたいとは思っていないと思います。

 もしここに日本が、それでもTSMCさん、作ってくださいよということをお願いするならば、さっきのように困っているところを助けてあげるとか、もうちょっと、ライン認定は日本が一番厳しいんですよ。ヨーロッパや米国でもやっているんですけれども、日本が一番厳しいことをやっているんですよ。もうちょっとグローバルスタンダードのレベルに緩和してくださいよ、価格も上げてくださいよということをやらない限りは、これは上がらないと思います。

 

 

○岡本(充)委員 済みません。だからこそ、日本が電動車で自動運転の車を造っていく上でやらなきゃいけないこと、場合によっては、日本がその分野の半導体でもう一度世界に名のりを上げていくチャンスが出てくるんじゃないかということを私は思うわけですけれども、そのチャンスはあり得るのか。つまり、その先に日本製の自動運転電動車が登場する、それが世界シェアを上げていく、こういう絵が描けるのではないかと私は今お話を聞いていて思ったんですが、それについて先生のコメントをいただきたいと思います。

 

○湯之上参考人 お答えします。

 これはちょっと見にくいんですけれども、車載半導体メーカーは、四十ナノ以降を全部TSMCに生産委託していると言いました。ルネサスが生産できるのは六十五ナノまでです。六十五ナノ。それを一気に五ナノ、七ナノ、まあ自動運転用の5G通信チップとか人工知能チップというのは五ナノとか七ナノの最先端でないと作れないんですよ。いきなり六十五ナノから五ナノ、七ナノへジャンプできますか。できません。無理。せいぜい四十ナノを作ることができるかどうか。でも、三万人も首を切られちゃって、マンパワーはいないんですよ。それもかなり難しい。

 だから、自国生産はほとんど無理です。これが僕の答えになります。TSMCに頼むしかないですね。

○岡本(充)委員 車の生産は最終的に日本でできる可能性はあるのか、最後、その質問についてはどうですか。

○湯之上参考人 事自動運転用の通信チップ、人工知能チップについては、日本で生産できる可能性はほぼありません。TSMCに頼むしかない。これが現実です。

○岡本(充)委員 ありがとうございました。

 

 

 

立憲民主党 城井議員の質問で、東京エレクトロン人気の理由を語る

城井委員 立憲民主党城井崇といいます。

 今日は、貴重なお話をありがとうございました。深い絶望の中に希望の光が二つ、三つという印象で、今日のお話を伺わせていただきました。

 お三方にそれぞれ伺いたいと思いますが、そんな状況を見ている若い世代が飛び込んでくれるかどうか、どう育てていくか、この点でお伺いしたいと思います。それぞれお答えいただければと思います。
(中略)

湯之上参考人 湯之上です。

 中馬先生と基本的に同じなんですけれども、東大では、二年生から三年生になるとき、進学振り分けというのがあるんですね。かつては電気電子というのは最も人気が高くて入りにくいところだったんですが、もう十年以上前からそれが最下位になっている、転落しちゃって、人気がなくなっちゃった。もう十年以上前です。こんな状態が十年以上前から続いているんですね。

 僕は、東北大学の工学部博士課程で、一日八時間、半導体の講義をしています、単位を取らせるために。大体五十人から百人ぐらいの博士課程が参加して半導体の講義をやるんですけれども、合間に、あなた、どこに行きたいと聞くんですよ。半導体はどうと言って返ってくる答えは、東京エレクトロンと来ます。ルネサスとかソニーとかキオクシアとか、来ないんですよ。東京エレクトロンと来ますよ。東京エレクトロンは、半導体製造装置で幾つか独占的な分野があって、給料の、あるいはボーナスのランキングで常にトップにいるわけですよ。あそこに行くと高給取りになれると。

 東京エレクトロンという回答をする人間が何人かいます。だけれども、ルネサスとかキオクシアとかいう回答をする人間はいません。中馬先生と同じになりますが、その企業、産業が輝いていないと優秀な学生は行かないんです。そういうことになっていると思います。

自民党 関議員の質問で、半導体の材料、製造装置産業の日本企業の強さの理由を語る


関(芳)委員 今日は、参考人の皆様、本当にありがとうございました。大変勉強になりました。

 それで、お伺いしたいのは、今現在、湯之上先生がスクリーンで挙げていただいておりますように、日本のいわゆる製造メーカーですとか素材部門のところの強い企業がまだたくさんあります、そういうふうな企業をもっと育てていくことこそが日本の進むべき道だと、お話をお伺いして本当にそのとおりだと思いました。

 このそれぞれの企業は、日本の企業は企業で、すごく努力をしてここまで来たんだと思うんですが、ここまでのシェアを部分的に取れた日本の企業の各経営者は、こういうふうな部分のところだけ強くしようという経営方針を取って、そこは非常にリスクも多いんだと思うんですが、こういうふうに特化して頑張ってきたんだと思うんです。そこのところについて、もう少し詳しく教えていただきたいのが一点。

 その現在今強い日本の企業の方々も、一方、世界においては非常に、常在戦場で、ライバル会社とは開発競争されていると思います。それにおけるいわゆる投資対効果のところが見込めるかどうかも、これも大変な判断だろうと思うんですが、経営としてのペイするかどうかの判断というところは今後ますます厳しくなる中において、湯之上先生が取材をされている中において、日本の今強い企業の人たちも、今後もこの分野でしっかりと集中、特化をして頑張っていこうと思われているような方針を取られているのかどうなのか。そこら辺、現状どのような状況なのかを教えていただけたらと思います。

湯之上参考人 最初の質問なんですけれども、日本には、特徴的に強い製造装置、あるいは材料だとほとんど強いですね。これは、トップメーカー、例えばメモリーだとサムスンファウンドリーだとTSMCにぴったりくっついて、彼らの言うことを一言一句漏らさず聞いて、それを反映する材料なり装置なりを提供し続けているからできていることなんです。

 日本にトップメーカーがあったときは日本にくっついていればよかった。もう日本にトップメーカーはないんですよ。だから、サムスンかTSMC、ここにぴったり張りつくしかないんですね。その努力はすさまじいのです。そこから外れちゃうと、あっという間に脱落してしまう。

半導体材料の企業シェア 

半導体材料の企業シェア 

半導体製造装置の企業シェア 

半導体製造装置の企業シェア 



 よく見ると、例えば製造装置なんかだと、一強プラスその他という構造ができつつある。一社総取り。二、三社というところもあるんですけれども、それにしても、一強若しくは二強プラスその他の構造になりつつある。脱落すると浮上しないんですよ。どの企業も一強を目指している、その道の一強を目指している。脱落者には利益なし。その結果がこうなっている。これはもっと今後進むと思います。

 これが一つ目の質問になりますね。トップ半導体メーカーとくっついて、その需要を取り込んで材料なり装置開発をやっている。一歩外れると脱落する、こういう危機が待っている。

 二つ目は何でしたっけ。

関(芳)委員 二つ目は、今このように強く日本の企業で頑張っている企業も、ますます世界との競争が、同じ分野において自分の会社との競争が激しくなる中において、今後どのような方針を取ろうとされているのか、お願いします。

湯之上参考人 より、トップ、TSMCにくっついていこう、あるいはサムスンにくっついていこう、それ以外は見向きもしない、それを鮮明にする。トップのところから、一番先端を行っているところから、これを何とかしてくれよ、この材料をこうしてくださいよ、この装置はこういうふうにしたいんですというニーズが出て、それを実現すると百台買ってくれるとかというようなビジネスにつながるんですよ。だから、彼らは、トップが言うニーズ、これに応える、スピードを持って応える。スピードが命ですね。時間をかけている暇はないんですよ。

 だから、例えばEUVのレジストでいうと、日本が九〇%のシェアを持っている。ほぼ一社独占なんですけれども、これはTSMCと朝会、昼会、夕会をやっているんですよ。オンラインだからできるんですね。朝、昨夜こういう問題が出た、対処しろ。昼会、どうだ、できたか、こういう提案がある。夕方、やってみたけれども駄目だったぞ。それでまた次の朝会。そういうように、TSMCの要求を全てクリアしていく、これによってこの独占的な地位を築くことができている。これをやり続けるしかないんですよ。

 スピード、このスピードに遅れたら次々と取って代わられる、そういう事態になっています。このように企業は努力しています。

立憲民主党 津村議員の質問で、人材の育成について語る


津村委員 田嶋要委員長が、先ほど、本日、半導体をテーマに選んだ趣旨を詳しく述べてくださいました。

 その延長線上で、お三方に一問だけ手短に聞きたいと思います。


 各分野ごとの課題もあるんですが、ちょっと大きく、これから日本の科学技術政策あるいは科学技術そのものを担っていく人材を日本の中で育成していく、もっと言うと、リクルートしていくためにどういう工夫が、私たち政治家が心がけていけばいいかということについて、お三方から一言ずつアドバイスをいただければと思います。

湯之上参考人 大変難しい問題なんですが、現実的に起きているのは、現職の技術者も大学の先生も、この分野についてはどんどん海外に出ていっちゃっています。これをどうやって止めるのか。

 止まらないんですよ。なぜなら、年俸三倍、五倍、十倍を出すからです。止まらないんですよ。止まらない。これに対して、答えはないです。日本の企業が十倍出せるのか。出せない。だったら、個人の自由ですから、年俸が高いところへ行っちゃう。これはもう止められないんですね。止められない。

 これに対して、僕、答えはないんですよ。どうやってそこに、日本に優秀な人材をいさせて、優秀な技術開発をさせるかという答えは、僕、ないです。

 それからもう一点。ちょっと話は変わるんですけれども、経済産業省半導体を管轄しているのは商務情報局というところだと思います。デバイス戦略室というのが以前あって、今呼び方はちょっと変わっているんじゃないかと思うんですが、その局長だとか課長だとか室長がころころ替わるんですね。早いと一年、二、三年で。替わった室長、課長、局長が何か功績を上げようと、一番功績を上げるのに目立つのが、どこに何千億円出した、これですよ。それの失敗の山が、さっきの、経産省が出てくると全部失敗、あそこなんですよ。

 だから、経産省の人事をきちんとしてもらいたい。やったらやった分の後始末をしてください、反省、分析してください、そういう仕組みをつくっていただきたい。でないと、今後も失敗は続くことになります。

 以上です。

2021年6月1日衆議院・科学技術特別委員会の内容は以下(↓)のブログにも記載しています。

 

chanmabo.hatenablog.com

 

chanmabo.hatenablog.com

 

chanmabo.hatenablog.com

 

 

 

 

以上

 

 

湯之上隆氏と国会議員との質疑応答 前半(2021年6月1日衆議院・科学技術特別委員会)

▼目次

 

■はじめに

 

の続きですが、国会(衆議院)の科学技術・イノベーション推進特別委員会(令和3年:2021年 6月1日(火曜日))で湯之上隆氏が参考人としての意見を開陳し、その後、質疑を行われています。

湯之上隆氏の著書や意見はこのブログでも何度か取り上げていますが、
国会での参考人としての発言も半導体産業(半導体の材料や製造装置も含む産業)だけでなく、自動車産業など幅広い産業の将来に示唆を富む内容と思われるので、利用されたスライドの画像とともに、その内容を紹介します。

 

湯之上隆氏の著書

日本型モノづくりの敗北 零戦・半導体・テレビ (文春新書 942)

日本「半導体」敗戦

「電機・半導体」大崩壊の教訓



自民党石川議員から質問で、日本のマネジメントの無能とTSMCの日本の研究開発拠点について語る

 

石川(昭)委員 自由民主党石川昭政です。

 今日は、三人の参考人の皆様、お忙しいところをお越しいただき、ありがとうございました。(中略、他の参考人の質問、回答の後)

○石川(昭)委員 ありがとうございます。

 最後に湯之上参考人にお伺いします。

 先ほどのプレゼンテーションの中では、日本企業は世界を制した、しかし、だんだんとパーソナルコンピューターの拡大によってその地位が失われていったという、恐竜が絶滅していくような、そういう表現もされていたと資料では承知をしております。

 先ほどの中で、私は、マネジメントの問題も大きいのではないかと。日本は技術で勝てればいいんだという考え方でずっとやってきた、しかし、マーケットを見誤って半導体産業では凋落していったのではないかなと。技術でも負けて、ビジネス、マネジメントでも負けているというのが半導体に表れたのではないかなと思います。

 それで、TSMCがつくばに研究開発拠点を置くというふうになりましたけれども、この技術開発が成功するかどうか、日本にどういう影響があるか、その辺の御見解をお伺いして終わりたいと思います。

○湯之上参考人 これはマネジメントの問題もあるのではないか、こういう御指摘なんですけれども、これに対してまずお答えしてよろしいですか。マネジメントの問題はないです。

 というのは、日本はボトムアップの国なんですよ。マネジメントは何も決めません。部長ぐらいになっちゃうと、無能化して、何にもしません。ボトムアップで決めちゃうんです。だから、これはマネジメントはないんですよ。高品質なものを作れというものが蔓延していて、それに逆らえない状態になっている。したがって、マネジメントの問題はないと思います。

 済みません、もう一度質問をお願いします。

○石川(昭)委員 つくばの研究開発拠点、TSMCの。

○湯之上参考人 ちょっと違うスライドを準備してあるので、そちらを出させていただきます。

○田嶋委員長 申合せの時間を過ぎておりますので。

○湯之上参考人 つくばには、経産省がしきりと、後工程のRアンドDセンターを誘致したんだと言っていますが、これに関する事実はただ一つです。TSMCがボードミーティングで、つまり取締役会で、日本に百八十六億円を投じるという決断をした、認可をした、これだけなんです。つくばとも、RアンドDセンターを造るとも、それはいつなんだとも、何も言っていません。僕は、まだこの話は信用していません。TSMCが正式発表するまでは信じられないんです。

 なぜかというのがここにあります。これはTSMCの売上高の地域別の比率です。

 

TSMCの売上高の地域別の比率

TSMCの売上高の地域別の比率

 

 大体、二〇二〇年ですと五兆円ぐらいの売上げがあるんですけれども、約九割がアメリカなんです。日本はずっと五%程度なんです。九割ぐらい、まあ、中国のファーウェイが脱落して九割になったんですけれども、それまでは大体六割なんですけれどもね。この六割から九割のアメリカにやんややんやと言われて、やっと初めて重い腰を上げて、アリゾナ州に進出すると誘致を認めたわけです。それでも嫌なんです。大体、人材はどうするの、インフラも何も税制も違う国でどうやっていくのと、TSMCにとってはえらい迷惑なんですよ。でも、これに逆らえないんですよ、九割のカスタマー。ところが、日本は五%なんですよ。こんなところに工場を造るいわれは一切ない。

 だから、一生懸命、経産省がアピールしていますけれども、まず工場は絶対にできません。RアンドDセンターも誘致されるというふうに言っているのは経産省だけで、TSMCは一言も言っていません。百八十六億円を認可した、唯一、TSMCが発表しているのはこれ一点だけです。

 以上です。

○石川(昭)委員 ありがとうございました。

 

 

 

立憲民主党 山岡議員から質問で、韓国への技術流出の実情などを語る

○山岡委員 衆議院議員山岡達丸と申します。

 立憲民主党の会派から今回は代表して質疑をさせていただきます。

(中略、他の参考人の質問、回答の後)

○山岡委員 続きまして、湯之上参考人にお伺いしたいと思います。

 基礎研究の長期の話もあるわけでありますが、さはさりながら、私たちも、日本で政治家という立場をさせていただきますと、今目の前の様々な課題、あるいは、技術も研究も産業もできれば日本に様々主導を持ってほしいという思いがある中で、御説明の中でも、栄光の時代から厳しい時代まで中で経験されてきたということで、是非お伺いしたいことなんですけれども、まず、お話しいただいた中で、技術の部分で、技術の勝利もあり、技術の敗北もあったというお話がございました。そして、いわゆるサムスンが、低価格路線の技術力、ここで圧倒的な力を持って市場を席巻したというお話がありました。

 その間に、日本の企業はリストラ等を敢行していく中で、参考人もその中で少しそういう影響を受けてしまったというお話もありましたけれども、私たちが一般に聞きますのは、日本の技術者が海外に行ってしまった、その結果、その技術力をもって海外のメーカーが様々力をつけたんじゃないかというような分析が様々言われてきたということも思うところでありますが、この経過の中で、メーカーの技術、この敗北はあったとしても、技術者の移動、流出等に伴う影響とか、そうしたところというのは参考人の目からどのように映っておられたのかなということを伺えればと思います。

 

○湯之上参考人 湯之上です。今の質問にお答えします。

 まさに日本が韓国にこのように抜かれたとき何が起きたんだということなんですけれども、技術者のレベルで何が起きたんだということなんですけれども、日本はおごり高ぶっていました。一九九五年、時代ですね、ちょうど韓国がこうやって成長してきた頃、NECはサムスンにOEM生産を委託しました。つまり、製造プロセスを全部開示して、このとおり作ってくれと。日立は金星、その後、ラッキーゴールドスターになって今はハイニックスになっているんですけれども、そこにOEM生産しました。いろいろな技術流出のルートが指摘されていますけれども、一番大きいのはこれなんです。日本が韓国に教え込んだんですよ。

 製造プロセスというのは、例えばDRAMですと五百工程から千工程にもなるんです。これは門外不出なんですよ。やつらなんかにこんなものはできるはずがないだろうというばかにした見地から見下ろしていて、OEM生産をさせたんです。一から教え込んだんです。

 僕も、DRAM工場にいるときに、金星の技術者を百人ぐらい受け入れて、二、三人、一からゼロまで教え込んだ記憶があります。教え込んだんですよ。DRAMというのは二年、三年で次の世代に行くんですけれども、絶対にやつらに次の世代のプロセスフローはできないだろう、こんな頭はないだろうとばかにしていたんですね。そこを教え込んじゃったんですよ。それを教え込むのをずっと続けたんです。

 エルピーダができたとき、二〇〇〇年ですけれども、まだNECは、あんなに敗北しているのに、サムスンに教え込む活動を継続していたんですよ。これが第一点。

 第二点目は、これはよくあちこちで指摘されている点なんですけれども、最先端の技術を一件百万円で購入する。韓国のサムスンに顧問団というのがいて、百人規模の顧問団なんですけれども、現役の技術者に、これはという技術者に直撃して、韓国に来てくれと。週末のソウル行きの飛行便が日本の半導体技術者で満席になる、実際起きたことです。東芝ではパスポートチェックしようとしたこともあります。この顧問団の人間に会ったこともあります。日本人です。日本人を中心とした百人ぐらいの顧問団です。このリストをばらまくと、とんでもないことになります。驚くべき人々がこのリストに載っています。ということもありました。

 ですから、経営学者の間では、半導体製造装置にノウハウが体化されたから、それによって技術が流出したんじゃないかなどということを言う人がいるんですけれども、それがゼロであるとは言いません。ですが、違うんです。日本がまず積極的に教え込んだんです。それから、日本の弱みにつけ込んで、百万円で一件、技術情報を買い続けた。こういうことが行われ続けた。さらには、ヘッドハンティングもありました。これはという者は引き抜いた。これが事実、起きたことです。

 

○山岡委員 現場におられたお立場からお話を伺いますと、本当にリアリティーのある、反省すべき話が多くあるということを感じております。

 続いて伺いたいんですが、強いものをより強くする、そして、更に言えば、新たに戦えるフィールドも探していかなきゃいけないかもしれないんですが、この中で、いわゆる政府といいますか、そこが関わってきて全て失敗して、歴史的に見れば、経産省とか革新機構とか政策銀が出てきた時点でアウトであるというお話もありました。

 大変私たちも、政治の立場をさせていただいて、どういうふうに政策を執行していくのかということで非常に考えさせられるお話ではあるんですが、参考人にとって、じゃ、その政治、政府、どういうポジションで、どういうことを役割として期待できるかというか、するべきか、そこの御知見を伺えればと思うんですが、いかがでしょうか。

 

○湯之上参考人 湯之上です。答えさせていただきます。

 今回のこの資料を作るに当たって、装置メーカー、材料メーカー、このようなデータをまとめるに当たって相当多くの方に協力をいただきました。その方々から言われたことをまとめて僕がここで言うことになるんですけれども、最先端の技術をつくるというのはとてもとても大変なことです。日本に、もはや最先端のデバイスメーカーはないんですよ。最先端はサムスンや台湾にある。そことくっついていかないと、最先端の技術はできないんですよ。ここなんですけれども、最先端の装置や部品、材料の開発はより困難を増す。

 日本に産総研があります。セリートのスーパークリーンルーム、二十年前にできたスーパークリーンルームなんですけれども、これがうまく活用できればまだましなんだけれども、これを持ち込んじゃいけない、あれをやっちゃいけない、規則だらけで使い物にならない、使えないんだと。

 だから、せめて、今あるインフラを使いやすくしてもらえないだろうか、あるいは、二千億円の半導体基金をつくったならば、どんな装置、インフラを入れてほしいかというのを、この当事者たちの意見を聞いて、こういう装置を入れてくれたら開発がどっと進むんだけれども、それを使いやすくしてほしいんだけれどもというような現場の当事者の意見を聞いていただけないでしょうか。それを取りまとめてもいいですよ、僕が。

 だから、現場の声なしに官僚だけがやると、とんでもなく難しい、使うことが難しい構造になっちゃうんです。一切使えないという状態が十年以上、産総研のスーパークリーンルームは続いているわけです。ですから、現場の声を聞いていただきたい、それで、インフラを使えるようにしていただきたい、それを政治にはお願いしたいと思います。

 

 

公明党の濱村議員の質問で、半導体コモディティー化していないと語る

○濱村委員 公明党の濱村進でございます。

(中略、他の参考人の質問、回答の後)

あと、湯之上参考人にお伺いしたいんですけれども、ムーアの法則も含めて、ちょっと半導体は、ちょっと言い方は悪いんですが、コモディティー化してきているんじゃないかというような感覚を私は持っていたんですね。そういう意味でいうと、日本で生産することにこだわる必要なんかないんじゃないかなという考え方も戦略としてはあり得ると思ったんです。それでいうと、もはやなかなか差別化できない半導体で、それに投資することは余り意味ないじゃないかと言われると、まあ、そうだねというような気もしてくるわけなんですけれども。

 これは、半導体としての完成品を作る必要があるのか、あるいは、半導体の部品の大半を占める日本の中小企業さんがいて、その方々が支えている、その方々とネットワーク、アライアンスを組んで、仮想的でもいいんですけれども、ちゃんと企業体をつくってしまえば半導体の完成品を作れるんじゃないかと思ったりもするんですが、日本が取るべき、完成品を作るべきかどうなのか、この点について先生のお考えをお聞かせください。

湯之上参考人 湯之上です。

 半導体半導体製造装置の話が何だか混在しているように思うんですけれども、コモディティー化していると言っているのは半導体バイスのことですか。何がコモディティー化しているとお考えですか。

濱村委員 半導体製造装置もそうなんですけれども、ここを厳密に分けて議論するほどの時間的余裕もないので、一般論的にお聞かせいただければありがたいです。

湯之上参考人 そこを一般的にできないんですけれども、半導体バイスは全然コモディティー化していません。日々革新を遂げ、ムーアの法則が終わるなどといって、そんな気配は向こう十年ありません。微細化を続けます。二〇三〇年まで止まることはあり得ません。ですので、コモディティー化はない。TSMCの独り勝ちの時代が二〇三〇年まで続く。その間、微細な配線、トランジスタのチップがTSMCから大量に作られることになる。全然コモディティー化はしません。DRAMやNANDも同じです。全然コモディティー化していません。どんどん微細化は進んでいます。NANDは多層化が進んでいます。

 製造装置についても、とんでもない微細化、微細な半導体、とんでもなく多層化した半導体、NANDとかを作る製造装置、とんでもなく物すごく難しい装置になってきています。全然コモディティー化などはしていません。日進月歩で装置メーカー同士が競争し合っているところです。

 

共産党 畑野議員の質問で、プラザ合意の影響など語る

 ○畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。

(中略、他の参考人の質問、回答の後)

 最初に、三人の参考人の皆さんに伺いたいのは、一九八〇年代のプラザ合意、日米半導体協定についてどのように受け止めておられ、現状に照らして今後の教訓にするべきことがあれば、お述べいただきたいと思います。

()

○湯之上参考人 湯之上です。

 僕は、一九八七年に日立に入社しました。プラザ合意の後です。プラザ合意の前のことは、皮膚感覚として知りません。ですが、これが何かインパクトをもたらしたのではないかということは研究しました。その前後を知っている人たちに大量にヒアリングをしました。工場関係者、開発センターの関係者。驚くべきことに、半導体の開発、生産においては、その前後で何一つ変わっていないんですよ。開発方法、生産方法は何一つ変わっていません。だから、技術におけるインパクトは何もない。

 それから、OEM生産なんですけれども、これはプラザ合意とは全く関係がありません。もっと大量に生産したい、だけれども設備投資をするには予算が限られている、だったらOEMをしよう、これがNECと日立の考え方です。OEMをするには技術を開示しなければいけないんですけれども、さっきも述べたように、彼らはこれをそしゃくして自分のものにする能力はないとばかにしていたから、そういうことをした。ちょっとプラザ合意からは外れちゃいましたけれども。

 プラザ合意によって何かが起きたという痕跡は、僕は見つけることができませんでした。

 以上です。

 

○畑野委員 ありがとうございます。

 次に伺いたいのは、研究者、技術者の皆さんの役割についてです。

 先ほど、リストラの問題、あるいは任期付雇用のお話が湯之上参考人からありましたし、また、第六期科学技術・イノベーション基本計画については原山優子参考人からもお話がありました。この間、委員会で井上大臣にも私も質問をさせていただきました。また、中馬参考人からは、産業の米から社会発展の原動力ということで、位置づけの話がありましたが、先ほどお話があったように、その時々の時代情勢の中で、最先端の分野の研究、技術開発をどういうふうに進めていくのかというのは、やはり現場の技術者、研究者の皆さんの創意、意欲に基づくものが大きいというふうに思うんです。

 それらを生かしていくことができたのか、これからどうやって生かしていくのか、その点について、湯之上参考人、中馬参考人、原山参考人の順番で今度はお聞きできますでしょうか。

 

○湯之上参考人 研究開発を技術者がどのように進めていたか、そういうことですね。

 これは簡単です。僕が技術者だったときは、ムーアの法則に従って、二年で二倍集積度を上げる、二年で七〇%シュリンクする、微細化する、もうこれに従っていればいい、これが至上命題だった。

 これが実は余り正しくなかったんじゃないのかなと思うのは、韓国は違ったんです。韓国の物の作り方と日本の作り方が大きく違っていた、それで負けたんだというのは、経営学者になって初めて分かったんですが、ここですね、二百三十人体制のマーケティングというのがサムスン。一万三千六百人中、専任マーケティングが二百三十人いた。DRAM一種類ですよ、一種類について、二百三十人が世界に散っていた。インドなら、インドに住んで、インドの言葉をしゃべって、インドのものを食って、インド人の友人と食って、インドはどんな電化製品を買うんだ、だからインド用にはどのようなDRAMがどれだけ必要なんだというのを、世界中からマーケティングしているんです。

 つまり、サムスンというのは売れるものを作っていた。日本は、作ったものを売ろうとしていた。だから、日本は、技術者、僕は技術者として、いいものを作れれば売れるんだろう、そう思っていました。これは大きな間違いだったということは、後になって振り返って分かりました。

 

畑野委員 ありがとうございます。

 最後に、湯之上参考人に伺います。

 中小零細企業の役割をおっしゃっていただいたのは、私も現場から聞くとすごく大事だと思いまして、大学の研究するのを大企業が受けるんだけれども、現場では中小零細企業の方が作っていらっしゃるというのも聞いているんですね。製造装置や、それを構成する多数の部品や、あるいは製造材料、今、コロナのことが言われていますが、医薬品を含めて、これは物すごく半導体と関わっているというふうにも伺っています。こういう役割と、先ほどちょっとお述べになりましたが、国はこれに対してどういう役割をしていく必要があるのかというのを併せて伺います。

湯之上参考人 何回か述べた繰り返しになるんですけれども、例えば材料でいうと、非常に日本が強いですよと。ここに名前が出ているのは、みんな一部上場企業です。信越化学とか、JSRとか、昭和電工とか、富士フイルムとか。ここに原料、材料を供給している中小零細企業があるんです。

 一つ、例えばレジストという感光性の材料を作るにも、千種類ぐらいの材料を調合しているんです。その千社を僕に述べろといっても僕は分からないんですけれども、そのぐらいの企業が関係しているんです。そのような千社が寄り集まってやっとこのレジストというものができて、日本が九〇%というシェアを取ることができているんです。

 この開発を推進するに当たって旗印となるのは、やはりJSRとか信越化学のような大企業なんですけれども、そこにひもづいている原材料メーカー、原材料サプライヤーも束になって集めて、ここで開発してくれませんかというような場をつくり、予算を充て、人をそこに出してもらう、そういうことが必要なんじゃないかと思います。

 今、最先端の露光装置、EUVというのは、一台百八十億円もします。次世代のEUVは四百八十億円もします。これ、日本は一台も持っていないんですよ。持っていないんだけれども、EUVレジストは世界シェア九割なんですよ。持っていなくて九割なんです。でも、持っていたらもっと強力になるはずなんです。一台もないのですよ。一台買っていただいて、何か二千億円の基金があるようですので、買っていただいて、それをつくばに置いて、このレジストメーカーたちが、原材料メーカーも含めて、使えるようにしていただければ、非常に日本の材料メーカーにとってはありがたいことだと思います。

 こういうふうに、幾つかの分野はあるんですけれども、まず旗頭になるのは一部上場メーカーなんですけれども、それに関わっている何千というサプライヤーをそこで集めて、開発できるようにしていただければと思います。

 

ここからの内容は次のブログを参考にしてください。

 

chanmabo.hatenablog.com

 

 

以上

 

 

湯之上隆氏、国会で日本の半導体、希望の光を語る(2021年6月1日衆議院・科学技術特別委員会)

▼目次

 

■はじめに

 

の続きですが、国会(衆議院)の科学技術・イノベーション推進特別委員会(令和3年:2021年 6月1日(火曜日))で湯之上隆氏が参考人としての意見を開陳し、その後、質疑を行われています。

湯之上隆氏の著書や意見はこのブログでも何度か取り上げていますが、
国会での参考人としての発言も半導体産業(半導体の材料や製造装置も含む産業)だけでなく、自動車産業など幅広い産業の将来に示唆を富む内容と思われるので、利用されたスライドの画像とともに、その内容を紹介します。

湯之上隆氏の著書

日本型モノづくりの敗北 零戦・半導体・テレビ (文春新書 942)

日本「半導体」敗戦

「電機・半導体」大崩壊の教訓



■日本半導体、デバイスについては挽回不能

日本の半導体は瀕死の重病

日本の半導体は瀕死の重病

 

 

 最後のまとめに入りますが、日本半導体産業は病気です。もはや重病で、死者も出たくらいです。これまで、各社のトップ、産業界、経産省、政府などが病気の診断を行って、まあ人間は、何か熱があるな、せきがあるなといったら病院に行くわけですよ。コロナですか、インフルエンザですか、風邪ですかという診断を受けて、それに伴った処方箋を出してもらうわけですよ。実際、処方したわけですけれども、その処方箋、国プロ、コンソーシアム、合弁は全部失敗です。一つも成功していない。

 つまり、これは何でこうなるかというと、診断が間違っていたんですよ。病気の診断が間違っていたんです。だから、診断が間違っていたから、その処方箋も的を射ていなかったんです。これが歴史的な結果です。病気は治らず、より悪化して、エルピーダのような死者も出た。

 じゃ、日本の半導体に何か望みはないのか、将来に光はないのかというと、日本半導体、デバイスについては挽回不能です。無理。だけれども、希望の光もあるんです。今から述べます。

 まず、半導体を作るには様々な製造装置が必要です。十数種類あります。この中で、全部とは言いません、五種類から七種類ぐらいは市場を独占している装置があります。ここは非常に強力です。

 それから、日本の装置でなくても、アメリカ製であってもヨーロッパ製であっても、それぞれの装置が三千点から五千点の部品で構成されています、その部品の六割から八割が日本製なんです。知られていない中小零細企業がここに何千社といるんです。これがひょっとしたら日本の競争力かもしれない。

 さらには、もう一つある。ウェハーとかレジストとかスラリーとか薬液とか、半導体材料というもの、これはもっと強力なんです。これを具体的に示したいと思います。

 

 

■日本企業が強い半導体材料

半導体材料の企業のシェア 

半導体材料の企業のシェア 

 

 これを作るのに一週間以上かかってしまった。これは一つ一つ説明できないんですけれども、いろいろな材料が必要なんですよ。実はこの三倍ぐらい半導体材料はあるんです。一週間では三分の一しか調べられなかった。しかも、各社のシェアというのは、ちょっと、ねえねえ、教えてよと電話をかけまくって、悪用しないからさ、国会で報告するからちょっと教えてよというのを一週間やって、この図を作ったんです。

 そうすると、見てください、右側に、日本のシェアと書いたんですけれども、九〇%とか七〇%とか、過半を超えるものが多数あるわけですよ。これが一つ欠けても半導体は作れないんですよ。一つ欠けても駄目なんですよ。ここにまず、日本の第一の競争力があります。

 

 

日本企業が強い半導体製造装置

結論を簡単に言うと、次のようになります。

半導体製造装置の企業シェア 

半導体製造装置の企業シェア 

それから、製造装置に行きます。

 製造装置も、これは前工程だけなので、後工程というのはちょっとまとめる時間がなかったんですけれども、前工程だけで十種類ぐらいあります。それで、例えばこの東京エレクトロンというのは、コーター・デベロッパー、詳しく説明しませんよ、でも、九割ぐらいのシェアを持っているわけですよ。熱処理装置も、東京エレクトロンと国際電気を合わせて九割ぐらいのシェアを持っているんですよ。このように、ここにまた数字、日本のシェアを書きましたけれども、五種類から七種類ぐらいにかけては、日本が独占している装置があるんです。これは日本の競争力なんです。

 更に言うと、例えばヨーロッパ、ASML、オランダの装置メーカーで、露光装置をほぼ独占しているんですけれども、この部品の六割は日本製なんです。緑色がアメリカ製の製造装置なんですけれども、この六割から八割が日本製の部品なんです。ここに日本の競争力があります。

 

 

■アジアでの日本での役割

 

アジアでの日本での役割 

アジアでの日本での役割 

アジアを俯瞰すると、こういうふうになっています。

 まず、韓国は、サムスンとかSKハイニックスを擁して、半導体モリー大国となりました。今、ファウンドリーも強化しようとしています。なかなかうまくいっていませんが。

 台湾。TSMCがファウンドリーでチャンピオンです。どこも追いつくことができません。これはもう世界の半導体のインフラと言ってもいいでしょう。もうここを使わないとできないんですよ。日本に来るかという話がありますが、必要ならば質疑のところで説明しますが、少なくとも工場は一切来ません。断言しましょう。来ない。

 中国。これは世界の半導体の三五%以上を吸収して、鴻海、鴻海というもの自体は国籍は台湾なんですけれども、中国に大工場群を持っていて、世界の電子機器の九割とか八割を組み立てているわけですね。世界の工場なんですよ。それが、アメリカからの制裁を受けて、自国でも半導体を作ろうと強化に動いてはいますが。

 それで、日本なんですよ。日本は、装置と材料を世界へ供給している。台湾、韓国、まあ中国は、ちょっと、いろいろな問題があってちゅうちょしています。何か、ここ、いろいろ、アメリカのエンティティーリストに載っちゃったような会社がありますので、ここに出してもいいのかというのはちゅうちょしているところがありますが。欧米にも出している。

 こういう役割分担がアジアで完全に確立されています。

 問題はいろいろあります。ここですね。装置と材料は強いんです。でも、材料の競争力を維持するには問題があるんです。

 例えば東京エレクトロンのような大企業だったら、大規模なRアンドD費も充てることはできるんですけれども、その部品メーカー、三千社とか一万社ある部品メーカーには中小零細企業があって、そういうところは最先端の開発というのはなかなか大変なんです。こういう中小零細の部品メーカーが本当の競争力、世界の製造装置のデファクトを持っていたりするんですよ。こういうところの強化が必要なのかなと思っています。

TSMCにも強い日本企業

TSMCに全てが集中する

TSMCにも強い日本企業


 TSMCが注目されます。TSMCには千社以上のファブレスが殺到している。最先端プロセスだけで五百社ぐらいが来ている。もうキャパはぱんぱんだと。そこに、最先端の製造装置とか最先端の材料が使われているわけですよ。製造装置のうちの半分近くは日本製です。部品まで入れると六割から八割までが日本です。製造材料でいうと、ざっくり言って七割から八割が日本なんです。ここが強いところなんです。

 

■希望の光、強いものを強くしろ

これをまとめると、次のようになります。

日本の半導体の希望の光、強いものを強く 

日本の半導体の希望の光、強いものを強く 

 

 

まとめます。

 一九八〇年代中旬に、日本はメインフレーム用に超高品質DRAMを製造して、世界シェア八〇%を独占しました。一方、一九九〇年代にパソコンの時代が訪れても、相変わらず超高品質DRAMを作り続けて、韓国の安く大量生産する破壊的技術に敗北しました。日本半導体全体も、一九八〇年代中旬でピークアウトしました。シェアの低下を止めようとして、国プロ、コンソーシアム、合弁をやり続けました。しかし、病気の診断と処方が間違っていた。したがって、全部失敗した。日本半導体は挽回不能です、残念ながら。もう無理。ここに税金をつぎ込むのは無駄だと思っています。歴史的に、歴史的にですよ、経産省、革新機構、政策銀が出てきた時点でアウトなんです。これは歴史的な事実です。

 じゃ、希望の光はないのか。あります。今でも競争力が高い五種類から七種類の製造装置、あるいは、日本製でなくても、欧米製であっても、その部品の多数が日本製です。さらに、製造材料については日本が圧倒的な競争力を持っています。したがいまして、強いものをより強くする、これを政策の第一に掲げるべきだと私は思います。

 以上で発表を終わります。(拍手)

 

 

 

ここからの内容は次のブログ(↓)を参考にしてください。

 

chanmabo.hatenablog.com

 

湯之上氏のプレゼン資料に記載のあった企業とその銘柄コードを参考にまで記載します。

半導体素材
ウエハ:信越化学4063 SUMCO3436

レジスト:
ArF用 JSR4185 信越化学 TOK(東京応化)4186
EUV用 信越化学4063 JSR4185 TOK4186

CMPスラリ 
酸化膜 フジミインコーポレーテッド5384
STI用 昭和電工4004 AGC5201
Cu用 富士フィルム4901
Cuバリア用 富士フィルム4901 昭和電工4004

高純度薬液 :
CMP後洗浄液 富士フィルム4901 三菱ケミカル4188 関東化学 非上場
過酸化水素 三菱ガス化学4182 関東化学 非上場
アンモニア水素 三菱ガス化学 
塩酸 三菱ケミカル4188 関東化学 非上場
硫酸 関東化学 非上場 三菱ケミカル4188
フッ化水素酸 ステラケミファ4109 ダイキン6367 森田化学 非上場
ポリマー除去液 TOK(東京応化)4186
イソプロピルアルコール トクヤマ4043 関東化学 非上場

半導体製造装置
コータ・デベロッパ 東京エレクトロン8035 SCREENホールディングス7735
ドライエッチング装置 東京エレクトロン8035 日立ハイテクノロジーズ(日立6501の子会社)
CVD装置 東京エレクトロン8035
スパッタ装置 アルバック6728 
熱処理装置 東京エレクトロン8035
CMP装置 荏原6361
枚葉式洗浄装置 SCREENホールディングス7735 東京エレクトロン8035
バッチ式洗浄装置 SCREENホールディングス7735 東京エレクトロン8035
異物検査装置 日立ハイテクノロジーズ(日立6501の子会社)
欠陥検査装置 日立ハイテクノロジーズ(日立6501の子会社)
マスク検査装置 レーザーテック6920
測長SEM 日立ハイテクノロジーズ(日立6501の子会社)

以上

 

 

湯之上隆氏、国会で日本の半導体崩壊の歴史を語る(2021年6月1日衆議院・科学技術特別委員会)

▼目次

 

■はじめに

国会(衆議院)の科学技術・イノベーション推進特別委員会(令和3年:2021年 6月1日(火曜日))にて、科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件(我が国の半導体産業を取り巻く諸状況及び科学技術、イノベーション推進の今後の在り方について)について、参考人原山優子氏、中馬宏之氏及び湯之上隆氏から参考人としての意見を開陳し、その後、質疑を行われています。

湯之上隆氏の著書や意見はこのブログでも何度か取り上げていますが、
国会での参考人としての発言も半導体産業(半導体の材料や製造装置も含む産業)だけでなく、自動車産業など幅広い産業の将来に示唆を富む内容と思われるので、利用されたスライドの画像とともに、その内容を紹介します。

第204回国会 科学技術・イノベーション推進特別委員会 第4号(令和3年6月1日(火曜日))

といったサイトで、といったサイトで発言・質疑内容の議事録は公開されているが、プレゼンテーション資料とともに紹介されている記事でなかったので、資料とともにこのブログで紹介することで、多くの人にその内容が分かりやすく伝えられたら幸いです。

なお、動画は

衆議院インターネット審議中継

といったサイト(2021年6月1日 科学技術特別委員会で検索して表示)でご覧いただくことができます。

 

湯之上隆氏の著書

日本型モノづくりの敗北 零戦・半導体・テレビ (文春新書 942)

日本「半導体」敗戦

「電機・半導体」大崩壊の教訓

 

■パソコンから半導体の役割と種類を説明する

 

パソコンで説明する半導体

パソコンで説明する半導体 

 

 湯之上参考人 微細加工研究所の湯之上と申します。

 いただいたお題が、過去を振り返り、分析、反省し、その上で将来どうしたらいいんだ、こういうお題だったと思います。ですから、そのとおりのことをお話ししたいと思います。(資料を示す)

 ここにパソコンがあります。皆さん日々パソコンを使われると思うんですが、ここに様々な半導体が搭載されています。

 まず、プロセッサー。これは、シェア一位はインテルなんですが、半導体の微細化、十ナノあたりで失敗してしまって、TSMCに生産委託しようとしています。二位はAMDなんですが、これは完全にTSMCに生産委託して、インテルのシェアを脅かしています。

 それから、パソコン通信ができるということは、通信半導体が入っています。これは、主にアメリカのファブレスクアルコムが設計して、台湾のTSMCが製造しています。

 これらをまとめてロジック半導体と呼びますが、ここがTSMCが非常に強いところです。

 それから、パソコン通信をするとき、自分の画像が向こうに見えるわけです。ここに、画像センサー、CMOSセンサーというもの、これも半導体が入っています。これはソニーが出荷額では世界シェア一位なんですけれども、そのロジック部分は、自分で作らなくてTSMCに生産委託しています。だから、ソニーもTSMCなしにはあり得ない事態になっています。

 それから、NANDフラッシュメモリー。これは、データをたくさん蓄えておくメモリーです。電源を切ってもデータがなくなりません。一位はサムスンで、二位はキオクシア、元東芝メモリですね。

 さらに、電源アダプター。ACアダプターだけではないんですけれども、いろいろなところにパワー半導体というのが搭載されています。ここにはですね、このパワー半導体は、全部じゃないですけれども、一部TSMCが製造しています。

 さらに、もう一つメモリーがありまして、DRAMというもの。これは、プロセッサーと一緒になってワークを行う、ワーキングメモリーともいいます。一位はサムスン、二位はハイニックス、三位はアメリカのマイクロン。

 かつてここは非常に日本が強くて、過去、一九八〇年代の中旬には八〇%を独占していた時代がありました。ここに行ってみたいと思います。

 

 

■日本企業のDRAM事業の崩壊とともに歩んだ技術者人生を語る

DRAMのシェア推移 

DRAMの世界シェア推移 


これが、DRAMの地域別シェアを示しています。八〇年代中旬、本当に八〇%を占めていたんです。非常に強かった。産業の米という言葉はここで生まれました。

 このピークだった頃に、ちょうど僕は、日立製作所に一九八七年に入社して、半導体技術者になりました。最初は、中央研究所。ここでは、微細加工装置の研究開発を八年ほどやりました。次は、半導体事業部。ここは、DRAM工場、DRAMの生産技術に五年ほど携わりました。さらには、デバイス開発センタ。次世代のDRAMの開発をせよということで、次世代開発をやった。

 この頃になりますと、二〇〇〇年近くになりますと、日本のシェアはこんなに下がってしまって、韓国に抜かれて、日本は次々と撤退していきます。

 日立は、NECとの合弁会社エルピーダというのを設立しました。二〇〇〇年の頃です。NECから四百人、日立から四百人、出向社員八百人で形成された合弁会社です。僕は、ここに手を挙げて出向を志願しました。微細加工グループの課長として赴任しました。日本のDRAMを何とかしようと思ったわけです。ところが、ここで行われたのは、NECと日立の壮絶なバトルです。技術覇権争いです。僕は、そのバトルに敗れて半年で課長を降格となり、部下も仕事も取り上げられて、いられなくなっちゃった。

 次に行った行き先は、セリート。セリートというのは、つくばにできた半導体メーカー十三社が集ったコンソーシアムです。今もスーパークリーンルームというのが残っているんですけれども、ここで一年半、国家プロジェクトあすかに従って微細加工をやることになった。

 合計すると十六年ぐらい、半導体の微細加工、半導体の最も重要な技術に関わってきたわけです。

 ところが、二〇〇〇年にITバブルがあって、二〇〇一年に崩壊した。日立は、十万人の社員のうち二万人の首を切りました。そのとき、四十歳課長職以上は全員辞めてくれ、こういう退職勧告がなされました。課長職以上になると組合から脱退するので、切りやすいんですよ。

 僕は、たまたま四十歳課長で、エルピーダとかセリートの出向中の身なんですね。本社から見ると、顔が見えない切りやすい社員。何回も退職勧告を受けて、もう辞めざるを得ない状態になって辞めました。といっても、早期退職制度は使えなかったんです。次の行き先を探していたら早期退職制度を一週間過ぎちゃって、辞表を出しに行ったら、撤回はなしだよと、もぎ取られてしまって、自己都合退職になっちゃって、本当は三千万円ぐらいもらえるはずの退職金が、たった百万円になっちゃいまして、ちょっと今でも女房に怒られておるんですけれども、そういうのがあってですね。

 このように僕はDRAMの凋落とともに技術者人生を歩んじゃったんですよ、意図せずして。

 次に行った行き先は、同志社大学経営学の研究センター。同志社大学経営学の研究センターが新設されて、何で半導体がこんなになっちゃったの、かつて最強だったんじゃないの、これを研究してほしいというポストができて、推薦してくれる人がいたのでここに行きました。

 五年の任期付特任教授だったので、五年間研究をして、二〇〇八年、また舞い戻ってきて、現在、二〇〇八年以降はコンサルタントとかジャーナリストとして今に至っています。

 問題はここですね。何でこうなっちゃったの、過去、最強だったじゃない、それが何でこんなになっちゃうのと。

 

■DRAMのパラダイムシフト

結論を簡単に言うと、次のようになります。

DRAMのシェアとパラダイムシフト

DRAMのシェアとパラダイムシフト 

 これがDRAMのシェアです。この辺りが非常に強かった。

 もう一つグラフを出します。これは何かといいますと、日本のコンピューターの出荷額です。パソコンとメインフレーム、大型コンピューターですね、こういうもの。


 日本のDRAMというのは何用に使われていたのかというと、強かった頃はこのメインフレーム用だったんです。パソコンはまだそんなに世間に普及していなかった。このメインフレームメーカーはDRAMメーカーに何を要求したかというと、一切壊れないものを持ってこい、二十五年の長期保証だと。

 

 よく、DRAMというのはアメリカのインテルが発明したメモリーで、日本がそれを追い越したのはコストなんだ、安価だからだということが言われますけれども、違います。超高品質DRAMを日本は作っちゃったんですよ、本当に作っちゃったんです。だから、これは技術の勝利なんです。

 それは何でできちゃったのというと、例えば、トヨタ流の言葉で言えばカイゼンの積み重ね、経営学用語で言えば持続的イノベーションの積み重ね、こういうもので本当に作っちゃったんですよ。それで、世界を制覇したんです。この時代が長く続けば、僕は日立を辞めることはなかったと思います

ところが、時代は変わるんですよ。コンピューター業界にパラダイムシフトが起きた。メインフレームの時代は終わりを告げて、パソコンの時代がやってくるんですよ。パラダイムシフトが起きたわけですね。パソコンの伸びとともに急成長してきたのが、韓国です、サムスン電子です。

 サムスンはどういうふうにDRAMを作ったかというと、少なくとも二十五年保証なんて要らないよね、パソコンはよく使って十年、まあ五年だよね、三年もてばいいんじゃないの、ほどほどの品質保証でいいと。それよりも、パソコンは大量に要るんだと。大量に要る。しかも、メインフレームのように何千万円で売るわけにいかないんだ、せいぜい何十万円なんだと。このとき、メインフレーム用のDRAMというのは一個十万円とか二十万円したんですよ。でも、パソコン用だったら何百円じゃないといけないよね、だから安価に大量生産することが必要なんだと、サムスンはそのようにしたわけです。

 一方、このとき、本当に僕はDRAM工場にいたわけですよ。パソコンが出てきたことを知らなかったわけじゃないです。サムスンがシェアを上げてきたのも知っていました。僕も日本中のDRAMメーカーの技術者も知っていたんですよ。知っていて、なおかつ、相変わらず二十五年保証のこてこての超高品質DRAMを作り続けちゃったんです。それで、サムスンに敗れたわけです。

 これは、経営学用語で言うと、サムスンの破壊的技術に敗北したんです。技術の敗北なんです。

 

 

■日本企業は安く作る技術で負けた

 

マスク枚数で見る製造コスト 

マスク枚数で見る製造コスト 

 

ちょっとこれはなかなか説明するのは難しいんですけれども、DRAMというのはこんなような構造(筆者補足:上の画像の左下の半導体の構造を参照)をしています。ウェハー上に、トランジスタがあって、キャパシターがあって、配線がある、こういうものを作るんですけれども、縦軸は何かというと、マスク枚数と書いてありますが、これは微細加工の回数だと思ってください。何回、微細加工をやってこういう構造を作るんですか。当然、少なければ少ないほどコストはかからないんですよ。多ければ多いほど高価な微細加工装置を大量に必要とするんです。

 日立は二十九枚。東芝は二十八枚。NECは二十六枚。ところが、韓国勢は軒並み二十枚。アメリカのマイクロンに至っては十五枚、半分。これは明らかに技術の敗北なんですよ。こんなふうにして作っていたから、利益が出なくて、大赤字になって撤退せざるを得なくなったんです。技術の敗北なんです。

 

パラダイムシフトを起こしたサムスン

これをまとめると、次のようになります。

 

 

メインフレームからPCへのパラダイムシフト 

メインフレームからPCへのパラダイムシフト 

 

 八〇年代中旬は、メインフレーム用のDRAMを超高品質で作ることによって、日本は世界一になった。これは正しかった。でも、このときに、日本の開発センターや工場に、極限技術を追求する、超高品質を追求するという技術文化が定着していきます。でも、これは正義だったんです、これで世界一位になったわけだから。でも、定着しちゃうんです。

 九〇年代になって、パソコンの時代にパラダイムシフトが起きた。このとき必要だったDRAMの競争力は低コストなんです。このとき日本は作り方が全く変わらなかったんです。結果的に、そうすると、過剰技術で過剰品質を続けることになっちゃったんです。大赤字になって撤退するわけです。

 一方、サムスンは、適正品質のDRAMを低価格で大量生産して、トップになっていきました。安く大量生産する破壊的技術、これで日本を駆逐した。ここにはマーケティングなんというのもあったんですけれども。

 このエルピーダができたんですが、エルピーダは、超高品質の、こういう病気がもっとひどくなって重篤化して、倒産しちゃいました。

 日本は、軒並みSOC、ロジック半導体にかじを切ったわけです。製品変われど、病気も一切変わらなかった、治らなかった。

 

 

 

半導体地域別のシェアから見る日本企業の敗北

半導体の地域別シェア

半導体の地域別シェア

半導体全体を見ても、こんな感じです。

 これは半導体全体のシェアを示しています。やはり一九八〇年代に五〇%のピークがあります。これが、どんどんどんどんシェアが下がっていくわけです。いろいろ、これを対策しようと、あれこれやったんですよ。ちょっとこれはおいておいて、ここの辺りからですね。何かもう一つ一つ読むのも嫌なんですけれども、山のように対策したんですよ。国プロ、コンソーシアム、合弁会社経産省が主導して、何かもう数え切れないほどやったんです。実際、僕が所属したのは、このエルピーダとか、セリートとか、セリートを核としたあすかプロジェクトとか。これは実際、僕が自分でそこに在籍して経験したわけですけれども、何一つ成功しなかった。何一つシェアの浮上にはつながらなかったんです。大失敗。何でこうなっちゃうのと。全部失敗したんですけれども。

 

ここからの内容は次のブログ(↓)を参考にしてください。

 

chanmabo.hatenablog.com

 

以上

 

参考銘柄 日立 NEC ルネサスエレクトロニクス ソニー 東芝

日立6501 NEC6701 ルネサスエレクトロニクス6723 ソニー6758  東芝6502

 

企業価値(EV)と時価総額は違う話-W-SCOPEの韓国子会社WCP上場のニュースから-


W-SCOPEの韓国子会社W-SCOPE CHUNGJU PLANT CO., LTD.(以下、WCP)が、韓国市場で上場予定(2022年1月から6月)ですが、このWCPを例に企業価値時価総額は違うという話を解説します。また、W-SCOPEのWCP持株比率から、WCP上場後の株価を考えてみました。

 

▼目次

企業価値時価総額の関係


企業価値(EV)の計算方法の計算方法と上場会社と未上場会社が一般的に違います。
EV(いーぶい)は、Enterprise Valueの略称で和訳は企業価値です。

■上場会社

上場している場合は下記の算出式で定義されます。

企業価値の算出式>
企業価値 = ネット有利子負債 + 株式時価総額

(ネット有利子負債)
有利子負債から、すぐにキャッシュにできうるであろうものを差し引いた金額
有利子負債残高 - (現金・預金・短期性有価証券)

(株式時価総額
発行されている株式の時価による価値
{ 発行済株式総数(自己株式を除く) × 株価 }

■未上場会社

未上場会社は、

企業価値は会社が生み出す将来のフリーキャッシュフローを割引いた現在価値で計算されます。

例を出します。

私が保有する自動車1台を販売するための会社(カエル自動車販売)をつくりました。
出資したのは10万円の現金と30万円自動車ローンもついてる中古自動車です。
その自動車は105万円で販売され、ちょうど1年後に105万円が入金されます。
その会社には10万円の現金と30万円の自動車ローンがあります。
現在価値とは将来の利益を現在の金利水準で割り引いたものである。
カエル自動車販売は入金されたら解散します。

1年間しか営業しない会社で1年後105万円の利益を生み出すして解散する会社です。

この会社の『将来のフリーキャッシュフローを割引いた現在価値』は1年後の105万円を5%の金利水準で割り引けば、100万円と計算されます。つまり、100万円が企業価値(EV)です。
ネット有利子負債は
有利子負債残高 - (現金・預金・ 短期性有価証券)
で計算できるので、
30万円の借金 - 10万円の現金  =20万円がネット有利子負債となります。

企業価値 = ネット有利子負債 + 株式時価総額
が成り立てば、
株式時価総額 =企業価値  - ネット有利負債 
株式時価総額 =100万円 - 20万円 
株式時価総額 = 80万円となります。

ちなみにこの80万円は、中古自動車の現在価値と現金の合計と同じで、カエル自動車販売に私が出資した価値となります。

分かりやすい例か自信がないですが、企業価値からネット有利子負債を引いたものが時価総額だということを理解して頂ければ十分です。

 

【WCPの企業価値(EV)と時価総額は違う】

WCPは企業価値(EV)2500億ウォンであった当時、2130億ウォン規模の転換社債を発行した。
ノエンパートナーズ1490億ウォン
KDB産業銀行250億ウォン
三星ベンチャー投資200億ウォン
BNWインベストメント100億ウォン
新韓金融投資(PI自己資本勘定)50億ウォン
新韓キャピタル40億ウォンなどだ。
ポストバリュー(投資後、企業価値)は、4630億ウォンだった。

といった記事が、

https://www.fnnews.com/news/202109051827327767

『DS運用などWCP CBに2000億ウォン投資(2021.09.05 )』といったのニュースにあります。

 

企業価値 2500億ウォンの会社が、有利子負債になる2130億ウォン転換社債を発行したら、この転換社債2130億ウォンがそのまま企業価値に加算され、
2500億ウォン + 2130億ウォン =4630億ウォンが企業価値となります。

つまり、ネット有利子負債が増えれば、その分同じ金額だけ、企業価値が増えるという話です。転換社債も転換(新株予約権を行使)されるまで社債ですから、有利子負債となります。

現在WCPの企業価値(EV)は、2兆5000億〜3兆ウォン台に数年で10倍に増えた。

という記事もあります。

上記のニュースの金額はWCPの企業価値(EV)であって、時価総額でないので注意してください。

2兆5000億〜3兆ウォンは、日本円で2375億円から2850億円です。
WCPのネット有利負債は、新株予約権転換社債 173億円(2020 年 12 月末残高)
と同程度と推定されるので、この173億円を引いた金額が時価総額です
企業価値2375億円から2850億円から173億円を引くと、時価総額は2202億円から2677億円となります。

あまり変わらないような気がしますが、企業価値が下がっても、このネット有利子負債は変わらないので、企業価値が下がった以上に、時価総額は下がります。

現在WCPの企業価値(EV)は、1兆〜2兆ウォン(953億円~1906億円)だとすると、
173億円のネット有利子負債は変わらないので、時価総額780億円から1783億円となります。

現在WCPの企業価値(EV)は、6000億ウォン(573億)だとすると、
173億円のネット有利子負債は変わらないので、時価総額は393億円となります。


【WCP上場後のW-SCOPEの株価は】

上記のニュースによるによるとノエンパートナーズ1490億ウォンの転換社債で、新株発行の株式で、32%ほどの株式(相当の新株予約権)を保有しているようです。
残りの転換社債が640億ウォンでノエンパートナーズの約半分なので、16%ほどの株式(相当の新株予約権)を想像されます。転換社債保有者の株式を合わせると48%となり、W-SCOPEの持株比率は52%となります。

 

50%以上が連結子会社の基準といわれる、そういった基準以上の株式をW-SCOPEは保有するでしょうから、W-SCOPE(ダブル・スコープ)が新たに売却できる株式はほとんどないようです。

▼2021年9月7日追記-----

W-SCOPEの持株比率は52%は低すぎるという意見もあるようです。

会社の支配権の維持のため転換社債分は多くて30%程度で、W-SCOPEの持ち株比率は70%程度になり、上場時にW-SCOPEの持株売却もあると推測する人もいます。

有価証券報告書
第1回 新株予約権発行による潜在株式 33293株 ノエンパートナーズの分
第2回 新株予約権発行による潜在株式 16212株
第3回 新株予約権発行による潜在株式  6369株
第4回 新株予約権発行による潜在株式  5790株
と潜在株式数(転換社債分の株式数)合計61664株 約6万株という数字は確認できましたが、分母になるWCPの発行済株式数はわかりませんでした。

現在の発行済株式数が20万程度であれば、潜在株式も加えた株式数26万株中の潜在株式6万株で約23%が転換社債分となります。

 

ニュースでいうノエンパートナーズが保有する32%という数字は、潜在株式数(転換社債分)も加えた株式数の32%か、現状の発行済株式数に対する32%で変わってきます。

W-SCOPEの持株比率は52%というのは、潜在株式数(転換社債分)も加えた株式数の32%と考えた数字ですが、現状の発行済株式数に対する32%であれば、W-SCOPEの持ち株比率は、100/148で(148は100%に転換社債分48%を加えた数字)という計算で67%になります。これだと、特別決議も単独で可能になる株式数で、妥当な数字かもしれません。

▲2021年9月7日追記終わり-----

 

以下の計算は、W-SCOPEの持株比率52%の数字ですが、参考になればと思い記載します。

 

企業価値(EV)2兆5000億ウォン2375億円 →時価総額は2202億円 (企業価値からネット有利子負債173億円を引いた金額)
 →2202億円 × 52%(W-SCOPEの持分) × 57%(GMB係数)=652億円です。

この652億円程度まで株価の上昇が期待できると考えると
8月6日の終値885円 時価総額481億円ですから35%程度の上昇(株価1194円)できそうです。

1ウォン=0.095円で計算しています。

 

企業価値(EV)2兆ウォン 1900億円→時価総額は1783億円 

→2202億円 × 52% × 57%(GMB係数)=529億円です。

8月6日の終値885円 時価総額481億円ですから10%程度までしか上昇(株価973円)は期待できません。

 

GMB係数については以下のブログも参考にしてください。

韓国子会社が上場しているGMBと上場予定のW-SCOPE - 令和の未来カエルのブログ

【本の紹介】

企業価値評価に関する本を紹介します。

 

 

株式投資でも企業評価の実務が学べる良本です。財務用語の専門知識の理解がない方だと難しく感じられれるようです。ただ、具体例も多く、文体も、口語体なので、読みやすいと評判です。

 

 

 

著者の企業価値評価(実践編)の基本パターンを一冊まるまる使用して解説した本で、。学生か、これから関連実務に携わる者が始めに読む本。企業価値評価の初学者向けに、前半でバリュエーションに必要なコーポレートファイナンス理論の基本を纏め、後半でモスフードサービスなどの事例を紹介しています。

 

以 上