『公共放送と受信料制度は分けて考える』

 

NHKは、「公共放送」・「受信料制度」は一体で受信料制度がないと公共放送ができないと主張するが、そうでもないということが、

NHK問題 』(ちくま新書) – 2006/12/10 武田 徹 (著)
という本に書いてありました。

「世界の、いわゆる公共テレビ放送局29局のうち、純粋に受信料収入で経営されているのはNHK以外にはBBCなど6局にしかすぎない。受信料だけでなく、広告収入、政府資金、寄付金も財源にしている。フィリピンのピープルズテレビジョンネットワークのように広告収入だけに依存しつつも公共放送とされる局がある。」

とのことです。

公共放送の内容よって、日本の公共放送NHKの経営形態、財源論も変わってきますが、『税金でも広告収入でもなく、みなさまに公平に負担していただく受信料だからこそ、特定の利益や意向に左右されることなく、公共放送NHKとしての役割を果たすことができます。』というNHKの主張は、NHKの利益や意向に左右された意見であって、公平中立な意見とはいえませんね。


NHK問題 』(ちくま新書) 』を読んで印象に残った部分は『テレビの憲法理論』(長谷部 恭男著)の引用でした。

NHKが存在しない、広告料を財源とする放送機関のみによる放送体制となれば、利潤の最大化を求める放送事業者は、視聴率の最大化を求めて画一的な番組の制作へむかうことになろうし、広告効果を超える制作費のかかる番組の提供は困難となる。これに対する有効な解決策の一つは、有料放送方式の導入であるが、この方式では、従来の放送メディアが持つ情報伝達の即時性・同時性および家庭内への低コストでの浸透能力という、基本的情報の平等な提供に適した諸特性が失われることになる。すべての放送を有料方式とすることは、視聴者の利益の低下にっつながる恐れが強い。」

 

引用部分が印象に残った部分というのも著者に失礼かもしれませんが、NHKの改革論を議論するときに、傾聴すべき意見だと思いました。

 

改めて、本の紹介です。

NHK問題 』(ちくま新書) – 2006/12/10 武田 徹 (著)

内容(「BOOK」データベースより)

「みなさまのNHK」の信用は地に墜ちた。相次ぐ不祥事や政治との近しい関係が糾され、受信料不払いの激増はいまだ止まない。「民営化」「不払いへの罰則化」から「市民の放送局に再生せよ」といった主張まで、延々と議論がくり広げられている。だが、そこには「放送の公共性とは何か」という問いを徹底して考え抜く視座が欠けているのではないか。本書は、戦前から現代のウェブ社会にいたるメディア史を複眼的にとらえなおすことで、公共放送の新たな可能性をつむぎ出す試みである。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

武田/徹
1958年生まれ。ジャーナリスト・評論家。国際基督教大学教養学部を経て、同大学院比較文化研究科博士課程修了。メディアと社会の相関領域を主な執筆対象とするとともに、国際基督教大学東京大学恵泉女学園大学などでメディア、ジャーナリズム教育に携わってきた。BRC(放送と人権等権利に関する委員会)委員。著書に『流行人類学クロニクル』(日経BP社、サントリー学芸賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)