世襲議員のからくり (上杉 隆 著)を読んで。

世襲議員のからくり】
世襲議員のからくり」として
①政治資金管理団体の非課税相続:かばん
②後援会組織の世襲:地盤
③候補者名の世襲:かんばん
の3つの三ばんを「からくり」としてあげている。
注目されるのは①政治資金管理団体の非課税相続で、
「生前・死後にかかわらず無税で資金が相続できる」ということです。

 

世襲の弊害とその対策】

著書の中で民主党の田島要氏の指摘は世襲の弊害について、要約されています。
「能力・人格・識見の点でベストな人材が候補者として政治の場に出てくるチャンスを限りなく小さくし、政権の固定化に寄与し、日本の政治の質を、総理が平気で仕事を放り出す『三流』まで貶めたこと。また、『政治は特別な家柄の人々』という印象を国民に漠然と与え、その結果『由らしむべし、知らしむべしからず』と官僚政治とともに、『雲の上の』の権力に従順な日本国民のメンタリティを育んできた点を見逃せない。」

世襲批判について「職業選択の自由」「有権者の選択」を持ち出して反論する人も多い。
しかし、政治家の新規参入を困難にして、一般の人の職業選択の自由や、多様な候補者から選挙で投票するという有権者の選択を奪っている事実もあります。

選挙というのは、現職、世襲議員が有利な現状ですから、
公費公営での中立な討論会の実施や法定得票率(選挙費用の一部が公費で負担され、供託金が返還される得票率)の基準の緩和で、新人、非世襲の候補者を応援する仕組みも必要かも知れません。

世襲議員が容易に政党の公認を受けることも問題です。
政党の公認候補者が当選確実となるような選挙においては、
少なくとも公認決定の理由などを各政党は公表するべきだし、
できれば公認候補者を決定するための党内選挙を実施すれば、有権者の関心も深まるでしょう。

 

【テレビ局と政権との癒着】
本書では、「政治記者にはなぜ政治家の二世が多いのか」という章を設けて、
放送電波の権益、放送免許を守るため政治家との関係性を保ちたいテレビ局と、子息を優良企業のテレビ局に就職させ、マスコミなどでの人脈の育成、テレビで顔を売る政治家のメリットが紹介されています。
政権との癒着という意味では、他人を批判できないのがテレビ局かもしれません。

 

【本の紹介】

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世襲議員のからくり (文春新書) (日本語) 新書 – 2009/5/20
上杉 隆 (著)

内容紹介
なぜ彼らは駄目か。胆力無き二世議員増殖の裏に「地盤(後援会)、カバン(政治資金)、看板(知名度)」を無税で受け継ぐ仕組がある

内容(「BOOK」データベースより)
1990年代半ば、世襲政治家が永田町の中枢を占めて以来、日本の政治は劣化した。世襲を守る政治システムは、国民には見えにくい。そのからくりを永田町激怒の深層レポートで明らかにする。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
上杉/隆
1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。テレビ局、衆議院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者などを経て、フリージャーナリストに(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

以上です。