『なぜ人はエイリアンに誘拐されたと思うのか』を読んで


■記憶は脳が作り出す

心理学の名著だと思います。記憶は作られることがよくわかる本です。

『なぜ人はエイリアンに誘拐されたと思うのか』を読んで、
記憶の不確かさで、人は事実と違うことを言う場合、嘘をいうつもりでなく、誤った記憶により言っていることがほとんどであることがわかります。

そのため、人の記憶でなく、記録(つまり資料、データ、録音録画)の大切になるのです。
そして、間違った記憶を持っている人には、なぜ間違っているのか、少し分析して、優しく接してあげるといいと思います。
なぜなら、自己催眠、妄想、宗教的啓示等人間の脳は、事実と違う記憶を作りだすメカニズムがあるようです。

■目次と要点

はじめに:宗教、信仰が希薄になった心の隙間、人生の意味や目的を知りたい欲求が、エイリアン(宇宙人)の誘拐が発生している。

 

第1章 いったいどんないきさつでエイリアンの研究を。
誤った記憶による性的虐待(つまり、事実無根の性的虐待)の調査は、性的虐待の被害者の心情を考慮すると調査が難しいが、エイリアンに誘拐された記憶の調査は、比較的に中立な誤った記憶の調査ができる。

 

第2章 なぜエイリアンに誘拐されたと信じるようになったのか。
エイリアンに誘拐されたという記憶が作られている。

 

第3章 もし起きていないなら、なぜ記憶があるのか。
 幻肢の症状と似ている。幻肢とは切断さてている手足のすでにない部分の痛みを感じること。神経心理学的には理解されている。
 記憶を呼び戻すときに脳が記憶を構築している。記憶の断片を再構築する催眠(自己催眠も含む)では、偽りの記憶が作成される可能性がある。

 

第4章 アブダクション (abduction:エイリアンに誘拐されたこと)の話は、なぜこれほど一致しているのか。
アメリカ合衆国では、テレビや映画で、典型的な地球外知的生命体のイメージがつくられている。
カールユングが語ったように「事実があまりないときは、たいてい個人の心理をあらわすような推測をするもの」なのだ。

 

第5章 どんな人が誘拐されるのか。
空想したり、ユニークな思い込みやアイデアをする傾向がある人
睡眠麻痺や人間関係の強い不安など心的なストレスがあり、その原因を追究している人

 

第6章 もし起きていないなら、なぜ起きたと信じるのか。
アダプション(エイリアンに誘拐されたこと)の話は、科学技術万能時代の新しい宗教の洗礼である。
アダプション(エイリアンに誘拐されたこと)によって、人生の意義、安心、神の啓示、強い精神、新しい自分が得られることが多い。

 

解説 サイエンスライター 植木 不等式
アダプション神話は、アメリカに根付いた文化だ。
山アラシのジレンマ (ダイヤモンド現代選書) 単行本 – 1974/1
レオポルド・ベラック (著), 小此木 啓吾 (翻訳) に
レーザーが開発されから、レーザーで心の中をのぞかれているという被害を訴える
精神的不調を訴える患者が増えた。話を紹介。

■改めて本の紹介です。
『なぜ人はエイリアンに誘拐されたと思うのか』– スーザン・A. クランシー (著) 出版社: 早川書房 (2006/8/1)

www.amazon.co.jp

 

〇内容(「BOOK」データベースより)
「エイリアンに誘拐されたことがある人求む」ハーバード大の心理学者である著者は、記憶の研究の被験者を募る新聞広告を出した。集まったのは、ごく普通の人たちだった―奇妙な思い込みをのぞけば。彼らの話に物証はまったくなく、実際の記憶はないのに誘拐されたのだと語る人もいるが、みな不思議と似たような経験をしている。彼らにいったい何が起こったというのか?科学技術時代の複雑な人間心理の謎を解き明かす書。

〇著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より) 
クランシー,スーザン・A.
ハーバード大学の心理学者。中米経営大学院(INCAE)の客員教授。大学院生時代に行なった、子供時代に性的虐待を受けたという人の「記憶」が本物かどうかという研究で、論議を呼ぶ。

 

以 上 です。