リアル半沢直樹 西川善文氏が、リアル中野渡頭取になる。

 
に続けて、

リアル半沢直樹 西川善文<にしかわ・よしふみ>氏の活躍、活躍というより苦闘という表現があっているかも、その苦闘を紹介します。

どんな活躍をしたのか、彼の回顧録

ザ・ラストバンカー 西川善文回顧録

に従って、紹介しています。 

 

今回は、『第四章 不良債権と寝た男』の中の、西川氏の頭取就任前後の話を紹介します。半沢直樹が中野渡頭取的なポジションになるという話です。

 

中野渡頭取_北大路欣也演

中野渡頭取_北大路欣也

 

日本で一番有名な頭取といえば、フィクションの世界では、ドラマ半沢直樹の東京中央銀行頭取 中野渡謙氏だと思いますが、現実の世界では、元三井住友銀行頭取 西川善文氏かもしれません。

両者とも、合併後のメガバンクで頭取に就任するという共通点がありますが、

中野渡頭取が、温厚な性格で、何よりも「人」を大切にし、合併後も何かと対立する東京第一銀行出身者と産業中央銀行出身者の派閥意識をまとめあげようとしているという人物、人格者として描かれています。一方、西川頭取は、「人」、人の和や気持ちより、ビジネスで必要なことを、忖度せず、容赦なく果断に実行していくというタイプのようで、まさに半沢直樹が頭取になったようなイメージの方のようです。 

都市銀行初の赤字決算

 西川氏は1991年に専務(52歳時)に、1996年に副頭取(57歳時)に、1997年に頭取(58歳時)に就任します。専務の時の活躍として触れておきたいのは、都市銀行初で、約3300億円の赤字決算で、、8000億円の不良債権の償却を実施したことです。

 不良債権の償却とは、倒産した取引先や実質的に経営が破綻している取引先に対する債権について、回収不能額を損失計上することです。不良債権の償却によって、債権を実態に合わせて評価して、銀行の資産状態を健全にして、経営判断を正しくさせることができる と思いますが、当時の銀行業界では、特に都市銀行では、国の金融行政の指導で、赤字決算がタブーで、戦後の混乱期を除いて、赤字決算がなく、住友銀行が初めてだったようです。

 コロンブスの卵ではありませんが、当時の人が「できない」と思っていたことを「できるはず、する必要がある」と果断に実行したということです。

 彼は「思い切って赤字決算しましょう。」と巽会長と森川頭取に進言し、西川氏主導で赤字決算を決定したそうです。

 なお、この住友銀行の赤字決算の発表で、銀行株が買われ、マーケット(株式市場)は赤字決算による不良債権処理が進むと高い評価を下したそうです。

 マーケット、自由経済は、神の見えざる手と表現されることがありますが、西川氏の行動を神が見ていたということです。

頭取就任

  西川氏は、1997年6月に頭取(58歳時)に就任します。戦後の混乱期に50代で頭取になった堀田庄三氏以来の50代での就任だったようです。堀田庄三氏の頭取就任の場合は、終戦後、公職追放により上層部が退陣した影響も強かったと思いますが、西川氏の場合は、当時の巽会長に、「こういう時代は西川氏しかいない。」と推薦されての就任のようで、能力が高く評価されたのでしょう。

 なお、1998年の夏、住友銀行の株価は、他の銀行株と比べて好調で、その理由を「西川プレミアム」と呼ばれたそうです。マーケット、自由経済は、神の見えざる手と表現されることがありますが、西川氏の頭取就任を神が祝福していたということでしょうか。

本の紹介

ザ・ラストバンカー 西川善文回顧録 西川 善文(著) 2011年10月初版

 

 

仕事と人生 西川 善文(著)2021年3月初版

 

 ちなみに、半沢直樹 1 オレたちバブル入行組 (講談社文庫) もKindle unlimited で無料で見れますので、本を買うよりお得かもしれません(2020年9月30日現在)。

 

著者について
西川 善文<にしかわ・よしふみ>
三井住友銀行頭取、前日本郵政社長。1938年奈良県生まれ。1961年大阪大学法学部卒業後、住友銀行に入行。大正区支店、本店調査部、融資第三部長、取締役企画部長、常務企画部長、専務等を経て、1997年に58歳の若さで頭取に就任し8年間務める。2006年1月に民営化された日本郵政の社長に就任するも、政権交代郵政民営化が後退したため2009年に退任。現在は三井住友銀行最高顧問。

 

内容(「BOOK」データベースより)
私は悪役とされることが多かった―。顔が見える最後の頭取=ザ・ラストバンカーと呼ばれた著者が綴った、あまりに率直な肉声!安宅産業処理、平和相銀・イトマン事件、磯田一郎追放、銀行大合併、UFJ争奪戦、小泉・竹中郵政改革。現場にいたのは、いつもこの男だった。密室の出来事すべてを明かす! 

 

逃げたらあかん!
不良債権と寝た男」、死に物狂いの仕事人生

安宅産業処理、平和相銀・イトマン事件、磯田一郎追放劇、銀行大合併、UFJ争奪戦、小泉・竹中郵政改革……。現場にいたのは、いつもこの男・西川善文だった。「最後の頭取」=ザ・ラストバンカーと呼ばれた著者が綴った、あまりに率直な肉声!

マスコミ報道の騒乱の中で失われた金融史のミッシングリングを埋める。

<目次>
◎第一章 バンカー西川の誕生 ◎第二章 宿命の安宅産業 ◎第三章 磯田一郎の時代
◎第四章 不良債権と寝た男 ◎第五章 トップダウンとスピード感 ◎第六章 日本郵政社長の苦闘 ◎第七章 裏切りの郵政民営化

以上です。

 

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