■出る順5位のタスク制御
『情報処理教科書 出るとこだけ!応用情報技術者[午後]』によると、
選択分野:組込みシステム開発
の中では、
タスク制御の出題が圧倒的に多いそうです。
組込みシステムというと難解な内容を想像しますが、出題の材料が、防犯ブザー(平成30年春)、
ドライブレコーダ(平成29年秋)など、身近な題材で、少量の前提知識をもとに、問題中から
根拠を探すことで、正解できることが多いそうです。
■サービスマネージメントのポイント
の出る順5位「タスク制御」
の内容を参考に、タスク制御で覚えるべきポイントを以下に記載します。
① ディスパッチとプリエンプションについて説明せよ。
▼ディスパッチ
語源はdispath(割り当てる)に由来し、優先度の高いタスクが低いタスクから、
CPUの実行権を奪うこと。
実行可能状態から、実行状態へ変化する。
▼プリエンプション
語源はpreemption(横取る)に由来し、優先度の高いタスクに、低いタスクが
CPUの実行権を奪われること。
実行状態から、実行可能状態へ変化する。
② タスクスケジューリングのトリガについて、主な方式を二つ挙げ、違いを説明せよ。
リアルタイムOSにおいて、複数のタスクが効率よく切り替わる方式で、
トリガと優先度を組み合わせで判断して、タスクを切り替える。
トリガとは、タスクを切り替わるタイミングで、主な方式は、
イベントドリブン方式とタイムスライス方式がある。
イベントドリブン方式は、システムの状態が変化したときに、
現在の必要なタスクに切り替える方式である。
タイムスライス方式は、時間の経過とともにタスクを切り替える方式で、
各タスクに割り当てられたタイムスライス(タイムクオォンタム)が経過すると、
タスクを切り替える。
③ タスクスケジューリングの優先度について、主な方式を3つ挙げ、違いを説明せよ。
優先度とは、実行すうるタスクを選ぶ時の基準で、主な方式は次の通りである。
優先度方式は、
タスクに付けられた優先度の高いものから順に実行する方式である。
優先度が高いタスクばかり実行することがならないように、時間を経過するとともに、
優先度を下げる方式などと併用する。
タスク実行中にプリエンプション(実行中から実行可能状態に変えること)が発生する方式で、プリエンプション方式である。
到着順方式は、
タスクが到着した順で実行する方式である。実行中のタスクがすべて終了して、
次のタスクが実行される。
タスク実行中にプリエンプション(実行中から実行可能状態に変えること)が発生しない方式で、
ノンプリエンティブ方式である。
ラウンドロビン方式は、
タスクが到着した順に実行する方式です。
ただし、タイムクウォンタム(処理の切替の間隔)が経過すると、実行中のタスクは、
処理の途中であっても、実行を取りやめ、その次のタスクを実行する。
持ち回りで実行する方式で、輪番制で、プリエンプティブ方式の一つである。
④マスカブル割込とノンマスカブル割込の違いを説明せよ。
割込みとは、処理を実行する起点となる動作である。
現在実行中の処理を一時停止させ、その処理に割り込んで、必要な処理を実行する。
割込みにより実行した処理を終了した場合、
一時停止中の処理を再開させ、元の状態に復帰する。
割込みの特徴は、次の通りである。
割込みにより、周辺機器の状態が変化したら、必要な処理を実行する。
例えば、キーが入力されたら、割込みが発生し、
入力された文字を画面表示する処理を実行する。
割込みが発生しない場合は、CPUが定期的に周辺機器の状態を調べなければならず、
必要な処理の実行が遅れることがある。
割込みの主な種類は、以下の通りである。
マスカブル割込みは、
特定の割込みの発生を許可、禁止できる種類の割込みである。
割込みを禁止すると、以降、割込みは発生しない。
例えば、同じ割込みが発生しないように、1回目の割込み発生時に、
割込みをマスク(禁止)するようにする。
その後、再び、割込みが発生しなくなったら、割込みのマスクを解除する。
ノンマスカブル割込みは、
特定の割込みの発生を制御できない種類の割込みである。
⑤ タイマ割込みにおいて、タイマの経過時間を求める式を答えよ。
タイマ割込みとは、設定された経過時間になったら、
割込みを発生させて通知する割込みである。
クロック、カウンタ、分周比により、実現する。
タイマ割込みのタイマの経過時間は、次の計算方式で求める。
・タイマの経過時間 = クロック周期 × カウント値 × 1/分周比
クロックとは、一定周期でON・OFFを繰り返す回路である。
クロック周期は、1回あたりのクロックの発生時間である。
クロック周波数とは、1秒あたりのクロックの発生回数である。
カウンタとは、クロックの発生回数を数えるための回数であり、
ダウンカウントの場合、クロックが発生するたびに、カウント値を1減らし、
最終的に0になった場合、割込みを発生させる。
8ビットタイマカウンタとは、2進数で8桁のため、カウント値は0から255。
16ビットタイマカウンタとは、2進数で16桁のため、カウント値は、0から65,635。
⑥ 分周比を使う目的は何か。
分周比とは、クロック周期が短いため、カウント値がすぐに0になる事態を防ぐ目的で利用される。
何回に1回だけ、周期的なタイミングで、カウント値が減るようにするための値である。
分周器により設定する。
例えば、分周比を32とした場合、クロックが32回(32分周)発生して初めて、
カウント値が1減る。
⑦ ウォッチドッグタイマが検知し、通知するものは何か。
ウォッチドッグタイマは、システムが故障状態であることを検知、通知する。
ウォッチドッグタイマは、
システムが故障状態であることを検知して、通知するためのタイマである。
カウント値を次第に減らし、最終的に0になった場合に、割込みを発生させる。
システムが正常稼働している場合、ウォッチドッグタイマは、一定時間ごとに
カウント値を初期値に戻す。そのため、0になることはなく、割込みは発生しない。
システムが稼働した場合、故障により、ウォッチドッグタイマは、
一定時間ごとにカウント値を初期値に戻す処理を実行できない。
そのため、カウント値が減り続け、最終的に0になり、割込みが発生する。
つまり、
「カウント値が初期値に戻らず割込みが発生した時は、
システムが故障しているからだ」と判断している。
ノンマスカブル割込みを該当します。
⑧ セマフォを使う目的は何か。
セマフォを使う目的は、
タスクが利用可能かどうか記録するためである。
セマフォとは、semaphore(手旗信号や鉄道の腕木式信号機)に由来し、
資源の利用について、複数のタスクを排他制御を行うために、
タスクが利用可能かどうか記録するための仕組みである。
資源とは、センサやファイルなど、同時利用数に制限があるものの意味である。
セマフォを利用することで、1つのタスクから同時に実行できない資源を
タスクBがタスクAのために利用できず、
その後、利用できるようになる例は、以下の通りである。
(1)タスクAは、資源を利用する場合、P操作:資源を獲得する操作 により、
セマフォを獲得する。その間、タスクBは資源を利用できない。
(2)タスクAは、資源の利用を終了すると、V操作:資源を開放する操作により、
セマフォを開放する。
(3)タスクBは、資源を利用できる。
⑨ 周期と周波数について説明せよ。
周期とは、
1回あたりの振動時間である。単位は秒である。
例えば、振り子で、
「左に触れて中央に戻り、さらに右に触れて中央に戻る」
という振動のサイクルを1周期という。
周波数とは、
1秒当たりの振動の回数で、単位はHzヘルツである。
例えば、振り子で、1秒あたりの振動が5回だと、5Hzである。
この場合の周期は、0.2秒である。
⑩ 周波数と周期の求め方の計算式を説明せよ。
周波数と周期は、互いに逆数の関係である。
逆数とは、値を分数で表し、その分数の分子と分母を入れ替えた数字である。
3の場合は1分の3であるから、3の逆数は3分の1となる。
周波数(1秒当たりの振動の回数) = 1/周期 (1回あたりの振動の時間)
周期= 1/周波数
⑪ 周波数から周期に変換について説明せよ。
周期= 1/周波数 で求める。
周波数が1Hzの場合、周期は1秒になる。
周波数が1kHzの場合、周期は1ミリ秒になる。
周波数が1mhzの場合、周期は1マイクロ秒となる。
それぞれの単位の前に接頭語が記号で表現される。
10の6乗:m メガ
10の3乗:k 帰路
10の0乗:1
10のマイナスの3乗:m ミリ
10のマイナスの6乗:μ マイクロ
⑫ 割込みハンドラに担う役割は何か説明せよ。
割込みハンドラは、センサとタスクを結びつけ、橋渡しの役割を担う。
センサの割込み信号を受けると、タスクへ通知する。
組込みシステム(ソフトウェア)の構成で、センサが動作や値を検知して、
割込みが発生した場合に、割込みハンドラがタスクへ通知され、タスクが実行される。
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