このブログでは、ダブル・スコープが韓国の政策の支援で業績向上が確実視される『国策に売りなし』の銘柄となるか、逆に韓国の政策で業績が阻害される『国策に売られる』銘柄となるか、予測しています。
▼目次
国策に左右されるリチウムイオン電池(バッテリー)産業
上記のブログにて、エルピーダメモリの破綻、サムスン電子やSKハイニックスの成功、日韓のDRAM産業の逆転劇を例に『国策』の重要性については説明しています。
企業の経営努力以上に、国の政策が、その国の産業の盛衰、企業業績に影響を与える産業は少なくありません。
技術進歩が激しく、かつ需要が毎年急激に増える市場で、多額の設備投資(固定費)が必要なリチウムイオン電池のセパレータ(分離膜・絶縁体)のような事業は、国の政策、国家の直接、間接的な支援が重要となります。
リチウムイオン電池産業は、温暖化対策の脱炭素化(二酸化炭素の排出抑制)、自動車のEV化といった世界的な潮流、国際公約があり、成長が確実視され、現時点でも需要に対して十分な供給ができていない状況です。
そういった理由から日中韓ともに東アジア主要参加国とも、リチウムイオン電池産業の振興は、主要な産業政策の一つとなっています。
リチウムイオン電池、日本は中韓に苦戦 「川下」商売下手、弱み象徴 - SankeiBiz(サンケイビズ):自分を磨く経済情報サイト
【独自】EV次世代電池、開発促進へ…国内拠点支援で中国に対抗 : 経済 : ニュース : 読売新聞オンライン
[特集]韓国大統領がバッテリー戦略について報告 「第二の半導体に」(全文) - コリア・エレクトロニクス
上記に関連するニュースを紹介しています。
まさに『国策に売りなし』か『国策に売られる』かが重要となるわけです。
政府支援も受け、EV市場が急成長(ハンガリー) | 地域・分析レポート - 海外ビジネス情報 - ジェトロ
最近では、ハンガリーのEV市場、EV用電池(リチウムイオン電池)も『国策に売り』なしとなっているようでうす。
ダブル・スコープの売上地域は、1位は韓国ですが、2位はハンガリーです。
『国策に売りなし』となる企業は
国策に売りなしのリチウムイオン電池大手韓国三社
2021年7月8日に「K-バッテリー発展戦略報告」に発表しています。
[特集]韓国大統領がバッテリー戦略について報告 「第二の半導体に」(全文) - コリア・エレクトロニクス
で全文を確認できますが、重要な部分について、抜粋、紹介します。
企業がまず果敢に立ち上がりました。
LGエナジーソリューションは、工場を増設し、今日梧倉2工場を着工します。
LGエナジーソリューション、サムスンSDI、SKイノベーションが中小企業と力を合わせて、2030年までに計40兆ウォン以上を投資します。
いつも一足先に挑戦する企業の皆さんの勇気に敬意と応援の拍手を送ります。
韓国政府がLGエナジーソリューション(LG化学グループ)、サムスンSDI、SKイノベーションの活動を評価しています。
韓国のいずれもリチウムイオン電池大手で、この三社が韓国政府の支援の中心になりそうです。
2020年度の車載電池向の市場は
LG化学:世界2位 世界シェア約23%
SKイノベーション:世界6位 世界シェア約5%
といった状況で、この三社は世界的にも大手に名を連ね、世界市場で十分な競争力のある会社といえそうです。
補足:車載電池向の市場世界1位(世界シェア約25%)は、CATL(寧徳時代新能源科技)であり、創業者は日本のTDKの香港法人出身で、日本のTDKと縁が深いです。まさに中国の『国策に売りなし』で急成長した会社で、中国市場が中心でしたが、最近では欧米日本など先進国にも販売が広がっています。2019年は、パナソニックが2位であったが、LG化学に抜かれ、2020年はパナソニックが3位となっています。今後も中国企業や韓国企業の躍進が続けば、パナソニックなど日本のリチウムイオン電池もDRAMのように駆逐される可能性がありそうです。
コロナ禍で加速する新エネルギー車市場(中国) | 地域・分析レポート - 海外ビジネス情報 - ジェトロ より上記画像は抜粋しています。
リチウムイオン電池大手韓国三社のセパレータ
素材・部品・装置技術の海外依存と人材不足の問題も確実に解決します。
バッテリー製造大企業と当該中小・中堅企業がともに重要な技術の開発に乗り出すことができるように協力し、R&D事業を集中的に支援します。
ムン・ジェイン(文在寅)大統領が2021年7月8日に発表した「K-バッテリー発展戦略報告」の抜粋ですが、韓国政府がリチウムイオン電池の素材、部品、装置技術にも支援することもわかります。
セパレータは、リチウムイオン電池のコストの1割から2割程度を占める重要素材で、かつ、原材料が韓国でも世界的な競争力を石油化学製品であることあから、間違いなく、政府支援の対象となりそうです。
LG化学は、セパレータを製造していましたが、最終的に設備を東レに売却して、2015年に撤退しています。察するに製造コストを下げる技術的難易度が高く、日本企業のセパレータに、価格、品質ともに勝つのが難しかったのでしょう。
東レ、LG化学の工場買収 エコカー向け電池材料生産: 日本経済新聞
また、2020年に東レとセパレータの合弁企業を検討しているようです。
LG化学、東レと分離膜合弁会社設立へ - 韓国経済新聞国際版
こんな記事から東レと縁が深いようです。また、ダブル・スコープからも供給を受けていますが、量はそれほど多くないようです。
サムスンSDIは、主にダブル・スコープがセパレータを供給しています。
以下は、2020年12月末決算でのダブル・スコープの有価証券報告書の抜粋ですが、 ダブル・スコープの販売先1位は、サムスンSDIで、売上の77%近くを締めています。
SKイノベーションは、グループ会社にSKアイイーテクノロジー(SKIET)があり、SKIETからセパレータの供給をうけているようです。
LG化学、サムスンSDI、SKイノベーションが韓国政府の支援を受けるのであれば、
そこにセパレータを製造、提供している東レ、W-SCOPE、SKIETが、韓国政府の支援を受けて、『国策に売りなし』となる可能性が高いです。
仮に1社に絞られた場合
セパレータ事業の国際的競争力の確保のため、仮に韓国政府が、韓国内でのセパレータ製造事業を一社に絞り、支援した場合、支援する先は、東レ、W-SCOPE、SKIETのいずれかになるでしょう。
その場合、東レは、研究開発部門を日本に置く、日本の伝統的案大企業ですから、反日感情の強い韓国で、東レのみを支援して、W-SCOPE、SKIETを支援しないのはあり得ないでしょう。
そうなると支援先となるのはW-SCOPEか、SKIETのどちらかになるでしょう。
SKIETのみを支援した場合、LG化学、サムスンSDIに不利に働くことから難しいであろう。
また、富を独占していると財閥に対する反感も韓国内には根強く、中小企業や韓国内のベンチャー企業を積極的に支援しようとする最近の韓国の政策から、財閥グループでないW-SCOPEを捨てて(W-SCOPEに不利な政策を実施し)、SKIETのみを支援することは難しいでしょう。
W-SCOPEは、日本の証券市場に上場している日本法人が親会社ですが、筆頭株主の崔元根社長も韓国国籍の韓国育ちの韓国人であり、主要技術も、日本企業からライセンスを受けず、韓国人が開発したものです。製造研究拠点も韓国内のみで、韓国内の設備投資、採用に積極的ですので、日本の証券市場に上場している日本法人が親会社であることはそれほど問題視されないでしょう。
私が韓国の国民であれば、財閥のグループ会社と徒手空拳・裸一貫といった状態から操業したベンチャー企業であれば、韓国政府に後者を応援してほしいです。
そんな韓国国民を多いと願いたいです。
『国民情緒法(国民感情法)が憲法に優先する』と国民世論次第で司法判断が決まるなど罪刑法定主義・法治主義・法の支配が崩れがちな大韓民国の政治・社会体質を皮肉った言葉があるように、国民世論、国民感情が大事な国のようで、その点、ダブル・スコープの崔社長はPR活動も上手なように思え、崔社長の手腕を期待しています。おそらく、サムスン電子時代にIR(投資家向け広報)の仕事に従事していたことも関係しているのでしょう。
結論からいうと、リチウムイオン電池産業を保護、育成に国策として掲げる韓国が保護、育成する企業は、ダブル・スコープは、SKIETの両方になるでしょうし、もし1社に絞られる場合は、ダブル・スコープの可能性が高いと考えています。
2021.03.11 適時開示 韓国連結子会社の株式上場準備開始に関するお知らせ W-SCOPE
にてニュースリリースされた
W-SCOPE CHUNGJU PLANT CO., LTD.(以下、WCP)の上場計画は、韓国政府から支援を受けやすくするという目的もあるのかもしれない。
参考書籍の紹介
このブログで読んでいただいた方が興味を持ちそうな本を紹介します。
銘柄メモ ダブル・スコープ6619 東レ3042 旭化成3407 住友化学4005 帝人3401 宇部興産4208 パナソニック6752 TDK6762
タグメモ ダブル・スコープ ダブルスコープ WSCOPE 崔元根 W-SCOPE
W-SCOPE Corporation ダブル・スコープ株式会社