『W-SCOPEの日本的経営の強み』について 崔社長が語る(奇跡的に低い離職率に注目したい)

ダブル・スコープの 崔社長が『日本的経営の強み』について語った内容とともに、ダブル・スコープの非常に低い離職率や人材戦略についての紹介です。

地味な内容ですが、崔社長の経営哲学、人材戦略が信頼できるかという点で、W-SCOPEへの株式投資を研究している方などの参考になれば幸いです。
株式投資は企業への投資、長期間の将来にわたて継続的な利益が生み出せる価値の高い企業か、その企業が市場から不当な評価で割安に放置されているか、この二つの条件が大事だと思いますが、ダブルスコープはこの二つの条件を一致しているように思えます。 
  

 の記事に続けて、

[2017年10月18日撮影]ダブル・スコープ(株)(6619) 野村IR合同 個人投資家セミナー - YouTube

にて、ダブル・スコープの崔 元根 (チェ ウォングン)社長が登壇した個人投資家セミナーでの話を紹介します。

▼目次

 

崔 元根 (チェ ウォングン)社長の説明は櫻井英明氏の質問に答えるような形で進められています。 
これから記載する内容は、動画の内容(崔社長の発言)の文字起こしというより、一部は要約もしており、一部表現を伝わりやすいように修正しています。

 

櫻井英明氏:1980年明治大学卒。日興証券での機関投資家の運用トレーダー、「株式新聞Weekly編集長」などを経て、2008年7月からストックウェザー「兜町カタリスト」編集長。櫻井英明の株式透視論2019 など株式投資に関係する著書も多い。


日本的経営の強みや低い離職率について

櫻井氏:社長、日本の企業という話があった。100年、400年の歴史の会社もあれば、直近、戦後に出てきた会社がある。日本はどちらかというアメリカ式の経営になってきたが、日本のこれまでの経営はどう考えるのか(38分位後)

崔氏:まず、私が日本での初めての出張は27年前、サムソン半導体に勤務しているときであった。初めてみるときの日本企業の雰囲気は、家族だった、個人でなかった。
今日のお客様は私より大先輩の方もいますが、30年前、40年前の日本の会社はどうしでしたか。家族じゃないですか。同僚の困ることあれば、家族のことのようにわかった。

今は個人主義、あなたはあなた、わたしはわたし、社長は社長、課長は課長、社員は社員。アメリカ式の個人主義になっている。

 

なぜ、日本の伝統的な真面目に家族的に一緒に仕事する雰囲気がなくなったのか。
ダブルスコープは、日本の昔のよさ(古い日本的経営の良さ)をとりいれいている。

ダブルスコープも目標は大きな会社でない幸せな会社だ。同僚が困ったことがあったら家族のように助ける。

 

今の日本は、バラバラでアメリカ式だが、日本の伝統的な家族的な雰囲気、一緒に仕事をしていくという雰囲気がなくなった。ダブルスコープの目的は大きな会社でない。社員が、仕事してハッピーな会社になることである。

ダブルスコープの社員が1年間で退職する率(離職率)は0.7%で非常に低い。

 

今日のお客様の中では定年まで勤めた方もいると思いますが、人生で一番長く過ごす場所が会社、40年以上務める場所である。人生の大半は会社で勤めるのにな、なぜなぜ社員バラバラで個人主義でいいのか。


ダブルスコープも目標は大きな会社でない。社長と社員はフラットです。
自分はゴルフも酒もやらないが、社員と一緒に幸せな会社になること目標です。

未来の目標は、ハードウェア的な目標は、いい製品をつくることだが、
ソフトウェアの目標は、100年以上の長い歴史も持つ、あたたかい幸せな会社をつくりたい、今の先輩が経験したようないい会社をつくることが目標だ。


櫻井:日本的経営を手放からして、日本経済は不毛なったような気がするからもどしたほうがいいかということか(41分位後)

崔氏:ハードウェアの重要な部材は、日本、韓国が強い。
金融、ソフトは、欧米が強いが、モノづくり会社になれば、世界で勝てる。

日本人、韓国人にはものづくりのDNAがあると思う。伝統的に。世界でNO1になれる。

アメリカ式もいいものがある。中国が2位になるまで、日本が2位だった、日本が世界2位まで成長したのは、なぜか。個人主義でもなく、アメリカ式の経営ではない。

私がサムソンがはいったときは、社長はもちろんいるが、社員がオーナーシップを持ち、私が社長だと思って働いいた。社員もオーナーシップを持っていた。今の先輩もそうだったと思う。


今の日本の会社はどうか。
オーナーがいない会社が、任期が2、3年の社長は安全に経営すればいいと思ってチャレンジしない。変化、チャレンジをしない。
変化、チャレンジを、昔の日本の会社がしてきたように、私はしたい。


櫻井氏:チャレンジしたいということか(44分位後)。

崔氏:日本でも成功してチャレンジした会社で成功した会社は、ユニクロ日本電産ソフトバンクなどたくさんある。リーダーになった会社はすべてチャレンジしている。

そういった会社は、システムはアメリカ式かもしれないが、内部にはいると日本式ですよ。

櫻井氏、制度、システムはアメリカ式だが心は日本である。

崔氏:そう、ソフトウェアは日本だ。

 

低い離職率

ここからは、私の解説、感想です。

ダブル・スコープの離職率0.7%という数字に注目したいです。

離職率が高いと、採用・教育コストの増大やノウハウ・人間関係などの無形資産の流出など、企業に多くのデメリットがあります。

セパレーターのような高度の技術ノウハウが必要であろう製品であれば、
まだ言語化されていない、他人に引き継ぐことができないであろう暗黙知と呼ばれるノウハウが積み重なって、他社と差別化できる技術となると思われます。

 

また、顧客ごとに製品仕様や発注要件も異なることから、顧客との人間関係も含めて、顧客のことを熟知した社員も必要でしょう。

 

日々の開発、製造、営業の経験、その経験によって裏打ちされたノウハウ、人間関係が喪失されるのは、非常に大きな損害で、その意味で、低い離職率、本当に低いか別にして、社長が離職率が低いことを大事に思っていることは非常に信頼できる経営者と感じました。

 

日本と韓国の離職率について

離職率の算出方法は「1年間の離職者数÷年度初めの従業員数×100」で計算できます。
例えば、年度初めの従業員数が100名で、1年間の離職者数が20名の場合、「20÷100×100=20」と計算できるため、離職率は20%と算出されます。

 
厚生労働省が平成30年度に発表した「平成30年雇用動向調査結果の概況」を見ると、平成30年の離職率は全体で14.6%であることが分かります。
就業形態別には、一般労働者の離職率11.3%に対し、パートタイム労働者は23.6%と離職率が高い傾向にあります。
なお、平成30年雇用動向調査結果の概況によると日本の製造業の離職率は、9.4%です。

 

「大手企業でも45歳定年」韓国の悲惨な転職地獄 (1/2)

勤続年数「1年未満」労働者の割合は、日本8%、韓国31.5%
一方、勤続年数はどうか。日本は10年以上が4割を超えており、勤続年数が長い傾向にある。日本以外で4割を超えるのはイタリア、フランス、ベルギーであり、ドイツ、オランダ、オーストリアも含めてヨーロッパ諸国は長い傾向にある。

これは平均勤続年数の推移を見ても明らかだ。

1992年から2013年の日本の平均勤続年数は12年前後で安定しているが、イタリア、フランス、ドイツは2000年初頭から長期勤続化が進み、2013年には日本と変わらない勤続年数になっている(OECD・Stats2014)。

極端に違うのがアメリカだ。勤続年数1年未満の割合が22.6%と高く、勤続10年以上の割合が28.9%と諸外国に比べて低い。さらに勤続20年以上になると、日本が22.1%もいるのに対し、アメリカは10.3%にすぎない。まさにアメリカが転職社会であることを裏付けている。

しかし、それ以上に驚くのが韓国の勤続年数だ。

1年未満が31.5%、10年以上が21.1%。明らかにアメリカの上をいく「転職社会」なのだ。

といった記事を見ると、韓国より、日本の離職率は高いようです。

韓国の大卒新入社員4人に1人、1年以内に離職 | Joongang Ilbo | 中央日報

大卒新入社員の4人に1人は入社1年以内に離職していることが明らかになった。韓国経営者総協会は、全国の企業306社を対象に実施した調査を通じて、大卒新入社員の1年以内の離職率が27.7%に達することを6日、公表した。離職率は2014年(25.2%)に比べて2.5%ポイント増加した。

といった記事をみても、ダブルスコープの異常とまでいえる0.7%という離職率の低さがわかります。もしかしたら、7%と間違えたのかもしれませんが、7%でも低いと言える離職率です。

 

人員も急成長の会社で0.7%の低い離職率は奇跡的な数字

ダブル・スコープは、設立以来事業の成長とともに、社員数も大幅増やしています。

▼人員数の推移(いずれも年末の数字)----------
2016年   ⇒2017年    ⇒2018年  ⇒2019年   ⇒  2020年
383(94・32%)⇒502(119・31%)⇒618(116・23%)⇒1046(428・69%)⇒1092(46・4%)
()内の数字は前年から増えた人員数と増加率
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毎年、期初に比べて、総人員数の30%以上の人員を増やしていた会社です。
10人のうち3人は、入社1年以内の社員といった会社であり、勤続年数が低い人ほど一般的に離職率も高いので、おそらく7%でも低い離職率と誇れるような数字なのに、0.7%という離職率は異常に低い数値、奇跡的な数値です。
崔社長の離職率の定義は一般と違うかもしれませんが、
崔社長が社員の定着、離職防止に力を入れている確かで、それが離職率という数字で表れているのでしょう。。

急成長している会社は、人員の新陳代謝が激しく、採用者も多くても、退職者も多いという事情があり、かつ、採用者が増えても、その教育など追いつかず、ブラック企業的な長時間労働が横行することが多いといわれます。
ダブルスコープは、そういった状況にはなっていなさそうです。

離職率が低い理由はいろいろあるだろうが、休暇がとれ報酬も高い、仕事もやりがいのあるホワイト企業として、韓国内では、人気の企業なのかもしれません。

 

なお、1名で1000万円円程度の人件費や福利厚生費などの固定費が発生するのであれば、500名採用すれば、40億円のコスト増である。それでいて、過去1番の悪い数字でった2019年の営業赤字が32億円程度で、2018年、2019年に500名以上採用していることを考えると、人件費の負担も大きかったと思われます。


ダブルスコープのここ3年の赤字は、設備投資や人員増に伴う赤字で、それをしないだけで黒字化は可能だったと推察されます。そういう意味で何もせずに現状維持で、赤字から黒字にすることが可能だったようで、赤字ということに過度の心配は不要な会社と思われます。心配するときは、前年比で20%以上の売上成長が止まり、それでも赤字か、5%も超えないような低い営業利益率の場合(社員に対して、好待遇な条件も維持すること難しい場合)と思われます。

日経ビジネスの取材記事(2017年7月12日付)より

EV時代の知られざる勝者:日経ビジネス電子版

ダブル・スコープはフィルム製造や生産設備の専門家など、他社からの引き抜きも含めて36人の「宝」ともいえる人材を抱える。新ラインの設備は彼らのノウハウを基に約2カ月かけて調整する。設備メーカーに任せないのは「生産技術は設備メーカーから他社に漏れるから」(崔社長)だ。

この10年、中国勢とずっと戦って勝ってきました。半導体のような装置産業になったら負けるのではないかとの声もありますが、今まで勝ってきたのに急に負けることはありません。セパレーター工場は人件費の比率が低く、生産コストはどこで作ってもほぼ同じ。負けるわけがありませんよ。(崔社長談) 

 といった記事を読むと、
人材投資、人材確保、低賃金に頼らない、社員へ好待遇が維持できる経営に注力しているように感じます。

 

有価証券報告書(2020年12月期 )より

有価証券報告書(2020年12月期)の
経営方針、経営環境、対処すべきっ課題の一番最初に、

① 人材確保および社員教育
当社グループは、リチウムイオン電池セパレーター製造技術における幅広い専門知識と経験を有する優秀な技術者を育成することが、中長期的な視点に立った当社グループ戦略のために必要不可欠と考えております。中途採用による即戦力の確保だけでなく、海外も含めた新卒者の採用にも積極的に取り組んでおります。今後は研修制度の確立及びOJTによる教育制度の強化並びにストックオプション制度等をはじめとするインセンティブ制度の充実による社員のモチベーションの維持、向上に取り組んでまいります。

といった記載もあります。

人材確保および社員教育を、最重要、最優先の課題と、ダブルスコープは考えているようで、幅広い専門知識と経験を有する優秀な技術者が必要なチウムイオン電池セパレーター業界ではそれは間違っていないようです。

日本の半導体産業のように幅広い専門知識と経験を有する優秀な技術者が、中国、韓国企業に転職して、中国、韓国企業が日本企業にキャッチアップし、日本企業は技術的優位性を失いました。

ダブルスコープはそんな失敗をしないで欲しいです。崔社長もそういった失敗事例を考えて経営していると思います。

 

離職率が高いブラック企業の問題点

 離職率が高いブラック企業の問題、そういった問題に関係する書籍については、自分の過去のブログも読んでいただけると嬉しいです。

 

 

 

 
銘柄メモ ダブル・スコープ,旭化成,東レ
6619,3407,3407

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