LG製EV用バッテリーリコールはW-SCOPEに原因はなさそう(W-SCOPEのLGとの歴史など)

 

前のブログ(↑)でサムソンSDIへの集中(依存)リスクを紹介しましたが、
過去にダブル・スコープは、現在のサムソンSDIほどでなくても、LG(現 LGエネルギーソリューション、前 LG化学)に販売の多くを依存していた時期があります。
リコール対象となったLG製EV用バッテリーにダブルスコープのセパレータが利用されていた可能性や梧倉(オチャン)工場、W-SCOPEのLGとの関係などを紹介します。

▼目次

【リコール対象のバッテリーにW-SCOPEのセパレータは

■W-SCOPEのLGに対する売上

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各年度の全売上高と主な顧客毎の割合-有価証券書の『主な相手別の販売実績』より 

  • 2013年:27億円 東莞市旭冉電子有限公司 (Xuran Electronics Co., Ltd.) 56%
  • 2014年:45億円 東莞市旭冉電子有限公司  45% LG化学 16% 天津力神电池股份有限公司(Tianjin Lishen Battery Joint-Stock Co., Ltd.)10% A123 Systems,LLC(アメリカの電池製造メーカー。2012年12月中国の万向集団という自動車部品の会社に買収)10%
  • 2015年:74億円 東莞市旭冉電子有限公司  32% LG化学 22% 東北村田製作所 15% 天津力神电池股份有限公司 10%
  • 2016年:90億円 LG化学 37% 東莞市旭冉電子有限公司  32%
  • 2017年:95億円 LG化学 35% 東北村田製作所 15% 東莞市旭冉電子有限公司  11% EVE Energy Co.ltd. 10%
  • 2018年:87億円 LG化学 45% 東北村田製作所 15% 東莞市旭冉電子有限公司 11%   EVE Energy Co.ltd. 10%
  • 2019年:131億円 サムスンSDI 48% LG化学 21% 東北村田製作所 10%
  • 2020年:184億円 サムスンSDI 77% どの年度も10%未満の販売先は開示がありません。

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上記のように、 W-SCOPEのLGに対する売上は、2014年に売上割合が10%を超えて以降、5年連続で、10%を超える主要な販売先でしたが、2020年に10%未満に、「主な」販売先ではなくなりました。

対LGの売上高の推移でみると
2014年 7億、 2015年 22億円、2016年 33億円と売上を増やし、その後
2017年 33億 2018年 39億円 2019年 20億円と売上を減らして
2020年には、販売割合が10%未満(19億以下であることは確実)となり、記載がない状態です。

■リコール対象車の販売時期から推測する

  • 2017年から2020年まで販売されたコナEV(現代自動車
  • 2017年から2021年まで販売されたボルトEV(GM

がリコール対象ですが、販売されていた時期を考えると、W-SCOPEのセパレーターが、リコール対象のバッテリーに利用されていた可能性もゼロとも言えません。

2014年から2019年まで、LGは、W-SCOPEの主要な販売先ででしたから、2017年から2020年まで販売されたLGのEV用バッテリーに、W-SCOPEのセパレーターも利用されていた可能性はあります。

ただ、ダブルスコープのセパレーターは、車載以外の用途だと思われるため、可能性は低いです。

■可能性があるけどW-SCOPEの製品が原因とは考えにくい

LG製EV用バッテリーのリコール特需(GMボルトEVや現代コナEVのバッテリー無償交換の特需) - 令和の未来カエルのブログ

↑のブログで示した通りですが、現代自動車GMが公表している欠陥の内容から、W-SCOPEのセパレーターが直接的な起因である可能性は低く、法的な責任を問われるよう原因となる可能性は低いです。

それを補強する理由として、ボルトEVは今年2021年に販売された最新型もリコール対象ですが、2020年にはW-SCOPEはLGへの販売を大幅に減らしており、ボルトEVのような量産車のバッテリーに、W-SCOPEのセパレーターが利用された可能性は低そうです。

もし、W-SCOPEのセパレーターが直接的な起因であれば、W-SCOPEのセパレーターが利用されていないバッテリーには欠陥がないはずですが、そうでもないと思えます。

 

 

 

【梧倉(オチャン)工場やLGとの関係】】

GMと現代自、EVバッテリー発火で複数のLG工場との関連指摘 | ロイター

GMは20日、バッテリーパックの発火問題に絡み、「シボレー・ボルト」のリコール台数を14万台以上に拡大。リコール費用は推定18億ドルで、LGに補償を求めるとした。また、発火の根本原因として2つのまれな製造欠陥を特定したとし、欠陥のある電池セルは韓国の梧倉(オチャン)工場で製造されたと説明。さらに、米アリゾナ州で起きたボルトの10件目の発火事故後、同工場以外のLGの生産施設で製造された電池セルにも製造欠陥を発見したと報告した。

※筆者補足 なお、梧倉(オチャン)工場以外のLGの生産拠点とは、南京工場でしょう。LG製のバッテリーの欠陥でリコールしている現代自動車のサイトでは「南京工場で製造されたLG製のバッテリーで欠陥」と記載されています。

梧倉(オチャン)工場と聞いて、W-SCOPEに興味のある人は、なんか聞いたことある名前だと思ったかもしれません。

W-SCOPE KOREA(WSK)の本社や工場があるのが梧倉(オチャン)で、梧倉(オチャン)工場の様子(航空写真や設備投資の予定)は、決算説明会(↓のブログも参考)でも紹介されています。

W-SCOPEの2021年12月期第2四半期決算説明会の文字起こし(後半の通期見通し) - 令和の未来カエルのブログ

WSKは、W-SCOPEの子会社で車載以外の用途セパレーターを主に製造しています。
車載用途のセパレーター製造している上場予定のW-SCOPE CHUNGJU PLANT(WCP) とは別の会社です。

 

↑は『EV時代の知られざる勝者 ダブル・スコープ|電池部品メーカー 2017.7.12』
という2017年7月の古い記事ですが、

・韓国ソウルから南へクルマで1時間半。清州市梧倉の工業団地内に、同社の巨大な韓国工場が見えてくる。東京ドームの2倍以上の敷地面積に7本の製造ラインが並ぶ。今年中にさらに2本の新ラインが稼働する予定だ。

・(写真の紹介文として)ダブル・スコープの韓国工場は、LG化学のリチウムイオン電池工場の隣に位置する

・日本企業として韓国に工場を立ち上げれば、外資企業の優遇として工場用地の借地費用の50年間免除や法人税の大幅減免を受けられること(もあり韓国で工場設立したのが梧倉(オチャン)工場)。

・LG化学は、逼迫するセパレーター需給を解消するため、7年前に自前で生産設備に投資した。しかし、業界関係者によれば、ダブスコープと同じ逐次二軸延伸法を採用したものの歩留まりはわずか10~20%にとどまり、2015年に2本のラインを売却した。(中略)実は、そのラインを買ったのがダブル・スコープだ。その時点で既に2本のラインを稼働させていた同社は、LG化学から買ったラインを2年かけて改良し、現在の歩留まり率は90%を超える。

・LG化学のエネルギー部門でマネジャーを務めるユン・スンシク氏は本誌の取材に対し、LG化学と独VWの2社が次世代リチウムイオン電池の共同開発を始めたことを明らかにした。(中略)ユン氏はこのプロジェクトにダブル・スコープが参画することを明かした。「電池メーカーにできることには限界がある。ダブル・スコープにはコスト競争力を生かしてぜひ協力してほしい」

といった内容で、W-SCOPEの梧倉(オチャン)工場の歴史とともに、LGとの関係の深さも感じられる記事です。

W-SCOPEとLGの関係の深さを知っていた私は、LGへの売上が減少傾向は少し不思議に思っていますが、LGへの売上が減少させ、サムスンSDIへの売上を増加させた理由は、また別のブログで考えたいと思います。

 

 

以上

 

タグ #ダブルスコープ #W-SCOPE #EV #LG #リコール、

銘柄 ダブル・スコープ6619

以 上