インフレの悪影響-W-SCOPE 2022年12月期1Q決算より

■はじめに

ダブルスコープの2022年1Q決算から原材料高などインフレの影響を調べたブログです。
結論からいうと、ダブル・スコープの2022年1Q決算を見る限り、原材料高などインフレの悪影響はは、それほど心配しなくてよさそうです。#6619

 

ロシアへの経済制裁や中国のゼロコロナ政策による上海地域のロックダウンなどサプライチェーンの混乱などで、燃料高、電気高、原材料高が話題です。米国では景気過熱から人手不足で、人件費も上昇し、昨今は景気抑制から金利があがり、株式市場全体も下落傾向です。まさに世界はインフレの時代という印象です。

 

ダブルスコープは、2022年05月12日に2022年12月期1Q(第1四半期)決算が開示されました。Wスコープ株価は、決算翌日5月13日は、前日の終値838円からストップ高の988円と高騰し、5月20日終値で1,208円と、決算前から44.15%も上昇しています。

株価も、原材料高などインフレはそれほど心配していないのでしょうか。

に続けてのダブルスコープに関するブログ記事です。

 

 

■2022年1Q決算から考えるインフレの影響

● 2022年1Q決算説明資料から考える原材料費率など

2022年1Q決算説明資料の営業利益増減要因から、
それぞれのコストの増加分 を売上増加分で割って、それぞれ費用が売上高に占める比率を計算しまいた。
()内の記載は、2021年12月通期との比較です。

2022年12月期1Q(1月から3月分)

  • 原材料費503百万円 ÷ 売上高2,811百万円 = 17.89%(マイナス2.62%)
  • 人件費 252百万円 ÷ 売上高2,811百万円=8.96%(マイナス2.74%)
  • 水道光熱費 568百万円 ÷ 売上高2,811百万円 = 20.20%(プラス12.1%)
  • 運送費※ 313百万円 ÷ 売上高2,811百万円 =11.13%(プラス0.24%)

 ※決算説明資料によると、梱包費と表現されています。
 ()内は、2021年通期の比率と比較です。

 

● 原材料費率は低くなっている

2021年通期の原材料費率の推計と比べると、マイナス2.62%と原材料費は低くなっています。

ポリエチレン・ポリプロピレン値上げ表明相次ぐ : 日本経済新聞

こういった記事から、
セパレーターの主原料となるポリエチレンとポリプロピレンの価格が1割から2割程度は上昇していることはうかがえます。

生産性の向上が原因か、長期契約で原材料費の購入価格はまだ上がっていないのかはわかりませんが、すくなくともダブルスコープの2022年1Q決算を見ると、原材料高の影響はないようです。

 

● 気になる水道光熱費(ガス代)の上昇

2022年12月期第1四半期報告書によると
営業利益に関しては、売上高が前年同期比2,811百万円の増収となりました。一方、製造原価及び販管費に関しては、販売数量の増加に伴い原材料費503百万円、減価償却費413百万円、人件費252百万円などの増加となりました。これらに加え世界的な燃料高騰の影響を受け、当社の製造子会社2社を運営する韓国でも当第1四半期連結累計期間にはガス代が期中平均で前年同期比70%以上上昇したことから 水道光熱費が前年同期比568百万円の増加となりました。これらの結果、営業利益は前年同期比277百万円増加し、439百万円(同171.1%増)となりました。
とあります。

という記載があり、ガス代の上昇が気になります。

韓国の場合、原子量発電の比率が高く、かつ、政策的に電気料金が安いため、水道光熱費の上昇もそれほど心配はしていませんでしたが、ガス代の上昇による水道光熱費の大幅な増加が想定外でした。


おそらく、ガス価格はその時の市場価格を参考に購入するような契約になっており、ロシアのウクライナ侵攻によるロシアへの経済制裁の影響で、天然ガスが高騰したことが影響したのかもしれません。

化学プラント工場ではボイラーがよく利用されます。
化学プラント工場では大規模した蒸留技術が使用されており、原油を加熱し、蒸気を冷却することで重油軽油、灯油などの石油製品を作っているからです。
ダブルスコープのセパレーター工場でも、蒸留、加熱、乾燥などの用途でボイラーが利用され、その燃料がガスなのかもしれません。

 

天然ガスLNG液化天然ガス)価格動向(直近2年)(直近2年)

天然ガスLNG液化天然ガス)価格動向(直近2年)

上記の天然ガスLNG液化天然ガス)価格動向(直近2年)を示すチャートは

2022年4月|JOGMEC石油・天然ガス資源情報ウェブサイト

から取得したものです。
北東アジアのアセスメントされたスポットLNG価格JKM(期近分)USD100万Btu※は、2021年代は10米ドル台で推移して、2022年1月と2月は20米ドル台で推移し、3月にはロシア産パイプラインガス供給中断の懸念に伴って一時急騰し80米ドルを上回り急騰、その後30米ドル台で推移しています。当初30米ドル台で推移したが、後半にかけ24-26米ドル台まで下落しています。
こういったガス価格の推移から、
おそらく、1Qのガス代の高騰は、2月に発生したロシア産パイプラインガス供給中断の懸念で、一時的なものと考えてもいいかもしれません。

2022年12月期 第1四半期決算説明資料にも、

営業利益の通期見込み として、

□1Qには燃料費高騰の影響を受けたが、(特にガス代単価が前年同期比70%以上に高騰)2Q以降光熱費削減への取組み等により使用量が減少し改善する見込み

という説明があります。

 

ダブルスコープも生産方式の改良や契約方式の見直しで、ガス代の高騰に対する対策も実施するでしょうから、その点も期待したいです。

ちなみに、Btu は、標準気圧下において質量 1 ポンド(約4.53リットル)の水の温度を 60.5°F から 61.5°F まで上昇させるのに必要な熱量を示す、ガスの量を表す単位です。

 

● 運送費のピークアウトか

運送費の売上に対する比率(推定)は、11.13%(プラス0.24%)とわずかに上昇しています。
ただ、
https://www.nyk.com/ir/financial/shipping/

海運市況 | 日本郵船株式会社

で確認されている日本郵船の海運市況の動向や

BDIY 銘柄 - バルチック海運指数 名称 - Bloomberg Markets

で確認できるバルチック海運指数(世界的な海運市況の参考指数)の動向をみると、
2021年の10月頃がピークで、その後は大幅に下落、調整していることがわかります。

 

↑のブログで、2022年業績予想の説明内容を文字起こししていますが、

営業利益のところでは先ほど申し上げました通り、まだ運賃の高止まりというのは、おりこまざるを得ない状況でございます。

といった説明があります。

 

2022年12月期 第1四半期決算説明資料にも、

営業利益の通期見込み として、

□ 輸送費用の高値は継続しているが予算折り込み済み

という説明があります。

 

去年の高騰時の海運市況を参考に計画していることもあり、これについても、今期の決算では心配しなくてもよさそうです。

● 人件費率は低下傾向

米国にように、景気過熱、人手不足による賃金上昇、人件費の上昇も気になりますが、
人件費は、先行投資的な意味が強いので、売上の増加より前に上がる傾向が強いです。
ダブルスコープの場合は、実際に、
対売上人件費率(推計)8.96%(対前年通期 マイナス2.74% 対前年1Q マイナス2.2%)と下がっています。

ただ、人件費は固定費ですから、固定費の比率が下がるということは、限界利益率が下がっていることになります。

● 限界利益率は下がっている

2022年12月期1Q決算説明資料より

人件費率の低下や水道光熱費、運送費(梱包費)の上昇の影響で、
2021年第1四半期 限界利益率 61.41%→ 2022年第1四半期 限界利益率 55.38%
限界利益率はややさがっています。
限界利益率は
限界利益(売上高 - 変動費) ÷ 売上高 

で計算できます。

売上高が分母ですから、売上高が増えれば、限界利益率も下がります。

ただ、水道光熱費、運送費の上昇で変動費が増えたことも、限界利益率が減った要因でしょう。
限界利益率が高いということは、変動比率が低く、売上増にともなう利益増加率が高いということです。

 

例えば、

売上高300億円の時は利益はゼロの会社が売上高 300円→400億円と増収になった場合を考えます。

限界利益率 60%であれば、固定費は180億円、変動費120億円です。

売上高400億円の場合、固定費は変わらず180億円、変動費160億円ですから、60億円の利益、利益率は15%になります。

限界利益率 50%であれば、固定費は150億円、変動費150億円です。

売上高400億円の場合、固定費は変わらず150億円、変動費200億円ですから、50億円の利益、利益率は12.5%になります。利益の差は10億円、利益率の差は2.5%です。

 

上記のケースで、売上高 300円→500億円と増収になった場合を考えます。

限界利益率60% 売上高500億円の場合、固定費は変わらず180億円、変動費200億円ですから、120億円の利益で利益率は24%です。

限界利益率 50%であれば、固定費は150億円、変動費250億円で、100億円の利益に利益率は20%なります。利益の差は20億円、利益率の差は4%です。

このように、

限界利益率が高いと、売上の増加に伴う利益の増加、利益率の改善割合が高くなります。

ダブルスコープの場合、売上の成長も見込めるだけに、限界利益率が下がっていることは少し残念に思いました。

限界利益率については、以下のブログでやや詳細に説明しています。

私がダブルスコープに注目したきっかけの一つが、ダブルスコープの限界利益率の高さでした。

 

 

■本の紹介

株式投資に有益だと思われる本も紹介します。

●次はこうなる

 

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 2021年12月に発刊された本で、過去の週刊エコノミストの記事をまとめている本ですが、2022年以降の金利上昇や金、穀物価格の上昇なども的確に予想されています。

今後10年、20年という長期スパンで、経済、投資を考えるのに有用な本といえそうです。貨幣の価値が下がり、モノの価値が上がるのがインフレですが、今後10年、20年はインフレの時代となるかもしれません。

インフレの時代に強いのは、価格が上がる商品を生産、販売する企業、もしくは商品の価格を上げる価格競争力の強い企業でしょう。

ダブルスコープもそういった点で、インフレに強い企業といえるかも知れません。

 

『次はこうなる』著者の 相場研究家 市岡繁男さんが出演しているストックボイスの動画(2022年3月10日)こ の中で金鉱株への投資を紹介していました。

 

↓の画像はアメリカの金鉱株の指数に連動するETF(コード:GDX)のチャートです

3月10日は38ドル台でしたが、4月中旬に40ドルをつけましたが、5月には35ドルまでさがっています。円安ドル高効果で、円建てなら、3月中旬と比べても上昇していると思いますが、今後の金鉱株も楽しみです。

金鉱株ETFのチャート


▼金鉱株に関するブログ

金鉱株に関しては私も前から注目しています。

過去の金鉱株に関するブログも紹介します。

 

 

 

●決算に関する本

決算に関して面白くてためになると思う本をいくつか紹介します。

決算を見るポイントは、たくさんの企業の決算を見ることで、学ぶことが多いと思います。そういった意味で実例がたくさん記載された本がよく、自分が読んで面白かった本を紹介します。

 

 

 

 

 

 

 

誤字脱字すいません。この記事は、正確性を保証するものでもなく、投資を推奨、勧誘するものでもなく、筆者の個人的な見解を述べているものです。

 

 

 

 

 

 

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