Mazarsに監査法人を変更した企業の株は上がる説

■はじめに

とある本に、『監査法人(会計監査人)を変更した企業の株は上がる説』が紹介されていました。

ダブルスコープもMazarsに監査法人を変更し、その後の株価は上昇していますが、Mazarsに監査法人を変更した企業は買いかもとそんな思い付きの考えを紹介したブログ記事です。

↓のブログに続く、W-SCOPEに関係する記事です。

▼目次

 

 

 

■とある本の紹介

とある本とは
東大金融研究会のお金超講義――超一流の投資のプロが東大生に教えている「お金の教養と人生戦略」伊藤 潤一著 2022年3月発売 という本です。

 

↑にアマゾンのリンクです。アマゾンのレビューの商品の説明、コメントを見ると内容をみると本の概要はわかるかと思います。

 

その中の一説を紹介します。

第1章東大金融研究会で学ぶ お金の授業 57ページから58ページより

私は、誰にでも使えるデータの中にも有効なものがまだあると思っています。
たとえば「監査法人の変更」に着目してみましょう。
運用者はこれを「企業側が会計上、無理なことを通そうとしたのではないか」
監査法人が面倒を見切れなかったのでは」などネガティブな情報とみなすことが多いはずです。
そのうえで実際はどうなのか、監査法人を変更してから30週後の株価を調べて検証しました。結果はどうなったと思いますか。
なんと、勝率80%という高い数値が出たのです。

なぜ、このような結果になったのでしょう?
おそらく、監査法人の変更で「膿が出る」のでアナリストの予測水準より利益が下がります。しかし、次の期には「膿が出し切った効果」が現れはじめ、当初のアナリストの予測に近い利益が出ます。ところが、前期の利益が予測より下がったので、アナリストの「次の期の予想水準」は当初より下がっています。
 このメカニズムにより、アナリストの目線と実際の利益のギャップが生じたため、勝率80%という数字が出たのではないかと思います。

 

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■単なる偶然か

監査法人(監査人)を変更してから30週後に株価が上がる確率が高いというのは単なる偶然の可能性が高いかもしれません。

30週後でなく、10週後、1年後など別の基準で比較した場合は、株価が下がっていたかもしれず、30週後というの期間の取り方自体、期間の取り方が一つという恣意性も少し感じます。また、そもそもどのような期間で抽出した企業で対象にしたのかも詳しくはわかりません。

もちろんたとえ、恣意性があったとしても著者に悪気はなく、使われていないが、誰にでも使えるデータの中にも有効なものがあるという主張の一つの例えに用いただけでしょう。

 

 

監査法人の変更はコスト意識の高さか

単なる偶然でないとしたら、監査法人(会計監査人)の変更は、コスト意識の高さが理由かもしれません。コスト意識の高い企業は株価の上昇も期待できるかもしれません。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000433.000043465.html

2021年は監査法人の異動が急増 トレンドは「大手から中小」|TDBのプレスリリース

2021年に監査法人の異動を発表した上場企業は、219社と前年(142社)を大きく上回った。2015年の東芝の不適切会計問題をきっかけに監査の厳格化が求められるようになったことに加え、リスク情報の開示など開示情報量の拡充による監査作業負担の増加に伴い、昨今、監査費用は増加基調で推移している。それに伴い、事業規模に応じて監査費用を抑えたい企業側の意向により、大手から中小規模への異動が多くみられた。

こういった記事をみると、監査費用の削減というのも監査法人の変更の大きな理由であることがわかります。

コスト意識の高さというより、監査費用の削減が必要なほど経営状態が厳しいことが会計監査人の変更の理由となる企業もあると思います。
そういった企業で、株価は底値圏で、今後株価の上昇が期待できるかもしれません。

 

 

■ダブルスコープの監査法人の変更

2022 年2月14 日に開示があり、3月25日(株主総会の決議日)から、あずさ監査法人から、Mazars 有限責任監査法人へ変更すると報告され、実際に株主総会の決議を経て変更されています。

変更となった理由は開示資料に以下の通り、報告されています。

異動の決定または異動に至った理由及び経緯
当社の現任会計監査人であります有限責任 あずさ監査法人は、2022 年3月開催予定の第 17期定時株主総会終結の時をもって任期満了になりますが、監査法人をめぐる環境が厳しい中、監査工数が増加する傾向にあるとして契約更新の辞退の申し出がありました。これを受け、当社といたしましても、当社の規模に適した監査費用の相当性やグローバル対応能力を考慮し、複数の監査法人と協議を行い、当社の事業規模や近年の経営環境等を踏まえて総合的に勘案し、上記3の理由により、Mazars 有限責任監査法人を新たに会計監査人として選任することといたしました。

 

「契約更新の辞退の申し出」というのが、何か悪い予感を感じさせるような内容ですが、「監査工数」に見合う「監査報酬(監査費用)」について合意されず、つまり、監査報酬が安すぎるということで、最終的に監査法人から監査契約の辞退となったのかと察しています。

 

■Mazars 有限責任監査法人とは

ダブル・スコープの会計監査人となったMazars 有限責任監査法人について調べてみました。
Mazars 有限責任監査法人は、フランスに本拠を持つ国際的な会計監査、コンサル事業を展開するMazars グループの日本拠点です。

Mazarsの概要 - Mazars - 日本

Mazarsの日本拠点のサイトを見ると、    

Mazarsは、クライアントが自信を持ってビジネスを構築し、成長するのを支援することを約束する、国際的な監査、税務、アドバイザリー・ファームです。
1945年に、ロバート・マザーがフランスのルーアンに会計事務所を設立して以来、私たちは長い道のりを歩んできました。これらのささやかな始まりから、現在ではMazarsは、Mazars North America Allianceを通じた 16,000 人のプロフェッショナルを含む 90 以上の国と地域で、 44,000 人以上のプロフェッショナルで構成される国際的なグループに成長しました。
監査は、70年以上にわたり我々の専門知識の中核をなしてきました。コンサルティングとファイナンシャル・アドバイザリーのバランスの取れたポートフォリオ、税務、コンプライアンス、法務サービスによって補完され、クライアントの進化するニーズをサポートし続けています。

と紹介されており、老舗の国際的には大手の監査法人のネットワークであることがわかります。

グローバル会計ネットワークのランキングと日本での提携状況 | 汐留で働く公認会計士のブログ

によると、世界的には14位ぐらいの規模となる国際的な大手の監査法人のネットワークのようです。このサイトによると、、Mazarsはマザーと読むらしい。

Mazarsは、日本の監査法人としての知名度はほとんどないです。監査法人知名度といっても、ほとんど人は、EY新日本、トーマツ、あずさ、PwCといった大手の監査法人程度しか知らないし、名前を聞いたことがあると程度で知られているのが
仰星監査法人、京都監査法人、三優監査法人、太陽有限責任監査法人、東陽監査法人、優成監査法人といった準大手の監査法人でしょう。
国際的な規模と比べて、日本において知名度が低い理由としては、上場企業に対する監査業務を開始したのが、2020/2021年度(2020年9月1日~2021年8月31日)と比較的直近であることがあると思います。

 

■Mazarsに監査法人を変更した企業

おそらくMazarsは、監査報酬の高さを問題視する企業に営業している可能性があります。
Mazarsに監査法人を変更している企業は、特にコスト意識の高く、そういう企業は株価の上昇も期待できるかもしれません。
試しにMazarsに監査法人を変更した企業の株価を調べてみました。
インターネットで、「Mazars 監査人 異動」と言いたキーワードで検索して調べてだけなので、他にあるかも知れません。

 

コード

社名

前監査人

開示日と株価

決議日と株価

直近株価

開示日からの上昇率

7758

セコニック

EY 新日本

2021/5/25

895円

2021/6/28

871円

※3395円

2022/3/15に上場廃止

+ 279 %

7999

MUTOH

EY 新日本

2021/5/27

1598円

2021/6/25

1578円

2127円

+ 33%

3739

コムシード

太陽

2021/5/25

229円

2021/6/23

234円

410円

+ 79%

6444

サンデン

あずさ

2021/6/25

361円

2021/6/25

361円

208円

- 42%

6619

W-SCOPE

あずさ

2022/2/14

1046円

2022/3/25

726円

1380円

+ 32%

7859

アルメディオ

アーク

2022/5/23

166円

2022/6/24

163円

- 2%

※セコニックはTCSホールディングス(東京)の子会社がセコニック株に対しTOB(株式公開買い付け)を実施し、上場廃止になった。TOB価格は1株につき3400円。

 

↑の表のように、アルメディオは期間が短いので集計対象外とすると、サンデン以外は、ダブルスコープをはじめ、大きく上昇しています。

また、セコニックはTOBの対象となりましたが、監査法人を変更する企業は、買収する企業と監査法人を合わせたほうが都合がよく、監査法人の変更はTOBも含めたM&Aの予兆になることもあるように思います。


サンデン、アルメディオともに経営不振が続き、経営再建中という企業なので、
コスト意識の高さというより、監査費用の削減が必要なほど経営状態が厳しいことが会計監査人の変更の理由となる企業かも知れません。株価は底値圏といえ、今後株価の上昇が期待できるかもしれません。

 

 

■本の紹介

監査法人(会計監査人)を変更した企業の株は上がる説』が紹介している伊藤潤一さんの他の本を紹介します。

伊藤潤一さんは、

1993年東京大学卒業後、三和銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。その後、モルガン・スタンレー・アセット・マネジメント(現モルガン・スタンレー・インベスト・マネジメント)、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントを経て、2002年にヘッジファンドの世界へ。グローバル大手のミレニアム・キャピタル・マネジメントなどを経て現在はダイモン・キャピタル・マネジメント・ジャパン。一貫して日本株のロング/ショートのポートフォリオ・マネージャー。約20年間ヘッジファンド在籍は日本人では稀有。
2019年12月に東大金融研究会を創設。発足時の10人足らずから、2年で約1000名が参加し、東大新入生の20人に1人が入る大人気研究会となり、注目を集める。
Twitterでは大空翔(@ozorakakeru)として投資情報を投稿中。

といった経歴の方で、投資、金融の世界では、プロ中のプロと呼んでもおかしくない方です。

 

 

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以上