W-SCOPE、シェア逆転で、旭化成に倍返し!

■はじめに

旭化成から特許侵害で訴えられたダブルスコープが、旭化成の湿式セパレータのシェアを超えるだろうという予測を示したブログ記事です。

以前(2022年2月)のブログで、

もうすこし詳しく、旭化成のセパレータ事業については調べたいと思いました。
その内容は改めて別のブログで紹介したいと思います。

と記載しました。

今回のブログが、旭化成のセパレータ事業についてもう少し詳しく調べた内容となります。

 

以下の記事に続く、W-SCOPEに関するブログ記事となります。

 

▼目 次

 

 

旭化成の生産計画

旭化成の2022年3月期有価証券報告書より抜粋です。

<経営方針・経営戦略>

  • 「マテリアル」セグメント

 ⅰ 「Environment & Energy」分野

          ■   主な取り組み

            ・リチウムイオン電池用セパレータ事業:供給能力を電気自動車等の環境対応車の市場拡大に合わせ段階的に拡大し、23年度に19億㎡、中期的に30億㎡体制を計画。湿式タイプと乾式タイプの両技術で多様な顧客の要求に対応

 

旭化成の2021年3月15日付プレスリリース「リチウムイオン二次電池用セパレータの生産能力増強について」によると、

当社グループのLIB用セパレータの生産能力は、今回の増強※により湿式膜が約13.5億m2/年、乾式膜が約5.5億m2/年、合計約19億m2/年となります。今後も需要の伸びに合わせて積極的な能力増強を行い、お客様の要求に応えてまいります。

※今回の増強の内容
(1)設備投資額 約300億円
(2)立地 宮崎県日向市 (既存工場敷地内)
(3)生産品目 LIB用セパレータ「ハイポア™」
(4)生産能力 約3.5億m2/年
(5)稼働時期 2023年度上期商業運転開始予定

とあります。

 

つまり、約300億円の設備投資により、2年後、2023年度上期に湿式セパレータの生産能力が、約10億m2/年 ⇒ 約13.5億m2/年と拡大されます。

 

また、設備投資決定から商業運転開始(実質的な生産開始)まで、すでにある工場内で設備を拡張する場合でも、2年間程度と結構な期間がかかることも、わかります。

 

 

■乾式と湿式

セパレータには乾式と湿式の2種類があります。

ポリプロピレン(PP)を主原料として製造工程で溶剤を使用しない乾式法と、ポリエチレン(PE)を主原料として製造工程で可塑剤・溶剤を使用する湿式法の2つの製法があります。

▼ポリエチレン(PE:湿式の主原料)とポリプロピレン(PP:乾式の主原料)

ポリエチレン(PE:湿式の主原料)とポリプロピレン(PP:乾式の主原料)

↑の画像は

最新 二次電池が一番わかる (しくみ図解) | 白石 拓 |本 | 通販 | Amazon

から引用しています。

 

ポリプロピレン(PP:乾式の主原料)は機械的な強度があるから、物理的に伸ばせる、

ポリエチレン(PE:乾式の主原料)は化学的・熱的に安定しているから、溶剤での加工も容易。ということでしょうか。

 

料理に例えると、

餃子の皮ように物理的に伸ばしてつくるのが乾式で、

キムチのように溶剤と混ぜて圧力でいい感じににするものが湿式(湿式のいい例えがなくやや強引)でしょうか。

 

湿式には高容量や安全性という特性があり、電気自動車(EV)や民生(ノートパソコンやスマートフォンなど)用途のリチウムイオン電池向けを中心に幅広く使われている。一方、乾式には高出力や長寿命という特性があり、湿式と比べてコスト面にも優れる。電力貯蔵システム(ESS)に適しているとされるのは乾式の方です。

 

ダブルスコープが生産しているのは、湿式です。

安全性で湿式が乾式よりも優れていますが、コストは乾式が優位です。

乾式より湿式は、高額な設備が必要で、技術的難易度が高く、参入障壁が高いといわれます。

電気自動車のセパレータで生産、需要が急激に拡大しているのは湿式です。

 

 

■セパレータの世界需要

http://m.thebell.co.kr/m/newsview.asp?svccode=00&newskey=202103291637541080108871

↑は韓国の経済ニュースのサイトの2021年3月31日付の記事です。

SKEITが、上場前に、ポーランドに1兆1300億ウォンの投資をして、二つのセパレータ新工場を新設するという内容です。

SKIETは、中国1つ、韓国1つ、ポーランド2つの工場を持っていますので、ポーランド国内だけで4つ、世界で6つの工場をもつことになります。なお、SKIETのセパレータも湿式です。

 

記事の中で、セパレータの世界需要が推移が紹介されています。

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セパレータの世界需要: 2020年 ⇒2023年⇒2025年

湿式と乾式の合計: 29億m2 ⇒85億m2(2.9倍)⇒132億m2(4.5倍)

湿式セパレータ :19億m2 ⇒61億m2(3.2倍)⇒98億m2(5.1倍)

湿式の比率:         65%⇒  71% ⇒  74%

乾式セパレータ :10億m2 ⇒24億m2(2.4倍)⇒33億m2(3.3倍)

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といったように、EV用途の拡大を受けて、湿式の需要、比率が拡大していきます。
2021年の29億m2から2025年には132億m2へと4.5倍に増加すると予想されていま
す。

▼記事の中に紹介のある世界需要予測 (WET:湿式 DRY:乾式) 

セパレータ世界需要 予測

■2023年の旭化成とW-SCOPEのシェア(湿式セパレータ)

旭化成が、計画通り、2023年度に約13.5億m2/年まで拡大したとします。

旭化成の湿式セパレータのシェアは、13.5億/61億m2で22.1%となります。

 

1月から12月と暦上の年と4月から3月の旭化成の決算の年がずれを無視して計算
しています。2022年上期(4月から9月)に商業生産開始とあるので、2022年の生産量は13.5億を超えない程度でしょう。

 

SBI証券のアナリストレポート(2022年6月30日付)から推察するに、
W-SCOPEの2023年の生産能力は、WCPの生産能力9億m2程度、WSKの生産能力がWCPの3分の1と程度と考えて3億m2程度と考えると、12億m2程度となります。
(売上は、WSKは、WCPの3分2程度です。総資産は、WSKは、WCPの3分の1程度です。WSKは民生品用途ですが、単価は民生品の方が高いと思われ、総資産の比率程度の生産能力の推定を採用しています。)

 

W-SCOPEの湿式セパレータのシェアは、12億/61億m2で19.7%です。

上記の見積もりでは、旭化成のシェアにわずかに及びませんが、情勢次第では、旭化成のシェアを超えることもあり得るような数字であることがわかります。

 

■2025年の旭化成とW-SCOPEのシェア(湿式セパレータ)

有価証券報告書には、『中期的に30億㎡体制を計画』とあります。中期的にが、いつぐらいの期間をさすのかわかりませんが、仮にこれを2025年に実現できる計画だとします。

湿式セパレータの生産は、多めに見積もって80%(2023年は71%)だすると、24億㎡です。

 

旭化成の湿式セパレータのシェアは、24億/98億 m2で24%です。

 

W-SCOPEは、WCP(とWCPハンガリー子会社)は 2025 年には韓国・ハンガリー合わせて年間 23 億m2程度の生産体制となる予定です。

 

これにWSKの6億m2程度の生産体制も加えると、29億m2程度となります。
W-SCOPEの湿式セパレータのシェアは、29億/98億m2で29%です。

旭化成より、シェアが5%程度 高くなります。

 

旭化成の『中期的に30億㎡体制を計画』というのが湿式乾式合わせたシェアも、
ダブルスコープが超える可能性があります。


中小企業が、特許で大企業から不当に訴えられる。
中小企業が裁判で勝つだけなく、製品、事業でも大企業にも勝つ
という展開は池井戸潤著作の小説に出てきそうな話です。

きっと、崔元根社長がドラマの半沢直樹を見てたら、『旭化成に倍返しだ!』と
闘志を燃やしていたかもしれません。

 

旭化成とW-SCOPEの特許裁判の最新記事

旭化成のセパレータ事業が心配に

 

2025年に30億㎡体制を計画するのであれば、遅くても、今年度中(2023年3月末期)に

計画を決定して、来年度(2024年3月末期)には実行する必要がありそうですが、まだ具体的な話がありません。

 

シェアが高いと
シェアが高い。⇒最新設備を導入でき、生産効率が高い。⇒製品、価格競争力が向上。⇒利益率向上⇒不況期でも設備増強(撤退せず)⇒シェアが高くなる。
という好循環が期待できます。

シェアが低いと、

シェアが低い。⇒最新設備を導入できず、生産効率が低い。⇒製品、価格競争力が劣る。⇒利益率低下⇒不況期に赤字で耐えられず、設備縮小(もしくは不況期に撤退)⇒シェアが低い という悪循環に陥る可能性があります。

 

日本企業の半導体(特にDRAM)事業の運命が今後、旭化成のセパレータ事業に待っているのかもしれません。

国内シェア1位の旭化成でさえ、このような状況です。

日本企業のセパレータ事業は危機感をもって、韓国企業が新規の投資をためらうぐらい、勇猛果敢な設備投資が必要だったのかもしれません(もう、遅いかも)。

 

エルピーダメモリのように破綻するのは、日本のセパレータ事業かもと予感させるブログ記事

 

■資金を調達するのが経営者

経営者の一番大事な仕事は、必要なタイミングで必要な資金を調達して、必要な投資することだと思います。

 

のブログで述べた通りです。

 

『敵よりも大いなる設備、資本、人材を利用、集結して競合を圧倒するとうのが、古今東西名経営者といわれる者が確立し実行してきた鉄則であった。』

設備、人材を利用、集結させるのも、資本(資金)が必要でしょう。

 

経営者に必要なたった一つのことをあげるとしたら、資金調達かも知れません。

 

不本意な敗戦

 

不本意な敗戦 エルピーダの戦い

不本意な敗戦 エルピーダの戦い

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という本を読んで、『経営者の仕事はまずは資金調達』と改めて思いました。

 

坂本幸雄氏は、エルピーダの再建は、資金調達の戦いだったような話にあふれています。いくつか引用します

 

エルピーダ:日立とNECDRAM事業の合弁企業の)社長に就任することがきまり、日立の庄山悦彦社長とNECの西垣社長のもとに挨拶にきました。お二人からは「十分にサポートする」という言葉をいただきましたが、この言葉は、本当に言葉だけのものでした。ビジネスの世界では「サポートする」と言えば、「資金面の支援」だと考えるのが常識ですが、そうではありませんでした。
(この後、生産能力を引き上げのための増資を日立、NECに要請するが断れる話が続く)

()内は私の補足です。

 

(社長就任後に示した7項目の目標の)なかでも重要だったのはIPOです。先に述べたように、親会社から出資を拒まれていたので、まとまった資金を手にするには、自ら上場して、公募のかたちで一般投資家に株式を買ってもらう必要がありました。
その頃の私は、喉から手がでるほど資金がほしい、という状態でした。

エルピーダIPO後)あるとき毎日5時からのテレビ会議で、「歩留まりがどうしてもよくならないが、ある装置を導入すれば問題は解消する」という提言があがったときがありました。装置の価格を聞くと、20億円ぐらいだと言います。
私はその場まで、OKを出しました。実際にそのころの歩留まり損は1週間で20億円にも達していましたから、投資を迷ってズルズルと損を出し続けるより、早めに手を打った方、出血が少なくなることは自明でした。
 しかし、この決定に、NECや日立の出身者はびっくりしていたようです。20億円の投資をNEC(や日立)で通そうとすると、まず数カ月に1回の投融資会議の承認が必要になります。その会議が近々開かれれる予定ならまだす救われるが、それが数カ月先だと、その間何もしないで待つしかないことになる。
 もちろん、投融資会議に提出するには何人ものハンコを集めなければなりません。
しかし、こうして時間を浪費しているうちに、日歩月歩の半導体産業では、ライバルが先にいってしまいます。

 

エルピーダは)本当にお金で始まりお金で終わった10年9カ月でした。

 

2012年2月(民主党政権時)、(円高半導体市況の低迷といった逆風にさらわれ、銀行から「借り換え」もことわられ)、「提携先を見つけて資本を増強できなければ、これ以上支援することはできない」という銀行団の意向に応えることはできませんでした。

 

 それ(会社更生計画手続)以降、会社の手持ちのキャッシュの残高がいくらになっているかが、経営の最重要関心事項になりました。手持ちの現金が底をつけば、事業継続の必要な支払いができなくなり、最悪の事態である「二次破綻」が現実のものとなります。

(中略)

 経営幹部を集めて毎朝9時半から開く朝会では、毎日キャッシュ残高の確認から始まるのが恒例となりました。

 

エルピーダの破綻(不幸)いついては、以下のブログで取り上げています。


■本の紹介

このブログを読んだ方(ブログの中で紹介し本も含む)が興味を持ちそうな本をいくつか紹介します。

 

 

不本意な敗戦 エルピーダの戦い

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読んで頂き、ありがとうございました。

誤字脱字、乱文雑文、すいません。

素人が趣味で書いているブログですので、その点、情報の正確性などご容赦ください。

 

銘柄メモ ダブル・スコープ6619 

 

タグメモ  ダブル・スコープ ダブルスコープ WSCOPE 崔元根 W-SCOPE
W-SCOPE Corporation ダブル・スコープ株式会社 旭化成

 

以 上です。