『この国は議員にいくら使うのか―高給優遇、特権多数にして「非常勤」の不思議』を読んで。


【議員一人の費用より議会全体の費用が大事では】

 1948年名古屋に生まれ、古紙業を営む家業に従事した後、1993年以降衆議院議員となり、税金の無駄遣いを厳しく追及している、民主党議員が、名古屋市長に当選する前の2008年に刊行した本で、高級待遇などが日本の政治家のモラルハザードの原因となっていると考える著者は、議員報酬の引き下げ(議員ボランティア化の第一歩)による減税を提言しています。

 町村議会など候補者不足が深刻化して定数を確保できない自治体もあり、地方議会は、私は議員報酬の引き下げより、定数の削減が適当なように思います。
 国会議員についていうと、衆議院参議院の二院制がそもそも必要なのか、参議院を廃止すれば、効率的な低コスト、スピーディーな議会運営ができると思います。


【議員が高級な理由】

国会法第三十五条に「議員は、一般職の国家公務員の最高の給与額より少なくない歳費を受ける。」と規定があり。国会公務員のトップ、事務次官より高い歳費が国会議員は法律で保証されています。

地方議員も同じような法律、条例あるか不明だが、同じ考えで報酬が決まってるもようです。
この制度は、戦後のGHQ占領政策で、議員に高い経済的報酬を与え、強い議員、優秀な議員を確保して、議会制民主主義を強固にするための施策がきっかけでできたようです。

 地方公務員で出世を目指して局長クラスを目指すより、局長クラス以上の報酬が保証された地方議員目指すのもありかも。若くて優秀な地方公務員で、改革志向のやる気のある人は、地方議会選立候補を検討してはと思いました。
国会議員と比べて地方議員は定数が多く、倍率も1.1倍から1.2倍程の選挙がほとんどだから、それほど当選の敷居は高くないように思えます。

 

【報酬以外の既得権益

日本の国会議員が2200万円や地方議員が1000万円近い年間の報酬があり、議員報酬だけでも高給ですが、
実際に以下のような手当や支給があり、いわゆる既得権益となっているようです。

政党の場合はこの他に政党助成金(2018年で総額318億円)もあります。

  • 委員長手当:衆参両院の各委員会の委員長には、国会開会中は1日6000円の手当が議員報酬とは別に支給され、1か月にすると18万円、会期150日の通常国会は90万円、両院の支給総額は5年間で総額4億円を超し、委員会が開かれない日も、土日祝日も、毎日支給されるもの。
  • 文書通信交通滞在費:国会議員が、公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなす等(国会法第38条)のため、月額100万円を支給される手当。非課税扱いで報告や公開の義務がないので、使途は自由で第二の給与と呼ばれている。
  • 政務活動費:日本における地方議会の議員に政策調査研究等の活動のために支給される費用で、自体により条例で決まっている。使途が決まっており、前払いの場合で支出しない場合は、議員は自治体に返還するし、後払いの場合は利用分を請求する自治体が多いらしいが、毎年のように不正支出がニュースになる。
  • 費用弁償: 地方自治法の「議員は職務を行うため要する費用の弁償を受けることができる」との規定に基づき、各自治体が条例で支給方法や金額を定めているもので、簡単に言うと主に議員に対する交通費支給です。しかし、交通費支給は実費でなく、5000円から1万円の日当として支払われていらしい。

【おおさか維新も身を切っていない政務活動費】

 地方議員一人当たりの政務活動費の月額は、北海道網走市では2万円、佐賀市5万円、
東京都葛飾区、埼玉県川口市では18万円、大阪市名古屋市は50万円、横浜市55万円、東京都議は60万円など、人口規模の大きな自治体、政令指定都市都道府県議になると高くなり、町村議会はほどんど支給されずに、支給される自治体も1万円以内らしい。


「身を切る」改革をモットーにするおおさか維新の議員でも、不正支出がニュースになり、選挙のたびに「身を切る」と叫んで政治家に対して、不信感がつよくなります。

2014年におおさか維新の北野礼一元堺市議は、政務活動費としてゴルフコンペの景品購入代などに約1050万円を支出し、辞職をした。

2015年におおさか維新の伊藤良夏大阪市議がトヨタの高級車「レクサス」500万円以上の購入費用の一部に政務活動費80万円あまりを充てていて、返還しました。

2018年におおさか維新の小林由佳堺市議が未配布だった政策ビラの印刷代金1000万円近くを不正支出したとして、
辞職をした。小林氏は約400万円を返還する一方、約600万円分については支出の実態があると主張していた。つまり、400万円は不正に支出したとうことです。

こんな感じで、選挙で『政治家が身を切る』とアピールしているおおさか維新の議員でもこんな不正が報告されています。

そのほか、
2014年に兵庫県議会の野々村竜太郎議員の不正利用が話題になったり、
2016年に、富山市議会においては、自民党民進党の会派の多数の議員が、政務活動費を不正に受け取っていたことが合わせて9人の議員が辞任するに至ったり、毎年のようにどこかの自治体で問題となっています。

【改めて本の紹介です】   

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この国は議員にいくら使うのか―高給優遇、特権多数にして「非常勤」の不思議 (角川SSC新書) 新書 – 2008/9/10
河村 たかし (著)
商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
日本の議員はなぜ高給取りになったのか?その源は、戦後まもなく施行された国会法第35条にあった。曰く『議員は、一般職の国家公務員の最高の給料額より少くない歳費を受ける』。言い換えれば「国会議員の給料が上がらなければ官僚の給料も上がらない」―。かくして、役人と議員による高給高待遇路線は始まった。流れは地方議員にも波及し、さらに「議員特権」という手当によって膨れ上がった。本書では、この異常事態の現状を具体的に示す。そして、是正されない理由を「党議拘束」という日本独自のシステムから読み解き、その解決策も提示する。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
河村/たかし
1948年11月3日生まれ。愛知県名古屋市出身。県立旭丘高校を経て、一橋大学商学部卒。古紙業を営む家業に従事し、中小企業の辛酸を体験。93年に衆議院議員総選挙で初当選。以降、5期連続当選し、現在は民主党所属(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

以上