『マンガ - コサインなんて人生に関係ないと思った人のための数学のはなし』 を読んで

 漫画家が書いた一部漫画を使って、数学を解説した本ですが、漫画の解説がわかりやすいか。また、面白いかというと、判断が難しいです。
ただし、解説文は、わかりやすく、面白く、読書が興味がわくようにという意図は伝わる内容で、その意図は達成されていると思ました。

 

 以下は、自分が特に興味があった点を記載する。要約というより、自分の理解を深めるための記載です。

 〇 スーパーなどのレジで利用されるバーコードは、13桁で、13桁目はチェックデジットの数字で、左から奇数の順番の数字 + (左から数字の順番の数字 × 3 )=10の倍数となるようなコード体系になるように、数字が決定される。
この仕組を利用し、読み間違いを防ぎ、レジで読み取りエラーになるのは、このチェックデジットのルールに合わない場合もあるらしい。チェックデジットの例でわかりやすいと思いました。

 〇 円周率πを3で計算すると円周の長さが正6角形の周辺の長さと同じになるから、妥当でありません。
円周の長さ 半径r × 2 × 円周率π = 6r
正六角形の長さ 半径r × 6 = 6r

 

 〇 パスカルの『神は存在するか、しないか。どちらに賭ける?』という問題は、『存在するに賭けたほうが、確率論的に期待値が多く、リスクも少ない』という確率論で説明できます。いない方に賭ける場合、神がいた場合のメリットは有限でデメリットは無限である。いない方に賭けた場合、神がいない場合の、メリットは有限で、デメリットは有限である。デメリットが無限になる可能性がる神がいないと賭けるとべきではありません。
いる方に賭けた場合、神がいる場合のメリットは無限で、デメリットは有限である。神がいない場合のメリット、デメリットも有限である。メリットが無限になる神がいるほうに賭けたほうがいい。無限と有限の場合、期待値の計算では、無限が大きいと判断されます。


 〇 全ての整数は、1と素数と「素数素数の掛け算」で表現できます。

 〇 ネットのセキュリティ確保で利用されるRSA暗号素因数分解(ある数字を「素数素数の掛け算」に分解すること)の難しさが、利用されている。共通鍵暗号 common key cryptosystem:情報を暗号化して送る人も、受け取って複合化します。
ABC ⇒ CDE と2文字アルファベットを後にずらす。暗号、複合は2文字アルファベットを前にずらす。といったシーザー暗号も共通鍵である。2文字後ろにずれる。という情報が共通鍵となります。

 〇 公開鍵暗号(こうかいかぎあんごう、Public-key cryptography)とは、暗号化と復号に別個の鍵(手順)を用い、暗号化の鍵を公開すらできるようにした暗号方式である。 つまり、暗号化と複合化の鍵が違います。
暗号は通信の秘匿性を高めるための手段だが、それに必須の鍵もまた情報なので、鍵を受け渡す過程で盗聴されてしまうというリスクがあった。共通鍵を秘匿して受け渡すには(特使が運搬するというような)コストもかかり、一般人が暗号を用いるための障害であった。この問題に対して、暗号化鍵の配送問題を解決したのが公開鍵暗号である。 RSA暗号もこの暗号方式です。

 〇 RSA暗号の仕組
 公開鍵と秘密鍵
 大きな素数 p, q が与えられたとき、その積 n = pq を計算することは容易である。しかし逆に、2つの大きな素数の積であるような自然数 n が与えられたとき、n = pq と素因数分解することは難しい。例えばn=21のときp=7,q=3を求めるのは容易だが、鍵の大きさ(すなわちp, q のビット数)が十分に大きければ、素因数分解にはとてつもない時間が掛かります。
 RSA暗号は、公開鍵の生成、公開鍵で暗号化、秘密鍵(受信者しか知らない鍵)で復号のアルゴリズムで、素因数分解の仕組を利用しています。
 以下の例でわかりやすいように素数を小さくしてい、解説されています。
 ‐ 公開鍵の生成:33(一例)で割った余りを答とすると、3の1乗、11乗、21乗の答も3になり、3の2乗、12乗、22乗の答も6となるような法則性がある。33は3と11という素数の掛け算で求まります。3と11から1ひいた 2と10の最小公倍数は10で、これ1乗なら1、2乗なら2を足した数字で元にもどります。この法則性を利用して、数字を三乗にして、33(一例)で割った余りを答とする 公開鍵を利用します。
    
 ‐ 公開鍵で暗号化:5という数字を暗号化すると、5を三乗して、33で割った余りの26という数字が暗号化された数字になります。
 ‐ 秘密鍵で暗号化:受信者は、33という数字、素数 3×11で計算できるが、この素数の組合せは知らされています。
   3と11から、11乗、21乗したら、暗号化の数字は同じになる。素に3乗されているので、この場合、21乗 ÷ 3乗で 7乗になります。
   26の7乗の8031810176 に 33で割った余りは 5となります。

 ‐ 33という数字は、小さいので、3×11の素数の掛算とすぐわかるが、300桁以上の巨大素数の掛け算が利用されるRSA暗号はでも「一般のPCを使用する場合解読に2000年以上かかる」「スーパーコンピュータで640個のノードすべてを使用した場合でもキーデータを見つけるのに10年ほどかかる」などとする研究があるらしいです。

 

改めて本の説明

 

 

『マンガ - コサインなんて人生に関係ないと思った人のための数学のはなし 』(中公新書ラクレ) 新書 2014/6/9
タテノカズヒロ (著)
内容紹介
素数」「黄金比」など、職場や恋愛シーンで実感!

1テーマ1マンガ完結。やさしい解説文つき

職場や恋愛など日常シーンを舞台に、数学の美しさ、魅力を体感!
確率、円周率、素数など義務教育の範囲から、
黄金比フィボナッチ数列といった話題まで1テーマ1話完結。
初心者にもやさしい解説文つき。
理系イラストレーターが贈る、数学愛あふれるコミックエッセイ。

○目次
プロローグ

第1話 宝くじを当てるためには【確率】
第2話 CDと火星探査機とバーコードの秘密【符号理論】
第3話 「円周率は3である。」は悪か?【円周率】
第4話 「ドラゴンファンタジア」と「対数」の関係【対数】
第5話 人間の耳や鼻や舌の作り方【ウェバー・フェヒナーの法則】
第6話 もし借り物競走で『-2個のリンゴ』という紙を渡されたら【負の数・前編】
第7話 どうしてマイナスかけるマイナスがプラスになるの?【負の数・後編】
第8話 ネットの秘密を守るミラクル暗号【暗号・前編】
第9話 素数がくれた魔法のカギ【暗号・後編】
第10話 数学を好きになる方法【インド式計算】
第11話 世界を知るためのサイン・コサイン【前編】
第12話 世界を知るためのサイン・コサイン【後編】
第13話 素数の力で生き抜いた生物【素数ゼミ】
第14話 35億人の名前が書かれたのれん【代数学
第15話 因数分解でバラエティの編集【因数分解
第16話 ピタゴラス弟子殺害事件【無理数
第17話 どうしてバラで愛の気持ちを伝えようとするのか【黄金比
第18話 「モッタイナイ」の心を持つ数字【白銀比
第19話 じゃあナメック星は8進法でしょうね【アラビア数字と10進法と位取り記数 法】
第20話 コンピュータが0と1で動いてるってどういうこと?【2進法】
第21話 植物の葉っぱの生え方に潜む数学的ルール【フィボナッチ数列
第22話 天下無双の不変の関数は宇宙を支配する【オイラー数】
第23話 パイは初恋の人のように【円周率】
第24話 「割ッテハイケナイ」最恐の数【ゼロ】
第25話 ヒルベルトホテルでは自然数と偶数は同じ個数【無限】
第26話 素数とは芸能界の椅子である【素数
第27話 幽霊を信じたほうがいいかどうかを数学的に決断しました【パスカルの賭 け】
第28話 もしも三角形の内角の和が180度ではない世界だったら【美しき永遠の真 理】
第29話 神様のコインロッカー【ゲーデル不完全性定理
第30話 不思議ちゃんは都合のいい女【虚数
エピローグ 数学は美しければいいのだ
参考文献
内容(「BOOK」データベースより)
職場や恋愛など日常シーンを舞台に、数学の美しさ、魅力を体感!確率、円周率、素数など義務教育の範囲から、黄金比フィボナッチ数列といった話題まで1テーマ1話完結。初心者にもやさしい解説文つき。理系イラストレーターが贈る、数学愛あふれるコミックエッセイ。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
タテノ/カズヒロ
漫画家・イラストレーター。兵庫県宝塚市出身。神戸大学工学部卒業。ヤングマガジン「月間新人漫画賞」佳作受賞後、別冊ヤングマガジンにて読み切り掲載で漫画家デビュー。第1回ほぼ日マンガ大賞入選。ほぼ日マンガ大賞2012佳作(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

以上です。

 

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