『歴史は「べき乗則」で動く』 を読んで 第13章 「学説ネットワークの雪崩」としての科学革命


『歴史は「べき乗則」で動く』 は難解な本だったので、一章ずつ、要約や感想を書いています。

 今回は、『「学説ネットワークの雪崩」としての科学革命』というタイトルの章に関する話です。自然科学だけでなく、社会学歴史学といった社会科学でも、臨界状態(秩序や無秩序の変化)の性質、べき乗則が応用できるのではないかという話です。

 

第13章 「学説ネットワークの雪崩」としての科学革命

 

 論文の数とその引用数に関する面白い調査結果をこの章は紹介しています。

有用な論文、影響を与えた論文はそれだけ引用数が多いということで、論文の価値はその引用数で測れます。

1988年ボストン大学の物理学者シドニー・レドナーは、1981年に発表された論文約78万の論文で、その引用数を調査しました。

その結果、

○ 約78万本の論文のうち、半数近くの約36万本もの論文が一度も引用されていない。

○ 100回以上、引用されたいる論文は、引用回数の分布がスケール不変的なべき乗則に従うこと。

○ 引用回数が増えるとともに、その論文の数は規則的、指数関数的に減っている。

○  引用回数が2倍になると、そのような論文の数は約8分の1になる。

ということがわかりました。

下の図が、調査結果の分布をグラフ化したものですが、

縦軸が論文の数で、横軸が引用された回数で、それぞれの10のべき乗で表していす。

10の4乗、1万回以上引用された論文の数は10の1乗、つまり10を超えない数だということがわかります。

 

引用された回数に対する論文の分布

引用された回数に対する論文の分布

 

戦争の数と戦死者数に関する面白い調査結果もこの章は紹介しています。

1920年代にイギリスの物理学者ルイス・リチャードソンは、1820年から1929年までに勃発した82の戦争について、戦死者の数を利用して、どの程度の規模の戦争がどの程度の頻度で行われているか調査しました。

その結果、

○ 非常に単純なべき乗則が成り立つ。

○ 死者数が2倍になるたびに、戦争の頻度が4分の1になる。

ということがわかりました。

下の図が、調査結果の分布をグラフ化したものですが、

縦軸が戦争の数で、横軸が死者数の回数で表していす。

10million(1000万)人以上の死者数の戦争は1回ですが、これは第一次世界大戦でしょう。

死者数の数と戦争の分布

死者数の数と戦争の分布


 『所得や資産の分布と同じように、大多数の人は平均未満の値を持ち、ごく少数の人がとても高い値を持つ。』といったべき乗則の法則が、論文の影響度(引用数)や戦争の規模の調査にも当てはまるということです。

 

第14章以降は、次のブログで記載します。

 

本の紹介 

歴史は「べき乗則」で動く――種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ) (日本語) 文庫 – 2009/8/25
マーク・ブキャナン (著), Mark Buchanan (原著), 水谷 淳 (翻訳)

 

 

chanmabo.hatenablog.com

 

以 上