リアル半沢直樹 西川善文氏(元三井住友銀行頭取)の苦闘 -天皇 磯田一郎会長に倍返しするまで-

 

に続けて、

リアル半沢直樹 西川善文<にしかわ・よしふみ>氏の活躍、活躍というより苦闘という表現があっているかも、その苦闘を紹介します。

どんな活躍をしたのか、彼の回顧録

ザ・ラストバンカー 西川善文回顧録

に従って、一章ずつ紹介しています。 

 

今回は、『第三章 磯田一郎の時代』 で、彼の半沢直樹的な活躍、倍返し的な苦闘を紹介したいと思います。

 誰に倍返ししたかというと、当時の会長で、住友銀行天皇と呼ばれる程に権力、権威があった磯田一郎氏に対して、倍返ししました。

  磯田氏は、頭取、会長として15年間も住友銀行のトップに君臨していましたが、磯田氏の収益至上主義的な積極的な経営判断は、西川氏も含めて、住友銀行の多くの行員は大きく苦しむことなるのです。

平和相互銀行の合併

 『やられたらやり返す、倍返しだ!』ということで、どんな不条理な扱いを受けて、どんな仕打ちを受けたのが、磯田氏から西川氏は受けたのでしょうか。

本当にびっくりしましたが、

ドラマの半沢直樹のように、

  • 磯田氏が営業担当だったときに、西川氏の実家の町工場から融資を突然回収して、生命保険金目当てに、西川氏の父は自殺した。
  • その町工場はネジ工場だった。

なんて、事実はく、私怨はなかったようです。

また、磯田氏の収益重視の経営方針について、異論を唱え、雨の中、傘を持たずずぶ濡れになる西川氏が、下の画像のような光景で、傘を持つ磯田氏に対して、

『銀行は雨の日に傘を貸さずに、取り上げる』と非難していた。

なんてこともなかったようです。

 

大雨での半沢直樹と大和田常務「銀行は雨の日に傘を貸さずに、取り上げる」

大雨での半沢直樹と大和田常務「銀行は雨の日に傘を貸さずに、取り上げる」

 

 むしろ、人事部長として、西川氏の採用面接を担当したり、その後も取り立ててくれることがあったそうで、恩義こそあれ、私怨は全くなかったそうです。

 ただ、磯田氏が会長時代に主導した平和相互銀行を合併では、平和相互銀行の不採算な店舗の整理や不良債権の回収に、企画部部長、融資の担当専務として、非常に苦労し、結果論ではありますが、『平和相互銀行を買わなくてよかった。』と述べています。

イトマン事件

 倍返しのきっかけとなったのは、イトマン事件(ちなみに、オリンピック選手も輩出した名門イトマンスイミングスクールはこの会社が経営していました。)です。

 イトマンという大阪の商社があり、主力行の住友銀行(現:三井住友銀行)の役員だった河村良彦氏が社長をし、ワンマン経営により、不動産への過剰投資、絵画・骨董品への不正取引で、イトマンは破綻しますが、河村氏は磯田氏のいわば子飼いで、磯田氏の権威、権力のもと、河村氏のイトマンの乱脈経営が実施されたもようです。

イトマン事件のWikipediaの記載では、

伊藤萬の不動産投資による借入金が1兆2000億円に及んだことが明らかになったことをきっかけに、許は、河村に、美術品や貴金属などを投資すれば経営が安定するとの話を持ちかけた。これを受けて、伊藤萬は許永中の絡む三つの会社から、許永中の所有していた絵画・骨董品などを総額676億円で買い受けた。さらに磯田の娘も不明朗な絵画取引に加わったとされる。これらの美術品は鑑定評価書の偽造などが行われ、市価の2~3倍以上という法外な価格であったが、河村や伊藤はこれを認識しながら買い受け、これによって伊藤萬は多額の損害を受けた。異常な取引が続いた背景には河村が磯田の後ろ盾でワンマン体制を取っており、誰も河村を止めることができなかった事情があった。

そのほか、伊藤や許は、伊藤萬に対して、地上げ屋の経営や、建設の具体性の見えないゴルフ場開発へ多額の資金を投入させた。

とあります。

 

 磯田会長は長女を溺愛していたようで、その影響で、イトマンの河村社長も良く面倒をみていたそです。長女の勤務先の会社のピサをいう会社が、不明朗な絵画取引の間に入っていたそうです。

 大和田常務が妻の事業を支援させるために銀行に不正に融資させたり、三笠副頭取が、娘の留学費用を取引先に負担させたりといった不正がドラマに出てきますが、まさにドラマのような話があったのかも知れません。

 西川氏の回顧録でも、磯田氏の長女の溺愛ぶりを示すエビソードとして、長女が後に結婚する男性とロスアンゼルスに駆け落ちしたが、秘書を派遣して、二人を連れ戻したエピソードを、西川氏本人が磯田氏の秘書から聞いた話として紹介しています。

 

 ちなみに、半沢直樹 1 オレたちバブル入行組 (講談社文庫) もKindleunlimited で無料で見れますので(2020年9月30日現在)、本を買うよりお得かもしれません。

 

 長くなってしまったので、倍返しする話は次回のブログで紹介ます。

といっても磯田氏に、倍にして仕返ししたよう話でもないですが。

 

 ▼次のブログ

 

本の紹介

ザ・ラストバンカー 西川善文回顧録 西川 善文(著) 2011年10月初版

 

 

 

著者について
西川 善文<にしかわ・よしふみ>
三井住友銀行頭取、前日本郵政社長。1938年奈良県生まれ。1961年大阪大学法学部卒業後、住友銀行に入行。大正区支店、本店調査部、融資第三部長、取締役企画部長、常務企画部長、専務等を経て、1997年に58歳の若さで頭取に就任し8年間務める。2006年1月に民営化された日本郵政の社長に就任するも、政権交代郵政民営化が後退したため2009年に退任。現在は三井住友銀行最高顧問。

 

内容(「BOOK」データベースより)
私は悪役とされることが多かった―。顔が見える最後の頭取=ザ・ラストバンカーと呼ばれた著者が綴った、あまりに率直な肉声!安宅産業処理、平和相銀・イトマン事件、磯田一郎追放、銀行大合併、UFJ争奪戦、小泉・竹中郵政改革。現場にいたのは、いつもこの男だった。密室の出来事すべてを明かす! 

 

逃げたらあかん!
不良債権と寝た男」、死に物狂いの仕事人生

安宅産業処理、平和相銀・イトマン事件、磯田一郎追放劇、銀行大合併、UFJ争奪戦、小泉・竹中郵政改革……。現場にいたのは、いつもこの男・西川善文だった。「最後の頭取」=ザ・ラストバンカーと呼ばれた著者が綴った、あまりに率直な肉声!

マスコミ報道の騒乱の中で失われた金融史のミッシングリングを埋める。

<目次>
◎第一章 バンカー西川の誕生 ◎第二章 宿命の安宅産業 ◎第三章 磯田一郎の時代
◎第四章 不良債権と寝た男 ◎第五章 トップダウンとスピード感 ◎第六章 日本郵政社長の苦闘 ◎第七章 裏切りの郵政民営化

以上です。

 

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飛青磁花生 元時代(国宝) 安宅コレクションの一つ 大阪市立東洋陶磁美術館収蔵

青磁花生 元時代(国宝) 安宅コレクションの一つ 大阪市立東洋陶磁美術館収蔵

 

大阪市立東洋陶磁美術館は、この膨大な安宅コレクションを収蔵、展示するために建設されたのが、大阪市立東洋陶磁美術館

安宅コレクションを収蔵、展示するために建設されたのが、大阪市立東洋陶磁美術館

 

ザ・ラストバンカー 西川善文回顧録

ザ・ラストバンカー 西川善文回顧録