リアル半沢直樹 西川善文氏の金融庁との戦い、逆さ合併で大逆転へ。

 

に続けて、

リアル半沢直樹 西川善文<にしかわ・よしふみ>氏の活躍、活躍というより苦闘という表現があっているかも、その苦闘を紹介します。

どんな活躍をしたのか、彼の回顧録

ザ・ラストバンカー 西川善文回顧録

に従って、紹介しています。 

 

今回は、『第四章 不良債権と寝た男』の中の、西川氏が金融庁検査と戦い、金融庁の国有化方針と戦う話です

金融庁検査官_黒崎駿一_ドラマ半沢直樹より.jpg

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 ドラマ半沢直樹では、金融庁検査官 黒崎が主人公の半沢を窮地に陥れようとするシーンは、見どころの一つです。リアル半沢直樹 西川善文氏が頭取として、金融庁検査、検査という金融庁の行政そのものと戦う姿も、まさにドラマのようですね。

 なお、この時の西川氏のライバルは、竹中平蔵金融担当大臣、竹中大臣率いる金融庁の「金融分野緊急対応戦略プロジェクトチーム」、いわゆる竹中チームだったようです。

 

 ゴールドマンサックスからの巨額増資を引き出す

 2002年10月に竹中チームは金融再生プログラムを発表し、2004年度までに不良債権の半減を求め、その結果、資本不足になる場合は公的資本の投入を決定しました。公的資本の投入とは、国が株主になる、つまり、一時的な国有化も意味します。

 実際に、りそな銀行は破綻寸前という認定され、りそな銀行は、政府による、総額1兆9660億円の公的資金注入(正確には預金保険機構による株式取得)が実施され、一時りそな銀行は事実上預金保険機構筆頭株主となり、一時的な国有化が実施されています。国有化は倒産ではないですが、銀行の場合、倒産はさせられいので、国有化して、国の管理監督が強め、経営の自主性が奪って、国主導で再建させるということです。

 

 竹中チームの金融再生プログラムの前から、銀行の大幅の資本増強が必要なことは西川氏もわかっていたようで、2002年5月に、米国の投資銀行ゴールドマン・サックス社のポールソン会長と面談し、資本の増強のため、株式の引き受けを要請しました。

 結果として、2003年1月に、ゴールドマン・サックス社が三井住友銀行優先株1503億円を直接引き受けて、加えて、3405億円の優先株を海外の投資家にゴールドマン・サックス社を通して販売してもらいまいした。

 海外投資家への販売分3405億円は、もともとは3000億円だったようで、ぎりぎりのところで、追加で500億円が必要になり、深夜によるテレビ会議で、直接、西川氏がポールソン会長に協議して決定したそうです。本当にドラマのような展開ですね。

 5000億円の海外投資家からの優先株の発行による資本増強だけでは不十分だったようで、『逆さ合併』という奇策を実行します。

 

 

 

 まさかの逆さ合併

  2003年3月に、旧さくら銀行の子会社、わかしお銀行(経営破綻した地方銀行の太平洋銀行の営業を引き継ぐための受け皿銀行)を、住友三井銀行が合併します。

 当然、親会社と子会社、日本のメガバンクと一度潰れた地方銀行との合併ですから、三井住友銀行が存続会社となり、わかしお銀行が消滅会社となると思いますが、そうではなく、三井住友銀行を消滅会社として、わかしお銀行が存続会社として、合併したのです。このような小が大をのむ合併、実質的な存続会社と法的な存続会社が逆になっている合併が『逆さ合併』と呼ばれます。

 

 『できることなら私もしたくなくなかった。平成創業のわかしお銀行の法人格を残すことで、明治28年創業の歴史と伝統のある住友銀行の法人格が消滅してしまったのだ。しかも、この手法は一度きりしか使えない、銀行が生き残るための”切り札”であり、文字通り名より実を取るやり方であった』

と西川氏も振り返ります。

 

 逆さ合併をした理由が、わかしお銀行が優良で知名度が高かっただったわけでなく、会計処理による含み益の実現です。

 当時、三井住友銀行は、有価証券の評価損8,000億円が三井住友銀行自己資本を大きく毀損し、準国有化の懸念がありました、三井住友銀行の全国津々浦々の土地の含み益は2兆円程度あり、この含み益を再評価して、実現した利益にできれば、評価損を計上しても、1兆円程度の自己資本の増強ができました。

 そのために、三井住友銀行わかしお銀行に吸収合併させることで、三井住友銀行の土地を再評価して、2兆円程度の利益を実現し、優良銀行に変身できたのです。

 逆さ合併といっても、三井住友銀行の法人格が消滅するわけですから、取引先との契約や許認可などとの交渉など相当、苦労があったはずで、西川氏も、イギリスの金融庁から、認可が取消という事態を防ぐために、ロンドンに飛び、イングランド銀行の総裁とトップ交渉をしたそうです。

 本当にドラマや小説でも出てきそうな話ですが、逆さ合併なんて、当時ではドラマや小説でもでてきそうにない話です。

 いずれにしても、西川氏は2002年度に9.7%の不良債権比率(不良債権額 5兆9千億円)を、2004年9月期には、4.4%の不良債権比率(不良債権額 2兆5000億円)にすること、不良債権を半減以下にする成功し、金融庁の国有化方針から、三井住友銀行を守ったのです。

ちなみに、金融庁検査官 黒崎は、西川氏が頭取の時代の金融不安の時代、大手の銀行を厳格な検査を実施し、資料の隠ぺい工作を暴いて、業務停止に追い込み、その銀行は合併に追い込まれた。という逸話が小説で紹介されていた記憶がありますが、これは2003年のUFJ銀行の金融検査忌避事件をネタにしているのだと思います。

 

 ちなみに、半沢直樹 1 オレたちバブル入行組 (講談社文庫) もKindleunlimited で無料で見れますので(2020年9月30日現在)、本を買うよりお得かもしれません。

 

本の紹介

 

 

著者について
西川 善文<にしかわ・よしふみ>
三井住友銀行頭取、前日本郵政社長。1938年奈良県生まれ。1961年大阪大学法学部卒業後、住友銀行に入行。大正区支店、本店調査部、融資第三部長、取締役企画部長、常務企画部長、専務等を経て、1997年に58歳の若さで頭取に就任し8年間務める。2006年1月に民営化された日本郵政の社長に就任するも、政権交代郵政民営化が後退したため2009年に退任。現在は三井住友銀行最高顧問。

 

内容(「BOOK」データベースより)
私は悪役とされることが多かった―。顔が見える最後の頭取=ザ・ラストバンカーと呼ばれた著者が綴った、あまりに率直な肉声!安宅産業処理、平和相銀・イトマン事件、磯田一郎追放、銀行大合併、UFJ争奪戦、小泉・竹中郵政改革。現場にいたのは、いつもこの男だった。密室の出来事すべてを明かす! 

 

逃げたらあかん!
不良債権と寝た男」、死に物狂いの仕事人生

安宅産業処理、平和相銀・イトマン事件、磯田一郎追放劇、銀行大合併、UFJ争奪戦、小泉・竹中郵政改革……。現場にいたのは、いつもこの男・西川善文だった。「最後の頭取」=ザ・ラストバンカーと呼ばれた著者が綴った、あまりに率直な肉声!

マスコミ報道の騒乱の中で失われた金融史のミッシングリングを埋める。

<目次>
◎第一章 バンカー西川の誕生 ◎第二章 宿命の安宅産業 ◎第三章 磯田一郎の時代
◎第四章 不良債権と寝た男 ◎第五章 トップダウンとスピード感 ◎第六章 日本郵政社長の苦闘 ◎第七章 裏切りの郵政民営化

以上です。

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