東京都知事選の供託金300万円は安い!(『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』を読んで)

埼玉県で生まれ育った私は東京都知事選で投票できる東京都民がうらましかったです。
毎回、多くの話題となる候補者が立候補し、テレビなどでの討論を聞いて、『この人に投票したいな。』と思うときがよくありました。


は、前回の2016年の都知事選のいわゆる泡沫候補を描いたノンフィクションです。
泡沫候補一人一人の候補者の選挙にかける思いやその戦いを取り上げています。

2016年東京都知事選挙は、立候補者は全部21人です。
おそらくこの21人の全ての人を知っているのは、著者の畠山氏ぐらいでしょう。

参考URL:東京都知事選の21名の候補者について

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/2016年東京都知事選挙

 

東京都知事選の供託金は300万円は安い】

東京都知事選の供託金は300万円。

主要候補の小池百合子氏、増田寛也氏、鳥越俊太郎氏以外の18人、いわゆる泡沫候補の18人は落選確実の選挙に300万円を支払って、自分の主張を選挙の場で訴えたのです。

しかし、300万円は広告宣伝費と考えたら、大変安い金額かもしれません。そんな理由が毎回、東京都知事選に多くの人が立候補する理由かも知れません。

立候補者は300万円も用意し、面倒な立候補手続を独力で完了させた人達。
そんな人が自分たちの計算で、費用対効果が高い、お得な選挙、費用対効果が高いと考えて、出馬しているのではと推察します。

供託金300万円でできることは以下の通りです。

〇 政見放送NHKの首都圏放送で6分間、2回、放送されます。
〇 新聞に選挙広告4回分(ヨコ94mm、タテ2段)を掲載できます。
〇 東京都の有権者数は1000万人、有権者のいる全世帯に選挙公報が配布されます。
〇 2000カ所の投票所で、自分の名前を掲示できます。
〇 ポスター掲示版は1万5000カ所で2週間程度、自分のポスターを掲示できます(ポスターは別費用がかかる広告スペースの価値は大きい)。

おそらく、政見放送と新聞広告だけでも、300万円の価値があるでしょう。
つまり、費用対効果が大変高い選挙といえ、毎回東京都知事選に多くの人が立候補する理由もわかります。
そのうえ、新聞広告の広告業者からキックバックから受けることもできるもようです。
広告業者は選挙管理員会に広告費を定価の200万円で請求し、100万円をその候補者に還元するような仕組も可能のようです。どの新聞に、いつ広告を掲載するかは候補者は選べるので、広告業者の営業努力の一環でしょうか。

次回の東京都知事選について、2019年6月18日告示、7月5日投開票の予定です。
マスコミやネットなどに露出する機会も考えると、政治的主張の宣伝や売名を考えている人にはいい機会だと言えます。


参考URL:新聞の選挙広告について

http:// https://www.shinbun-navi.com/landing/lan17.html

 

マック赤坂について】

マック赤坂氏は「黙殺」で「マック赤坂という男」という章を割いて詳しく取り上げています。
泡沫候補の代表といったマック赤坂さんですが、実は京大卒、伊藤忠入社、年商50億円の会社を創業。という立派な経歴で優秀な方だとこの本で知りました。

 

【立花孝志氏について】

立花孝志氏の逸話も描いています。
高橋尚吾氏(当時32歳)の候補者がマイクも街宣車もないことを知り、
立花孝志氏から、「僕のマイクと街宣車を使ったら」と声かけたそうです。
高橋氏が「ヤドカリ選挙」で一緒に演説して選挙活動した話など、立花氏の優しさを感じる話です。

都知事選の頃から、次回の参院選で2%の得票をとる(国政政党、公党になる)と語っている立花氏の目標達成能力の高さも感じました。

 

【選挙ポスターについて】
著書で畠山氏が提案している選挙ポスターのデジタル掲示板化は、選挙のコスト削減、候補者のポスター格差解消、普段は広告で収益に。という話は、一石三鳥くらい悪い話がないので、是非実現してほしい。
都市部の繁華街、駅の近くなどであれば、防犯上の問題も少なく、広告での収益が大きいし、大きな支障はないであろう。

参考URL:選挙ポスター掲示板のデジタル化について
https://politas.jp/features/1/article/91

 

 

内容紹介
落選また落選! 供託金没収! それでもくじけずに再挑戦!
選挙の魔力に取り憑かれた泡沫候補(=無頼系独立候補)たちの「独自の戦い」を追い続けた20年間の記録。
候補者全員にドラマがある。各々が熱い思いで工夫をこらし、独自の選挙を戦っている。
何度選挙に敗れても、また新たな戦いに挑む底抜けに明るい候補者たち。
そんな彼・彼女らの人生を追いかけた記録である。

2017年 第15回 開高健ノンフィクション賞受賞作

【目次】
第一章/今、日本で最も有名な「無頼系独立候補」、スマイル党総裁・マック赤坂への10年に及ぶ密着取材報告。
第二章/公職選挙法の問題、大手メディアの姿勢など、〝平等"な選挙が行なわれない理由と、それに対して著者が実践したアイデアとは。
第三章/2016年東京都知事選挙における「主要3候補以外の18候補」の戦いをレポート。

【選考委員、大絶賛! 】
キワモノ扱いされる「無頼系独立候補」たちの、何と個性的で、ひたむきで、そして人間的なことか。――姜尚中氏(政治学者)
民主主義とメディアについて、今までとは別の観点で考えさせられる。何より、作品として実に面白い。――田中優子氏(法政大学総長)
ただただ、人であることの愛おしさと愚かさを描いた人間讃歌である。――藤沢 周氏(作家・法政大学教授)
著者の差し出した時代を映す「鏡」に、思わず身が引き締まる。――茂木健一郎氏(脳科学者)
日本の選挙報道が、まったくフェアではないことは同感。変えるべきとの意見も賛成。――森 達也氏(映画監督・作家)
(選評より・五十音順)

【著者プロフィール】
畠山 理仁(はたけやま みちよし)
1973年、愛知県生まれ。早稲田大学第一文学部在学中の1993年より雑誌を中心に取材・執筆活動を開始。関心テーマは政治家と選挙。著書に『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える! 』(集英社)。取材・構成として『日本インディーズ候補列伝』(大川豊著、扶桑社)、『10分後にうんこが出ます』(中西敦士著、新潮社)、『新しい日米外交を切り拓く』(猿田佐世著、集英社)なども担当。

以上