『歴史は「べき乗則」で動く』 を読んで 第15章 歴史物理学の可能性


『歴史は「べき乗則」で動く』 は難解な本だったので、一章ずつ、要約や感想を書いています。

 今回は、『歴史物理学の可能性』というタイトルの章に関する話です。物理学者が自然現象を単純化、抽象化して科学的に解明したように、歴史、歴史事象も、正確な予想はできないが、べき乗則のような規則性が成り立し、非平衡的統計物理学が歴史の特徴、歴史の平衡関係を明らかにするという話です。

簡単にいうと、『歴史も物理学というべき乗則のような一定の法則が働く。』ということです。

 

歴史物理学の可能性

 奇跡や偶然と呼ばれる事象は、多くは奇跡でなく、偶然ではなく、科学的に究明されています。例えば、古代において、日食は神が起こす奇跡と思われた時代、地域もあったようですが、天体の動きとして、太陽が月に隠れるだけとう単純な動きであると科学的に解明されています。

 戦争や革命など社会の変動は、多くの偶然が重なって発生するものですが、個々の出来事は偶発的で、無秩序で起こっていますが、それが相殺、お互い影響を弱めあるような働きをすると、大局的には、歴史、人間の社会も一定の規則性に従っているのかもしれません。

 人間社会も、砂山や磁石のように常に変動にさらされていて、平衡状態といわれる状態、平和、平穏と思われる制度、秩序が、いつか、不安定なバランスとなる臨界状態に達して、戦争、革命と思われる大きな社会的な変動が必ず起こるが、いつ起こるかわからないというだけです。

 2020年9月にこのブログを書いてますが、2020年は新型コロナウイルス感染症で世界、社会が大きく変わりましたが、これは新型コロナウイルスそのものでなく、比較的平和な状態が続いた社会が続き、臨界状態に達していて、それを崩すきっかけに過ぎず、大地震が定期的に発生するように、大きな変動が、歴史物理学的に宿命づけられていたのかもしれません。

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■1918年:スペインかぜが大流行 世界で4000万人以上が死亡(当時の世界人口18億人)したと推定される

■1957年:アジアかぜの大流行 世界で200万人以上の死亡と推定

■1968年:香港かぜの大流行 世界で100万人以上の死亡と推定2009年:新型インフルエンザ(A/H1N1)の大流行 世界の214カ国・地域で感染を確認、1万8449人の死亡者(WHO、2010年8月1日時点)

■2020年:新型コロナウイルス 87万人 2020年9月5日時点で確認した数字

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こういった感染症の大流行の歴史的事実を見ると、

新型コロナウイルスの大流行も、スペイン風邪の大流行から100年後、香港風邪の大流行から50年後に発生していますが、感染症の流行も周期というものがあり、人間がいくら対策をしても、避けられないものかもしれません。避ける努力というのは、流行を後回しにするだけの努力といえそうです。

 

本の紹介 

歴史は「べき乗則」で動く――種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ) (日本語) 文庫 – 2009/8/25
マーク・ブキャナン (著), Mark Buchanan (原著), 水谷 淳 (翻訳)

 

 

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歴史は「べき乗則」で動く

歴史は「べき乗則」で動く

以 上