▼目次
■はじめに
以前にブログで、W-SCOPEのサムスンSDI(売上比率77%)への集中リスクについて説明しましたが、ダブル・スコープの将来を考えるために、サムスンSDIの歴史など調べてみました。
ビスマルクの格言「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」にある通り、私は賢者ではないですが、歴史(他人の経験)を学ぶことは将来を考えるために意味のあることでしょう。企業、いやどんな組織でも、その歴史から、その特徴、行動パターンのようなこと学べると思っています。
▼W-SCOPEのサムスンSDI(売上比率77%)への集中リスクについて説明したブログ
■社名の変化から知る歴史
社名の変化から、2010年までのサムスンSDIの歴史について、だいたい理解できます。
●Samsung-NEC Inc
1970年1月に、サムスンSDIは、サムスン電子と日本電気(NEC)の合弁として、Samsung-NEC Inc として設立されました。Samsung-NEC Incは、テレビの真空管の製造を主な事業です。真空管は白黒テレビに使われたブラウン管の旧式にあたるテレビの映像表示部品です。
1974年には、NECの資本は撤退しています。現時点では、NECと資本関係はなく、サムスン電子が20%株式を保有するサムスングループの企業となっています。
その後、サムスン向けのテレビのブラウン管の製造など事業を発展させ、1979年 1月に韓国の株式市場に上場しています。1980年代にはカラーブラウン管を年間1000万台以上生産し世界1位となっています。
●Samsung Display Device Inc
1985年2月に、Samsung Display Device Incに社名を変更してます。1986年には、韓国では初めて、液晶ディスプレイ(LCD)を開発に成功させ、1987年には、素材となる化学製品の事業も開始しています。1990年には、マレーシア、メキシコに製造拠点を設けるなどして、海外進出も本格化しています。
1990年代は、事業のスクラップアンドビルド、選択と集中を図って、構造改革に継続的、積極的に実施しています。ブラウン管事業から撤退し、1993年には液晶事業をサムスン電子に譲渡しています。
●Samsung SDI Co.、Ltd
1999年12月に、Samsung SDI Co.、Ltdに社名を変更してます。この時のSDIの意味は、「Samsung Display Interface」の略とされていまたが、2000年代には。文字通り、テレビやパソコン、携帯機器のディスプレイ(当時はプラズマパネルのディスプレイや有機ELが中心)が主力事業の会社でした。
2001年1月サムスンSDIは、NECと、有機ELディスプレイ(Organic Electro Luminescence Display)の開発、製造および販売をおこなう韓国内で合弁会社「サムスンNECモバイルディスプレイ株式会社(SNMD)を設立して、現在のディスプレイの主流となった有機ELディスプレイに進出します。2004年にNECは、SNMDの株式をサムスンSDIに譲渡して、合弁を解消しています。
2008年の通期決算では、売上高が5兆3028億ウォン、営業利益は1330億ウォン、純利益は389億ウォンとなり、サムスンSDIは世界最大の有機ELディスプレイ企業となるなど事業を順調に発展させています。
2009年以降は、Samsung Display Co Ltd(サムスン電子とサムスンSDIの合弁会社)に、有機EL事業も移管しており、リチウムイオンバッテリー事業に注力しています。
2009年頃、SDIは、「Storage Development Inc」(エネルギー貯蔵装置(Storage)を開発する会社)を意味すると解釈を変えています。やや、強引な気がしますが。。
■サムスンSDIのリチウムイオンバッテリー事業の歴史
● 1990年代
サムスンSDIはディスプレーに代わる新規事業として1990年代後半にリチウムイオンバッテリー開発に着手し、1999年8月に、業界最大容量の1800mAh円筒形リチウムイオン電池を開発に成功しています。
故 李健熙(イ・ゴンヒ)サムスングループ会長は1997年の通貨危機の中でも2000億ウォンを超える投資を実行したほど、サムスンSDIのリチウムイオンバッテリー事業をサムスングループの主力の成長事業として、期待していたようです。
● 2000年代
2000年に、サムスンSDIは、リチウムイオンバッテリー事業に本格的に進出します。
2003年には、世界最大容量の円筒形2400mAh(ノートパソコン用)を開発し、ノートパソコンやスマホなど携帯機器用のリチウムイオンバッテリーのシェアを増やしていき、2010年に、小型バッテリー市場で世界シェア1位を達成しています。直近の2020年でも小型バッテリー事業(車載用以外のバッテリー)でも、中国ATL社の30%のシェアに次ぎ、15%程度で2位の世界シェアをもっているようです。
2008年、ボッシュ社(ドイツが本拠の自動車部品の世界的大手)との合弁会社でSBリモーティブ設立し、合弁会社で2010年には、EV(電気自動車)用EVの製造も開始しています。SBリモーティブは、2012年9月に完全子会社化後、2013年1月に吸収合併されています。サムスンSDIは、直近(2021年1~4月の期間)に電気自動車用バッテリー市場でシェア5.6%となり世界5位になっています。
2017年で、ハンガリーでの生産開始しており、2021年2月に、サムスンSDIは欧州におけるバッテリー生産拠点であるハンガリー工場に9000億ウォン(約1000億円)を投資して、生産能力を大幅に引き上げ、30ギガワット時(GWh)GWから40GW後半まで拡大させる計画を発表しています。
● 第一毛織を吸収合併
2014年には、第一毛織を吸収合併しています。地味な会社名ですが、1954年に設立されたサムスングループの源流といわれる名門企業で、事業領域をファッション、化学、電子化学材料、自動車部品事業でしたが、ファッション事業は、サムスングループの別企業に譲渡した上で、サムスンSDIに吸収合併されました。
トヨタグループに例えると、トヨタ自動車の母体となった豊田自動織機のようなイメージでしょうか。そんな名門企業を消滅させて、吸収させるほど、サムスンSDIのリチウムイオンバッテリー事業にサムスングループは社運をかけているようです。
当時のニュースのリンクを紹介します。
サムスンSDIと第一毛織合併へ 素材エネルギー大企業に | 聯合ニュース
2社の合併は新たな有望事業の育成が目的といえる。サムスンSDIはバッテリー事業において素材競争力の強化が必要で、第一毛織も半導体とディスプレー素材に次ぐ成長の原動力としてエネルギー、自動車素材に注力していた。サムスンSDIは第一毛織が持つバッテリーセパレーターや多様な素材の要素技術を取り込むことでバッテリー事業の競争力を強化できると説明した。また、顧客ネットワークとマーケティング力を活用すれば、第一毛織の合成樹脂事業をこれまでの電子、IT中心から自動車向けへと拡大することができる。
第一毛織が持つバッテリーセパレーターという記事が気になりますが、サムスンSDI(第一毛織)がリチウムイオンバッテリーのセパレーターを製造しているという話は聞いたことがないので、ダブル・スコープの製品と競合するようなセパレーターでなく、鉛蓄電池などのセパレーターか、セパレータ―の原材料のポリオレフィン系材料かもしれません。
ちなみに、ダブル・スコープの取締役 趙 南星は第一毛織に勤務していた経験があります。
● 直近の業績
韓国電池3社の7~9月、LGとSKが部門赤字: 日本経済新聞 (nikkei.com)
といった記事によると
韓国電池大手3社の2021年7~9月期業績
サムスンSDI:増収増益。の7~9月期の売上高は前年同期比11%増の3兆4398億ウォン(約3340億円)、営業利益は40%増の3735億ウォンだった。同社はスマートフォン用電池がけん引役となり増収増益を達成。ただし、車載向けを含む中大型電池では黒字を維持したものの研究開発や設備投資がかさむ。
LG化学:Gは電池リコール(無償修理・交換)費用も重荷となり営業赤字。
SKイノベーション:増産のための投資がかさみ、電池部門が営業赤字。
と、他の競合と比べても、業績は好調のようです。
設備投資が必要なことはサムスンSDIも同じですが、その中でも利益を出していること、設備投資をしても、利益が出る、つまり低コストの製造技術に注目してもいいと思います。
■サムスンSDIの歴史から、W-SCOPEの将来を考える。
サムスンSDIは、勝ち馬となるか、ダブルスコープが勝ち馬に乗れるのか、それとも
ダブル・スコープのサムスンSDIに過度に依存といえるほど販売が集中しています。
その戦略が吉となる狂となるかは、今後の決算で明らかになってくるでしょう。
サムスンSDIは、価格競争、シェア争いが激しかったフラットディスプレイ業界で、現在主流の有機EL型のディスプレイで世界シェア1位企業(中小型分野)として、その事業がSamsung Display Co Ltdに移管されていますが、事業を発展させています。
リチウムイオン電池も有機ELの二の舞か?:日経ビジネス電子版
↑は、2017年5月の記事で、「リチウムイオン電池での日本勢の危機感不足と油断は、有機ELと同じように致命傷を招く」という内容です。パナソニックなどの日本企業が、有機ELと同じく韓国企業に完敗するのかは、少し心配です。
サムスンSDIにとって、LGがライバルである点など、2000年から2010年頃のフラットディスプレイ業界と、今のリチウムイオンバッテリー業界は、共通する部分も多いように思え、フラットディスプレイ業界の経験、勝つためのの戦略、ノウハウを持っているように思えます。
半導体で、先行する米国、ヨーロッパ、日本企業を凌駕したサムスン電子の成功にも、学べる点も多いでしょうし、サムスン電子ように成功してほしいです。
W-SCOPEの経営陣(崔社長や趙取締役)は、サムスングループ、サムスンSDIのことも熟知しているでしょうから、きっと勝ち馬に乗れるという確信に近いものがあるのでしょう。
勝ち馬に乗って、成功してくれるのではと私は考えています。
■このブログの記事に興味を持った方へ
ダブル・スコープに興味を持った方が興味がありそうな本や株式投資で自分の投資成績を上げたい人のための本をいくつか紹介します。
日本人は投資を知らなさすぎる。投資と投機は違う。投資は危険なものではないし、いかがわしいものでもない。資本主義の健全な形態である。投資が盛んになり、優良企業にお金が集まるようになれば、日本の景気もよくなるはずだ。
農林中金バリューインベストメンツで抜群の実績を上げるCIOが、本来の投資のあり方とその哲学、長期投資のコツ、優良企業の見極め方などを、歴史的な背景や実例を交えながらわかりやすく解説する。
銘柄メモ ダブル・スコープ6619
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W-SCOPE Corporation ダブル・スコープ株式会社
以 上です。