旭化成とW-SCOPEの中国の特許裁判

■はじめに

旭化成とダブルスコープ(正確には中国の代理店)との特許裁判について、特許の内容や時系列をまとめて、今後の展開を考えたブログ記事です。

 

 

■特許の内容

まず、裁判の原因になっている旭化成の特許の概要は
『厚さが1μm以上50μm以下、気孔率が30%以上70%以下、膜厚1μmで換算した突刺強度が0.15N/μm以上、長さ方向の引張強度(MD引張強度)と幅方向の引張強度(TD引張強度)が各々30MPa以上であり、65°Cでの幅方向の熱収縮率(TD熱収縮率)が1%以下、65°Cでの長さ方向の熱収縮率と幅方向の熱収縮率との比(MD熱収縮率/TD熱収縮率)が2より大きいポリオレフィン製微多孔膜、及びその製造方法、それを用いた非水電解液二次電池。』
というものです。

韓国の裁判となっている韓国の特許の内容と同じで、いわゆるパラメータ特許です。

 

パラメータ特許については、以下のブログ記事も参考にしてください。

 


また、韓国の特許裁判の時系列については、以下のブログ記事も参考にしてください。

 

■裁判の時系列

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勝訴のイラスト(いやすとやの素材)

まず、旭化成が訴えているのはダブルスコープでなく、その中国の代理店であるる深圳市旭冉電子有限公司及び深圳市旭然電子有限公司という会社です。
ダブルスコープとは資本関係はありません。

両社とも、旭化成の旭という文字がつきますが、偶然か、旭化成知名度、ブランドイメージを利用(悪用)した意図的なものなのかはわかりません。旭化成は、セパレーターで世界シェア1位の時代が長く、その知名度、ブランドは圧倒的だったともわれるため、おそらく、後者だと思われます。

 

 

●2018年8月
旭化成が、中国深圳市のリチウムイオン二次電池用セパレータの販売会社である深圳市旭冉電子有限公司及び深圳市旭然電子有限公司(以下、旭冉電子等)を共同被告として特許権侵害訴訟を深圳市中級人民法院にて提起した。
本件訴訟は、当社が所有するリチウムイオン二次電池用セパレータに関する中国特許(特許第ZL200680046997.8号)に基づき、旭冉電子等が販売する『単層W-scope』電池用セパレータ製品の中国における販売差止と損害賠償を求めた。


●2019年7月
W-SCOPE KOREAが旭化成の中国特許を無効請求した審判に対して、中国国家知識産権局は本件特許を有効と決定した。


●2020年4月
深圳市中級人民法院にて、販売差止と損害賠償(合計人民元100万元)も求めが認められれる。旭化成の勝訴となる。
合計人民元100万元(約2000万円)の損害賠償といことで、その金額から、W-SCOPE売り上げ規模から考えると、ごく一部の製品に関する裁判だということがわかります。


●2020年12月
中華人民共和国最高人民法院にて上記製品の販売差止および損害賠償金の支払いを命じる終審判決で、旭化成の勝訴となる。

 

●2022年2月
W-SCOPE KOREAが新たな証拠資料で無効審判を請求し、本特許については進歩性がないという WSK の主張が認められ、本特許の無効が決定した。

 

進歩性とは特許が認めらえる発明の要件です。
「進歩性」とは、いわゆる当業者が公知発明等に基づいて容易に発明することができない程度の困難性をいいます。
新規な発明であっても、従来技術をほんの少し改良しただけの発明のように、その分野の通常の知識を持つ人が容易に考えつく程度の発明は、進歩性がないとして特許を受けることができません。このような発明に特許を認めると、日常行われる技術改良などに支障をきたすおそれがあり、かえって技術の進歩を妨げるためです。この進歩性の要件は、審査時や紛争時に争点になる頻度の高い非常に重要な要件となるようです。

つまり、特許化されていない従来技術からとても優秀であれば、進歩性があり、特許保護にするが、特許化されていない従来技術と大きく変わらければ、進歩性がなく、特許保護に値しないということです。

 

■今後の展開

2022 年3月3日
各 位
会 社 名 ダブル・スコープ株式会社
       代表者名 代表取締役社長 崔 元 根(コ ー ド 番 号 6619 東 証 第 一 部 )
        問 合 せ 先 取 締 役 大 内 秀 雄

(経過開示事項)中国での特許無効に関するお知らせ

当社子会社のW-SCOPE KOREA CO., LTD.(以下、WSK) は、旭化成株式会社(本社:東京都千代田区、社長:小堀 秀毅)が所有しているが中国特許(特許第 ZL200680046997.8 号、以下「本件特許」)の無効審判を請求しておりましたが、2022 年 2 月 25 日付で中華人民共和国国家知識産権局(CNIPA)から本特許が無効であることが認められましたので、お知らせいたします。
本特許は、旭化成株式会社が中国の当社販売代理店に対して販売差止めと損害賠償を求めて提訴した特許であり、これに対して WSK は本特許の特許無効審判を請求しましたが、2021 年 9 月 28日に一度棄却されていました。WSK ではこの結果を受けて、新たな証拠資料を提出して再度特許無効審判を請求し、本特許については進歩性がないという WSK の主張が認められ、本特許の無効が決定したものです。

これまでの経緯については、2020 年 2 月 14 日付「特許訴訟に対する当社見解について」及び2021 年2 月1 日付「特許訴訟に関するお知らせ」をご参照ください。
なお、業績への影響はありません。

 


といったダブル・スコープの開示の通り、業績には影響がないようです。

判決の前提となる特許権の内容が変更された場合に「判決の基礎となった行政処分が後の行政処分
より変更された」として、再審事由に該当し、
中国の代理店が旭化成に損害賠償として支払っていた場合、約2000万円を、返還請求も可能になるでしょう。

ただ、弁護士費用も含む裁判費用は高額であるため、約2000万円のために裁判を起こすのかはわかりません。
また、差し止めも解除されるでしょうが、ダブルスコープは今回の特許が仮に有効だとしても、特許を侵害するような製品は製造、販売していないため、業績には影響ないそうです。

韓国の裁判でも、中国で認められた新規性を否定する新しい証拠に戻づく請求をすれば、無効とされる可能性が高いと考えています。
仮にそうなれば、「当社は今後も知的財産を重視し、必要と判断した場合には具体的な措置を積極的に講じて参ります。」という旭化成の知的財産(特許)も侵害していないと認められたことになり、
ダブルスコープの技術力を逆に証明することになりそうです。

旭化成パテント・トロール※ではないと思いますが、ダブルスコープに対して、競争力が落ちていて、乾坤一擲の機会として、今回の訴訟を提起していたならば、旭化成のセパレーター事業の将来は
暗いかもしれません。
旭化成は多数の特許持っていると思いますが、他にもっと有効な特許はなかったのでしょうか。

また、旭化成の裁判に対しては、裁判で戦う姿勢が見せて、安易な和解しないことは、旭化成が別の特許の侵害で提訴したとしても、旭化成に対しては手強い相手となりそうです。

旭化成は中国の競合であった上海エナジーとESSに適しているとされるのは乾式セパレータで合弁企業を設立すると、2021年9月に発表し、2022年中には2022年上期に中国の江西省高安市に工場を設立し、生産を開始するそうです。
もしかしたら、車載用に適しているとされる執式セパレータも失地回復のため、どこかの企業と合弁をして、競争力を強化するなんてこともあるかもと思いました。

 

パテント・トロールまたは特許トロール(英: patent troll):
トロールは北欧の伝説に登場する妖精》自身が保有する特許権の権利行使により、大企業などに対して特許権侵害を訴え、巨額な損害賠償金やライセンス料を得ようとする組織または個人。特に、訴訟を目的に第三者から特許権を買い集める者を指す。パテントマフィア、特許マフィアともよばれる。その多くは、自らはその特許を実施していない(特許に基づく製品を製造販売したり、サービスを提供したりしていない)

 

 

■参考URL

https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/pdf/manual_201701.pdf

(中国知財権侵害関連裁判マニュアル2017 年 1 月日本貿易振興機構JETRO) )

萩本英二の知的財産講座

旭化成が「電池材料」で中国大手と組む裏事情 | 素材・機械・重電 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース

【中国】特許訴訟等の第二審を最高人民法院が審理|特許業務法人 三枝国際特許事務所[大阪・東京] SAEGUSA & Partners [Osaka,Tokyo,Japan]

WO2007069560A1 - ポリオレフィン製微多孔膜 - Google Patents

 

 

 

■本の紹介

 特許や知的財産について興味を持った方へ、いくつか関連する本を紹介します。

 

ドラマ化もされた池井戸潤氏の小説、

ルーズヴェルト・ゲーム

下町ロケット では、大手企業から理不尽な特許侵害で訴えらえる主人公の会社が逆転勝利するようなストーリがありますが。
旭化成から訴えられたダブル・スコープは、あたかも青島製作所、佃製作所のように、資金繰りに困るような状況から、大逆転して、業績の急回復ができるのか楽しみです。W-SCOPEは、下町ロケットの小説のような特許紛争で取引停止、業績悪化という状況ではないようで、タイトルの(ダブル・スコープは下町セパレータではない)はそんな意味があります。
 

 

 

 

ちなみに、

 池井戸 潤氏の小説『半沢直樹』が有名ですが、以前、私は三菱UFJ銀行に半沢頭取の誕生を示唆していましたが、それが現実になりました。

 

 

知財戦略の中でも、特に重要なのは新規事業の武器となる特許を取得できる発明です。発明は、競争力のある製品・サービスの実用化・事業化とマネタイズを考える上で欠かせません。「先読み」の知財戦略の考え方、事業創出につなげるための企画の考え方を、具体的な企業の事例を挙げて解説している本です。

「控えめに控えめに言って最高すぎです。オモロい!!!オモロすぎる!」といった恋艇的なアマゾンのレビューが多いです。

 

W-SCOPEのような成長株投資に有益な本も紹介します。
WCPの上場でバリュー株と評価されるかもしれませんが、今後も売上が年10%を超えて拡大し、利益率も年々高くなることを考えると私は成長株投資と考えています。

成長株投資の場合、多少割高に思えて、会社の強い成長が続くまで、成長が鈍化するまで、保有するというのが大事だと思います。
何をもって強い成長とするか、何をもって成長の鈍化とするかは解説されている本をアマゾンのリンクでいくつか紹介します。

 

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楽天のリンクでも紹介しておきます。

 

 

 

 

 

 

 

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