偏光フィルム(日本の強さ)がW-SCOPEを生んだ

■はじめに

崔元根社長の起業のきっかけとなる偏光フィルムについて紹介するブログです。

ダブルスコープがセパレーター開発に成功した理由が少しわかった気がします。


ダブルスコープをモデルにしたら、面白い小説やドラマができそうですね。

以下のブログのような小説風の記事は、いったん、中止です。

 

 

▼目 次

 

 

■苦しめられた偏光フィルム

https://www.hankyung.com/economy/article/2022071846551

は、『韓国内で投資がなく日本で、その後3兆ウォンの企業価値で韓国で上場。』

といった見出しの2022ね7月18日付の記事(韓国の経済ニュースサイト)です。

崔元根社長のインタビュー記事が掲載されています。

その中で注目したいのは、

彼はサムスン電子の仕事で、LCD用偏光フィルム国産化プロジェクトに関わり、メンブレンフィルム(膜状のフィルム)の重要性を理解した。

 

韓国国内企業は、包装材、テープなどに利用せれるPET(ポリエチレンテレフタラート)のフィルムは生産できたが、LCD用偏光フィルムは全量を海外に依存していた。

全世界でシェアを2、3社で寡占している状態で価格が高かった。

苦労してLCDを生産しても、LCD用偏光フィルムの会社に大金を投じるような状態だった。

といった記事です。

 

このような内容は、他の記事でも見受けられ、崔氏の「偏光フィルム」に対する思いがとても強いことがわかります。

 

韓国で破れた夢、日本で咲かせるリチウムイオン電池の部材で急成長ダブル・スコープ社長 崔 元根 | 起業人 | ダイヤモンド・オンライン

仕事は昼夜を問わず、猛烈にこなすタイプ。花形の液晶ディスプレイの事業部で、もっと利益を上げたいと考えるうちに「テレビメーカーより、テレビに使うフィルムメーカーが高収益を上げている」ことに気づいてショックを受ける。

 

 

出でよベンチャー! 平成の龍馬! | 蓑宮 武夫 | 経営学 | Kindleストア | Amazon

 このサムスン時代の経験が起業のきっかけとなった。液晶事業で課題だったのは部品の調達。とりわけ光学フィルムは日米欧のメーカーに握られていた。

「最も利益率が高いのは付加価値の高いフィルムだ」。商品企画をすればするほど、この思いは強くなった。

 

■偏光フィルムとは

 

偏光フィルムは、薄型ディスプレイで主流の有機EL、液晶に必須の部材で、偏光フィルムでの品質がディスプレイの品質を左右するといわれます。

偏光フィルムは、光を偏(からよら)せるためのフィルムで、あらゆる方向に振動している自然光から一定方向にのみ振動する光(直線偏光)を取り出すフィルターである。

ここでいう自然光とは、日光や照明など私たちの視力を確保するための光で、その光を特定の方向の光だけディスプレイに通すことで、私たちは画像を認識できるようになる。

 

『偏光フィルム』とはみたない解説動画も紹介するので、参考になればと思います。 

Nitto実験動画「偏光板 魔法のフィルム篇」 / Nitto experiment video: “Polarizing Film: The Magic Film” - YouTube

 

【解説】偏光板はどうして光を操れるの?【偏光板】 - YouTube

 

 

 

サムスンが大金を投じたLCD用偏光フィルムの会社とは

偏光板業界の世界市場シェアの分析 | ディールラボ

といったサイトによると、偏光フィルムのシェアは、

順位    偏光板・光学フィルムメーカー    市場シェア(2020年)
1位    日東電工    27.4%
2位    住友化学    20.9%
3位    サムスンSDI    17.8%
4位    3M    14.5%
5位    杉杉集団    11.7%
6位    BenQマテリアルズ    3.9%
7位    誠美材料    2.6%
となっています。

日本企業が1位、2位を占めて5割程度のシェアです。

なお、5位の杉杉集団は、2020年に、LG化学からLCD用偏光板事業を買収しており、上記のシェアは買収後の数字だと思われます。

 

LG化学も、サムスンSDIも1990年代後半に開発に成功し、2000年代前半から本格的に量産を開始して、シェアを伸ばしました。

 

ダブル・スコープ崔元根社長は、1990年サムスン電子株式会社入社し、2000年に退職しています。

おそらく1900年代後半に、サムスン電子、同じグループのサムスンSDIで、偏光フィルムの開発に関与したのでしょう。

 

『苦労してLCDを生産しても、LCD用偏光フィルムの会社に大金を投じるような状態だった。』というのは、

サムスンSDでの偏光フィルムの生産開始前の状態かもしれませんが、実は生産開始後も状況は変わっていないようです。

 

偏光フィルム以上に、偏光フィルムの素材は、日本企業の寡占状態で独壇場です。

 

偏光フィルムを構成する水溶性ポバール(PVA)フィルムとなると,クラレが世界シェア80%と圧倒的で,同社と日本合成化学(三菱ケミカル系)の日本メーカー2社で世界シェアをほぼ独占しています。

 

水溶性ポバール(PVA)フィルムを覆う形で利用されるTAC((Triacetylcellulose・トリアセチルセルロースの略)フィルムは、有機EL向けでは富士フィルムが8割程、液晶ディスプレイ向けではコニカミノルタが8社程度、この2社で世界シェアをほぼ独占しています。

 

TACフィルムと同じ用途で、大型ディスプレイで利用されるCOP((シクロオレフィンポリマ))フィルムの世界シェアが日本ゼオンが1位で、何割程度のシェアかわりませんが、COPという素材自体、日本ゼオンが開発し、その素材のシェアが8割程度といわれるので、COPフィルムのシェアも同程度かもしれません。

 

つまり、サムスンSDI、LG化学が国産化に成功しても、それを日本企業の素材を輸入して、加工(張り合わせ、カット、検査)するだけで、

『苦労してLCDを生産しても、LCD用偏光フィルムの会社に大金を投じるような状態だった。』というのは変わっていないのかもしれません。


LG化学が、中国企業に偏光フィルム事業を売却したのも、後工程の加工のみで、自社の事業の利益があまり高くなかったこともあるのかもしれません。

 

■ダブルスコープがセパレーターの開発に成功した理由

EV時代の知られざる勝者:日経ビジネス電子版 (nikkei.com)

 

このサムスン時代の経験が起業のきっかけとなった。液晶事業で課題だったのは部品の調達。とりわけ光学フィルムは日米欧のメーカーに握られていた。「最も利益率が高いのは付加価値の高いフィルムだ」。商品企画をすればするほど、この思いは強くなった。

 そんな時に出会ったのが、その後、創業メンバーとなる偏光板フィルムを開発する韓国人の技術者たちだった。2000年、崔社長は10年間勤めたサムスン電子を退職。その技術者たちを誘って、起業へと踏み出した。

 

という記事があります。
『創業メンバーとなる偏光板フィルムを開発する韓国人の技術者たち』『崔社長は10年間勤めたサムスン電子を退職。その技術者たちを誘って、起業へと踏み出した。』の部分に注目です。

 

正直、大手企業から技術支援を受けていない崔元根氏ちが、セパレーターを独力で開発したのが不思議でした。

サムスン電子の退職者というのは、サムスングループ、韓国産業にとって重要なプロジェクトである偏光フィルムの開発(国産化)に関与した選りすぐりの超優秀な技術者だったのでしょう。

そして、そんな技術者がフィルムの扱いに熟知し、韓国内でのメンブレンフィルムの第一人者となっていると考えると、セパレーターのの開発成功も、それほど不思議ではないです。

 

メンブレンは膜という意味で、メンブレンフィルムは、特定の物質だけを通す膜の役割があり、コーヒーのドリップ用フィルターがイメージしやすいと思います。


偏光フィルムも、セパレーターも、メンブレンフィルターで、特定のイオン電子を通す、特定の光だけを通す技術は、共通する部分もあるのかもしません。

また、製造工程もよく似ています。

 

偏光フィルムの構造-(株)アクロエッジのサイトより引用

 

 

偏光フィルムは、
(1)PVA フィルムを主原料に溶剤を浸透させる
(2)(1)に延伸する
(3)TACフィルムは保護用のフィルムを張り合わせて、
(4) ロール巻き状態にして出荷します。

 

湿式セパレーターは、
(1)ポリエチレン(PE)を主原料に溶剤を浸透させ
(2)(1)を延伸して
(3)セラミックやポリマーなどでコーティングして、
(4)ロール巻き状態にして出荷します。

 

溶剤の浸透、延伸など偏光フィルムの開発、製造で培った技術、ノウハウが応用できなのでしょう。

また、崔氏らがセパレーターに目を付けた理由もよくわかります。

セパレーターの主原料は、ポリエチレンは汎用的な化学製品で、価格が高いものではなく、もちろん韓国でも生産しています。
セパレーターの場合、生産技術を克服すれば、素材で苦しむことがない(素材企業に大金を投じること)がないと考えたのかもしれません。


生産技術(自社での製造装置の設計)にこだわる理由もわかる気がします。

 

■本の紹介

このブログを読んだ方(ブログの中で紹介し本も含む)が興味を持ちそうな本をいくつか紹介します。

偏光フィルムの素材企業のようなグローバルニッチ企業に株式投資するといいかもしれないし、知人の就職先としてもおすすめかも知れません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

読んで頂き、ありがとうございました。

誤字脱字、乱文雑文、すいません。

素人が趣味で書いているブログですので、その点、情報の正確性などご容赦ください。

 

 

以 上です。