若者を殺し続けるブラック企業の構造

『若者を殺し続けるブラック企業の構造』川村 遼平 (著)を読んで、感想や要点など記載します。

 

 

▽感想・要点など

〇 働き過ぎ問題は、自分も注意したい。働き過ぎは生産性の向上に無意味なこと、一種の習慣病だと思うので、所定時間内で、できること、できないことを分析して、集中、計画、時間制限をキーワードに仕事したい。

 

〇 ブラック企業という言葉は、定義が人によってばらばらなので、
 要は違法な労務管理をする会社だから、労働法令違反企業と表現したほうがいいと思う。
 もちろん、法令違反か判断が迷うような脱法的な労務管理をする企業もブラック企業かもしれないが、罪刑法定主義、疑わしきは罰せずで、簡単に批判することはできない。
 
〇 著者は、違法な労務管理をする企業(ブラック企業)で、働きすぎの健康被害について、働きすぎを許容している労働者側にも責任があるとする。

 

〇 働き過ぎの問題は、『自分だけの問題だと思うと解決できない。』とう主張は大いに賛成である。
 きっと、過労死するほど働き過ぎた方は、問題を自分だけの問題と考えず、会社のために、部署に頑張っていた人だと思う。
 そいういった意識で、自分の仕事の過剰の負担を、会社の問題、部署の問題として、積極的にいろんな人にアピールする姿勢が大事だと思う。

 

〇 労働のダンピングを防ぐのが大事だというが、その具体的な施策の記載が欠けていると思った。
 自分の私案だが、雇用保険労災保険の制度改正で、
 適正な労務管理をしている企業を評価する制度(雇用期間の長さや時間外勤務管理の適正さ、労働法、就業規則等社員の教育の実施有無など評価)をして、その評価点が上がると、雇用保険労災保険の保険料が下がる、
 その評価点が下がると、、雇用保険労災保険の保険料が上がるような仕組みを作れないかと思う。
 ただ、こういった制度は、管理するコストや悪用する事例が多発し、難しいかもしれないが。
 事故、違反が少ないと保険料が下がる自動車保険のようなイメージで、雇用保険労災保険を運用できないかと思う。
 

〇 若者の過労死、過労によるうつ病、自殺は増えているらしい。過労死問題は、一企業の問題でなく、社会問題だとする。
しかも、労災申請されないケースもあるらしい。労働組合側が、被害者、その家族に、労災申請をやめるように説得するケースもあるもよう。

 

〇 ブラック企業のパターンとして、
 ①選別型:採用後に激務となるような選抜競争を経験させ、その激務に耐えれない社員は自主退職に追い込むパターンなど。
 ウェザーニューズ社の過労死の事例など、この事例に該当するらしい。勝ち残った人間は、この選抜競争を通して、会社の文化に染まってしまう。
 ②使い捨て型:非正規従業員を大量に採用させるケースで多く、労働者を、限界まで酷使して、短期間で退職させる。
があるらしい。

 

〇 著者は時間外に関する法規制の緩さを批判している。

 

〇2018年に成立した 労働基準法の改正 時間外労働の上限規定の新設など、著者の主張している改革は実現されている。
 時間外労働の上限を原則として月45時間、かつ、年360時間とした法定化した上で、この上限に対する違反には、
罰則を法制化された。
 従来は、時間外の上限は、時間外労働の限度に関する基準告知 といった通達レベルの基準であるが、法律レベルの基準に強化された。さらに、従来は、36協定の特別条項付き協定※で上限を増やせば上限を突破しても、違法にならなかった。
※一時的に限度時間を超えて時間外労働を行わなければならない特別の事情が予想される場合に、「特別条項付き協定」を結べば、限度時間を超える時間を延長時間として定めることができます。

 

〇 固定残業、みなし労働、裁量労働管理監督者の労働など、制度上、時間外の支給対象とならない現状を批判する。
時間外が支給されないから、労働時間の管理があいまいになると主張しているが、
 時間外が支給されるから、労働者が気をつかって、過小に申告されることもあるのだから、著者の主張に自分は全面的に賛成できない。

 改めて本の説明です。

 

内容紹介
注目を集めるブラック企業問題。無謀な雇用体制の裏で、犠牲となる若者たちがいる。現場の声を聞き続けるNPO法人POSSEの事務局長が、問題の構造とブラック企業がはびこる原因を明らかにする。
内容(「BOOK」データベースより)
急増する若年過労死。なぜ私たちは「死ぬまで働け」を受け入れるのか?年1000件以上の相談に応じるNPO法人事務局長が緊急書き下ろし!!
著者について
千葉県出身。NPO法人POSSE事務局長。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
川村/遼平
NPO法人POSSE事務局長。日本学術振興会特別研究員(DC1)。東京大学大学院総合文化研究科博士課程在籍。専攻は法社会学。1986年生まれ。10年東京大学教養学部卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

以上