もしW-SCOPEのIRマネージャーが新興SasS企業の『決算説明資料』を読んだら

もしW-SCOPEのIRマネージャーが新興SaaS企業(マネーフォワード)の『決算説明資料』を読んだら、改善してほしいと思う点や新興SaaS企業(マネーフォワード)とダブルスコープの比較やIRの仕事について解説しています。

 

■はじめに 

↑の記事で話題にした秋元康氏に師事した岩崎 夏海(いわさき なつみ)氏の著書

「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」

 は累計270万部のアニメ化も映画化もされた大ベストセラーです。

残念ながら、続編のような存在の「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読んだら」はあまりヒットしなかったようです。

 

「イノベーションと企業家精神【エッセンシャル版】ドラッカー著」には、

イノベーションは凝りすぎてはならない。多角化してはならない。散漫になってはならない。未来のためにイノベーションを行ってはならない。現在のために行わなければならない。

といった一節があります。私は、ダブル・スコープは、リチウムイオン電池のセパレーターのみで勝負しているが私は好感が持っていますが、それが、凝りすぎて、多角化していない、散漫になっていない、未来のためでなく、今必要とされるイノベーションを実行しているように思えるからです。

 

 雑談は以上で、↑のブログに続けて、ダブル・スコープの2021年12月期の有価証券報告書や中間決算説明会資料(説明会の動画は公開されていないが)も公開されているので、ダブル・スコープの2021年12月期中間決算の分析(感想程度の分析ですが)をしていみたいと思います。

 


■もしW-SCOPEのIRマネージャーが新興SasS企業の『決算説明資料』を読んだら

まず、日本の新興企業、特に新興SaaS企業のように、もっと自己アピールしてもいいと思います。

そんなわけで、
「もしW-SCOPEのIRマネージャーが新興SasS企業の『決算説明資料』を読んだら」
というタイトルのブログにしてみましたが、
「もし新興SasS企業のIRマネージャーがW-SCOPEの『決算説明資料』を読んだら」
というタイトルでもよかったかもしれません。

 

 

 

■マネーフォワード(3994)の紹介

新興SasS企業の代表として、マネーフォワード(3994)をとりあげます。

マネーフォワード(3994)は、個人向け家計簿アプリ『マネーフォワードME』と法人向けの会計・人事クラウドが2本柱の事業を運営しているSaaS企業です。


マネーフォワードは2017年9月29日、東京証券取引所マザーズ市場へ新規上場しましたが、 公開価格は(分割考慮後価格で)725円で、初値は(分割考慮後価格)1500円をつけ、2021年8月13日の終値で7730円です。

上場後の初値を基準にしても、その後約4年間で株価は約5倍です。平均すると1年で約1.5倍に、50%ぐらい上昇している会社です。

 

マネーフォーワードの株価と参考資料 

マネーフォワードの株価と参考資料 

さぞかし事業は順調かと思いますが、業績的には上場以来赤字決算で、2021年12月期も会社予想は赤字決算です。
2021年12月期の売上は160億円を予想してて、時価総額は約3,722億円(2021年8月13日の終値)です。
2021年11月期の第1四半期(12月から2月)に営業黒字は0.8億円を計上して、新興SasS企業も投資時期から利益獲得時期かと話題になりました。ただし、第2四半期単独では0.4億円程度営業赤字だったみたいで、第1、第2合わせた中間決算では営業黒字0.4億円です。


改めてダブル・スコープ(6619)の紹介です。
リチウム電池のセパレーター(絶縁材)専業メーカー。韓国で生産。韓国電池大手が大口取引先の会社です。

 

ダブルスコープの上場は、2011年12月16日で、公募価格1,450円(分割考慮後の価格)に対して初値1,250円でした。初値で投資したら、約10年間で株価は約40%のマイナスです。

業績的には2018年12月期以来3期連続で赤字ですが、2021年12月期は黒字決算を予定しています。2021年12月期の売上は280億円を予想してて、時価総額は約361億円(2021年8月13日の終値 663円で計算)です。

 

2021年12月期の第1四半期(1月から3月)に営業黒字は1.6億円を計上して、投資時期から利益獲得時期かとそれほど話題になりませんでしたが。ただし、第2四半期単独では2.6億円程度の営業赤字だったみたいで、中間決算では営業赤字1億円です。

 

似ているようで似ていないような。

 

『莫大な設備投資が必要な製造業と設備投資が不要なSasS企業は違うぞ』
とマネーフォワード派の人もいれば、
『シェア獲得、維持に莫大な広告宣伝費が必要なSasS企業と不要なBtoBの生産財の製造業は違うぞ』というダブルスコープ派の人もいるでしょう。

 

売上総利益が5割を超えるようなSaaS企業と製造業をいっしょにするな』
とマネーフォワード派の人もいれば、
売上総利益が5割を超えるようなSaaS企業が何で赤字やねん。参入障壁が低いと言われるSaaS事業なら、高い利益率も過当競争で下がるのでは。参入障壁が高いセパレーターのような製品の方が最終的に利益率は高そう』とダブルスコープ派の人もいるでしょう。

 

『2020年度2Q累計と2021年2Q累計の比較で、前年同期比プラス46%の売上成長や』
とマネーフォワード派の人もいれば、
『2020年度2Q累計と2021年2Q累計の比較で、前年同期比プラス83%の売上成長や』
とダブルスコープ派の人もいるでしょう。

 

自己資本比率も40%超えて、キャッシュに余裕あるし、倒産はしないぜ。継続注記企業なんてありえないす!WCPってなんすか。』
とマネーフォワード派の人もいれば、
『崔社長が連帯保証人になって一生懸命借金して頑張っているんだ。キャッシュは心配だけど。韓国子会社WCPの上場計画なめんなよ。』とダブルスコープ派の人もいるでしょう。

 

私はどちらも素晴らしい会社だと思いますが、株式投資の成績でいうとマネーフォーワードに分があるでしょう。

ダブルスコープの投資家も、マネーフォワードの投資家のような成績が残せるといいですね。

 

 ▼マネーフォワードの社長(創業者)辻庸介氏の著書

失敗を語ろうというタイトルですが、

辻社長は、

「1976年大阪府生まれ。2001年に京都大学農学部を卒業後、ソニー株式会社に入社。2004年にマネックス証券株式会社に参画。2011年ペンシルバニア大学ウォートン校MBA修了。2012年に株式会社マネーフォワードを設立し、2017年9月、東京証券取引所マザーズ市場に上場。2018年2月 「第4回日本ベンチャー大賞」にて審査委員会特別賞受賞。新経済連盟 幹事、シリコンバレー・ジャパン・プラットフォーム エグゼクティブ・コミッティー経済同友会 第1期ノミネートメンバー。

といった経歴で、あまり失敗語れるほど失敗をしていないような人生に見えますが。。

 

■マネーフォーワードのIRに学べその1 決算説明資料の量

 もしW-SCOPEのIRマネージャーがマネーフォワードの『決算説明資料』を読んだら、W-SCOPEのIRマネージャーに改善してほしいのは、まずは、決算説明資料の量です。

 

▼マネーフォワードの2021年11月期 第2四半期決算説明資料

https://ssl4.eir-parts.net/doc/3994/ir_material_for_fiscal_ym/103448/00.pdf

▼ダブルスコープの2021年12月期 第2四半期決算説明資料 

https://ssl4.eir-parts.net/doc/6619/ir_material_for_fiscal_ym/102741/00.pdf

 

マネーフォワード(以下MFと略)の資料は90ページですが、ダブルスコープ(以下WSと略)の資料は20ページです。
表紙、目次と最後の注意書きを除くと、88ページと18ページの差で、実質的なページ数でMFはWSの5倍以上の差です。

マネーフォーワードの決算説明資料PRの量 

マネーフォワードの決算説明資料PRの量 

↑の画像は、2021年11月期 第2四半期決算説明資料 の一部ですが、
『これでどうだ、いや、まだだま』というぐらい、
『独創的な付加価値の高い競争力のある事業で、追い風を受けて順風満帆で、俺たち優秀なんだぜ』みたいな自己アピールが続きます。

そして、MFのような新興SaaS企業の決算説明資料の特徴は、赤字でも後ろめたい気持ちはなく、強気の自己アピールをするところです。

マネーフォーワードの2021年11月期第2半期のハイライト 

マネーフォワードの2021年11月期第2半期のハイライト 

↑の資料では、売上が上がったら、各部門の売上、売上総利益もEBITDAも上がるという当たり前の話ですが、前年同期比+〇〇%という箇所を6回、ハイライトにして繰り返しています。

三菱UFJ銀行とのジョイントベンチャー」「プライム市場への上場維持基準」という中間決算とあまり関係ないポイント(以前開示している内容)をアピールしています。

 

強気なアピール、冗長なアピールは不要ですが、投資家に不安を感じさせないように、実績や計画などもう少し詳しく説明してほしいと思いました。例えば、設備投資、製品の競争力、WCPの上場計画や海外顧客と顧客との取引状況などもう少し詳しく説明してほしいです。


WSを擁護すると、決算短信有価証券報告書の情報量は圧倒的にMFより多く、WFの方が丁寧、親切な説明が多く優れています。
ページ数の比較でいうと

 ページ数  MF WS
 決算短信     11   27
 有報    22   27

という状況です。

WSが継続注記企業で丁寧な説明が求められる点がなどあり、一概に比較はできませんが、意外だったのは、MFにはキャッシュフロー計算書も、営業活動、投資活動、財務活動によるキャッシュフローの数字も記載がなかく、数字など定量的なな情報や事業の概要など定量的な情報もWFのほうが親切、丁寧な情報量でした。

 

■マネーフォワードのIRに学べその2 右肩上がりのグラフの数


マネーフォワード(MF)はダブルスコープ(WS)と比べて
『俺たちは急成長企業だ!成長率すごいだろ!今は赤字だけど、将来の利益を楽しみな!』というアピールに一生懸命さを感じます。

 

MFのグラフのページ

MFのグラフのページ

↑の画像はMFの右肩上がりのグラフです。合計すると19個のグラフの数です。

MFは、『広告宣伝費除きのEBITDA』といった指標(SaaS業界独自の指標)を使っていますが、広告宣伝費がゼロになれば、シェア(売上)の維持、獲得が難しいのに、広告宣伝費を特別扱いする理由があるんですかね。

広告宣伝費を大幅に減らして、シェア(売上)の維持ができているSaaS企業ってあるのでしょうか。特にBtoCでは、広告宣伝費が事業運営にほぼ必須で、減らすが難しいように思えますが。


EBITDA は、 営業利益 + 減価償却費 で算出されるので、ダブルスコープのような会社がEBITDAを利用すれば、数字をよく見せることは可能なんですが、そんなことは必要ないですね。自分は決算資料の数字としてEBITDAという指標を利用することが適当か少し疑問です。国が違う会社との比較や100%株式取得して買収した会社が投資を回収する指標としては、EBITDAは有用だと思いますが、上場している会社の投資家向けの指標には適さないように思えます。

 

EV/EBITDA倍率の問題点(後編) | inatoraの投資日記 - 楽天ブログ

 

WSのグラフの数 

WSのグラフのページ


加えて、WSの右肩上がりのグラフは、対象期間が短いせいか、勢い、強さが感じる右肩上がり感ではありません。MFの設立、創業は、2012年5月、WSの設立、創業は、2005年10月なので、6年5カ月もWSの方が事業の歴史が長い。上場後の期間であれば、約6年間、WSの方が長い。長いのであれば、MFより、対象期間が長くても良さそうですが。

 

  1. BS資産(2020年Q2から2021年Q2まで 5期分)
  2. BS負債純資産(2020年Q2から2021年Q2まで 5期分)
  3. 地域別販売シェア(2020年Q2から2021年Q2まで 5期分)
  4. アプリケーション販売推移(前期比の比較 2期分のみ)
  5. アプリケーション別販売上期実績と下期見通し(今期分だけ四半期毎)
  6. EVサプライチェーン成長見通し(2021年から2030年)

といったグラフの内容ですが、

せめて、せっかく四半期で開示している営業キャッシュフローの数字ぐらい、グラフにして大きく改善していることをアピールしてほしいです。

 

また、設備投資(減価償却)の計画、リチウムイオン電池のセパレーター市場の成長、市場占有率(シェア)が分かるような資料(年度通期の資料は記載されていたと思う)も載せて、事業の現状、展望を伝えてほしいです。

 

崔社長も、大内秀雄取締役(決算説明会で説明を担当)も、サラリーマンの経験が長いようで、お二人がサラリーマンとして仕えたころの韓国企業、日本企業なら、右肩上がりの時代で、『お前の資料は右肩上がりのグラフが少ない。』と部下として上司から指導されたか、逆に上司として部下にそんな指導をしていたでしょう。そんなサラリーマン時代のことを思い出してほしいと思いましたw。


■IRの仕事とは

IRの仕事は株価を上げることでなく、投資家とのコミュニケーションをとって、公正な株価がどれぐらか、保有が妥当か判断できる材料を与えて、投資家のリスクを減らし、経営者にとっては資金調達、株主総会のリスクを減らすことです。

IRが悪いから株価が下がっているというつもりはないです。
ただ、IRが悪いから株価の変動が大きくなっているかも知れません。

投資家のリスクには、株価の変動リスクというものがあり、そういったリスクを最小限にするために、もう少し、WSのIRのマネージャー(大内秀雄取締役か?)にも頑張ってもらいたいなと思いました。

 

決算短信有価証券報告書の情報量はWSはMFに負けていないので、頑張ってほしいのは決算説明資料の情報量です。

赤字の会社に、自分や家族の命や健康の次ぐらいに大事な身銭をかけて投資している株主がいることを忘れないで欲しいですね。

欲を言うと、説明資料の充実に加えて、決算説明会の動画の公開、崔社長の説明会での登場などもう少し積極的なIRが望みます。

 

■Len*****さんの資料

以下の画像は、Len*****さんと言う方からYahoo Fainanceのダブル・スコープ掲示板で2021年8月13日に共有頂いたものです。ブログでの使用を許可頂きありがとうございました。

ダブルスコープ財務状況分析2021年2Q 

ダブルスコープ財務状況分析2021年2Q 

売上や自己資本比率の変化など

売上や自己資本比率の変化など


Len*****さんのような方にIRマネージャーになってもらいたいと思いました。
では、長くなってしまったので、Renさんの資料も参考に、大事な決算の中身の分析は、改めて、別のブログ記事にしたいと思います。

 

No.109163 四半期ごとの決算内容をグラフ化… - 6619 - ダブル・スコープ(株) 2021/08/13〜 - 株式掲示板 - Yahoo!ファイナンス掲示板

 

No.109151 2Qまでのここ6年間の財務状況… - 6619 - ダブル・スコープ(株) 2021/08/13〜 - 株式掲示板 - Yahoo!ファイナンス掲示板

 

No.109165 Chanさん 素敵なブロ… - 6619 - ダブル・スコープ(株) 2021/08/13〜 - 株式掲示板 - Yahoo!ファイナンス掲示板

 

■関連書籍

 

 

 

以上