企業価値(EV)と時価総額は違う話-W-SCOPEの韓国子会社WCP上場のニュースから-


W-SCOPEの韓国子会社W-SCOPE CHUNGJU PLANT CO., LTD.(以下、WCP)が、韓国市場で上場予定(2022年1月から6月)ですが、このWCPを例に企業価値時価総額は違うという話を解説します。また、W-SCOPEのWCP持株比率から、WCP上場後の株価を考えてみました。

 

▼目次

企業価値時価総額の関係


企業価値(EV)の計算方法の計算方法と上場会社と未上場会社が一般的に違います。
EV(いーぶい)は、Enterprise Valueの略称で和訳は企業価値です。

■上場会社

上場している場合は下記の算出式で定義されます。

企業価値の算出式>
企業価値 = ネット有利子負債 + 株式時価総額

(ネット有利子負債)
有利子負債から、すぐにキャッシュにできうるであろうものを差し引いた金額
有利子負債残高 - (現金・預金・短期性有価証券)

(株式時価総額
発行されている株式の時価による価値
{ 発行済株式総数(自己株式を除く) × 株価 }

■未上場会社

未上場会社は、

企業価値は会社が生み出す将来のフリーキャッシュフローを割引いた現在価値で計算されます。

例を出します。

私が保有する自動車1台を販売するための会社(カエル自動車販売)をつくりました。
出資したのは10万円の現金と30万円自動車ローンもついてる中古自動車です。
その自動車は105万円で販売され、ちょうど1年後に105万円が入金されます。
その会社には10万円の現金と30万円の自動車ローンがあります。
現在価値とは将来の利益を現在の金利水準で割り引いたものである。
カエル自動車販売は入金されたら解散します。

1年間しか営業しない会社で1年後105万円の利益を生み出すして解散する会社です。

この会社の『将来のフリーキャッシュフローを割引いた現在価値』は1年後の105万円を5%の金利水準で割り引けば、100万円と計算されます。つまり、100万円が企業価値(EV)です。
ネット有利子負債は
有利子負債残高 - (現金・預金・ 短期性有価証券)
で計算できるので、
30万円の借金 - 10万円の現金  =20万円がネット有利子負債となります。

企業価値 = ネット有利子負債 + 株式時価総額
が成り立てば、
株式時価総額 =企業価値  - ネット有利負債 
株式時価総額 =100万円 - 20万円 
株式時価総額 = 80万円となります。

ちなみにこの80万円は、中古自動車の現在価値と現金の合計と同じで、カエル自動車販売に私が出資した価値となります。

分かりやすい例か自信がないですが、企業価値からネット有利子負債を引いたものが時価総額だということを理解して頂ければ十分です。

 

【WCPの企業価値(EV)と時価総額は違う】

WCPは企業価値(EV)2500億ウォンであった当時、2130億ウォン規模の転換社債を発行した。
ノエンパートナーズ1490億ウォン
KDB産業銀行250億ウォン
三星ベンチャー投資200億ウォン
BNWインベストメント100億ウォン
新韓金融投資(PI自己資本勘定)50億ウォン
新韓キャピタル40億ウォンなどだ。
ポストバリュー(投資後、企業価値)は、4630億ウォンだった。

といった記事が、

https://www.fnnews.com/news/202109051827327767

『DS運用などWCP CBに2000億ウォン投資(2021.09.05 )』といったのニュースにあります。

 

企業価値 2500億ウォンの会社が、有利子負債になる2130億ウォン転換社債を発行したら、この転換社債2130億ウォンがそのまま企業価値に加算され、
2500億ウォン + 2130億ウォン =4630億ウォンが企業価値となります。

つまり、ネット有利子負債が増えれば、その分同じ金額だけ、企業価値が増えるという話です。転換社債も転換(新株予約権を行使)されるまで社債ですから、有利子負債となります。

現在WCPの企業価値(EV)は、2兆5000億〜3兆ウォン台に数年で10倍に増えた。

という記事もあります。

上記のニュースの金額はWCPの企業価値(EV)であって、時価総額でないので注意してください。

2兆5000億〜3兆ウォンは、日本円で2375億円から2850億円です。
WCPのネット有利負債は、新株予約権転換社債 173億円(2020 年 12 月末残高)
と同程度と推定されるので、この173億円を引いた金額が時価総額です
企業価値2375億円から2850億円から173億円を引くと、時価総額は2202億円から2677億円となります。

あまり変わらないような気がしますが、企業価値が下がっても、このネット有利子負債は変わらないので、企業価値が下がった以上に、時価総額は下がります。

現在WCPの企業価値(EV)は、1兆〜2兆ウォン(953億円~1906億円)だとすると、
173億円のネット有利子負債は変わらないので、時価総額780億円から1783億円となります。

現在WCPの企業価値(EV)は、6000億ウォン(573億)だとすると、
173億円のネット有利子負債は変わらないので、時価総額は393億円となります。


【WCP上場後のW-SCOPEの株価は】

上記のニュースによるによるとノエンパートナーズ1490億ウォンの転換社債で、新株発行の株式で、32%ほどの株式(相当の新株予約権)を保有しているようです。
残りの転換社債が640億ウォンでノエンパートナーズの約半分なので、16%ほどの株式(相当の新株予約権)を想像されます。転換社債保有者の株式を合わせると48%となり、W-SCOPEの持株比率は52%となります。

 

50%以上が連結子会社の基準といわれる、そういった基準以上の株式をW-SCOPEは保有するでしょうから、W-SCOPE(ダブル・スコープ)が新たに売却できる株式はほとんどないようです。

▼2021年9月7日追記-----

W-SCOPEの持株比率は52%は低すぎるという意見もあるようです。

会社の支配権の維持のため転換社債分は多くて30%程度で、W-SCOPEの持ち株比率は70%程度になり、上場時にW-SCOPEの持株売却もあると推測する人もいます。

有価証券報告書
第1回 新株予約権発行による潜在株式 33293株 ノエンパートナーズの分
第2回 新株予約権発行による潜在株式 16212株
第3回 新株予約権発行による潜在株式  6369株
第4回 新株予約権発行による潜在株式  5790株
と潜在株式数(転換社債分の株式数)合計61664株 約6万株という数字は確認できましたが、分母になるWCPの発行済株式数はわかりませんでした。

現在の発行済株式数が20万程度であれば、潜在株式も加えた株式数26万株中の潜在株式6万株で約23%が転換社債分となります。

 

ニュースでいうノエンパートナーズが保有する32%という数字は、潜在株式数(転換社債分)も加えた株式数の32%か、現状の発行済株式数に対する32%で変わってきます。

W-SCOPEの持株比率は52%というのは、潜在株式数(転換社債分)も加えた株式数の32%と考えた数字ですが、現状の発行済株式数に対する32%であれば、W-SCOPEの持ち株比率は、100/148で(148は100%に転換社債分48%を加えた数字)という計算で67%になります。これだと、特別決議も単独で可能になる株式数で、妥当な数字かもしれません。

▲2021年9月7日追記終わり-----

 

以下の計算は、W-SCOPEの持株比率52%の数字ですが、参考になればと思い記載します。

 

企業価値(EV)2兆5000億ウォン2375億円 →時価総額は2202億円 (企業価値からネット有利子負債173億円を引いた金額)
 →2202億円 × 52%(W-SCOPEの持分) × 57%(GMB係数)=652億円です。

この652億円程度まで株価の上昇が期待できると考えると
8月6日の終値885円 時価総額481億円ですから35%程度の上昇(株価1194円)できそうです。

1ウォン=0.095円で計算しています。

 

企業価値(EV)2兆ウォン 1900億円→時価総額は1783億円 

→2202億円 × 52% × 57%(GMB係数)=529億円です。

8月6日の終値885円 時価総額481億円ですから10%程度までしか上昇(株価973円)は期待できません。

 

GMB係数については以下のブログも参考にしてください。

韓国子会社が上場しているGMBと上場予定のW-SCOPE - 令和の未来カエルのブログ

【本の紹介】

企業価値評価に関する本を紹介します。

 

 

株式投資でも企業評価の実務が学べる良本です。財務用語の専門知識の理解がない方だと難しく感じられれるようです。ただ、具体例も多く、文体も、口語体なので、読みやすいと評判です。

 

 

 

著者の企業価値評価(実践編)の基本パターンを一冊まるまる使用して解説した本で、。学生か、これから関連実務に携わる者が始めに読む本。企業価値評価の初学者向けに、前半でバリュエーションに必要なコーポレートファイナンス理論の基本を纏め、後半でモスフードサービスなどの事例を紹介しています。

 

以 上