■はじめに
チタン製品が主力の2社、東邦チタニウム(5727)と大阪チタニウムテクノロジーズ(大阪チタニウム 5726)の2社の業績や今後のチタン需要について調べてみました。
大阪チタニウムは、2020年3月期は減収減益、2021年3月期、2022年3月期(会社予想)も2期連続で営業赤字で、当期純利益も、2期連続で赤字で、PBR1倍の株価789円と業績、株価ともに低調です。
対して、東邦チタニウムが、2020年3月期、2021年3月期、2022年3月期(会社予想)も3期連続で営業黒字で、当期純利益も、2021年3月期以外は黒字で、PBR1.47倍の株価944円と業績、株価も堅調です。
東邦チタニウムは、2021 年 10 月 28 日には、通期業績予想の売上と利益の上方修正もしています。
上方修正の理由は、
『スポンジチタンの増販及び最近の為替動向を考慮して今後の想定為替レートを 105 円/US$から
110 円/US$に変更したことにより、前回発表予想に比べ増収増益となる見通しです。』と発表しています。
■目次
■チタン事業の売上比率は東邦チタニウムより大阪チタニウムが大きい
チタン事業の占める売上比率は、下記のように東邦チタニウムより大阪チタニウムが大きいことが、航空機需要の低迷によるチタン需要の低迷の影響も大きいようです。
東邦チタニウム 大阪チタニウム
2022年3月期上半期 54% 85%
2021年3月期上半期 49% 83%
2020年3月期上半期 70% 92%
チタン事業以外の事業について、東邦チタニウムは、汎用プラスチック製造用触媒や化学品事業に属する超微粉ニッケルなどチタンと関係ない製品も多いのに対して、
大阪チタニウムは、高純度チタンやチタン粉末といったチタンに関係した応用製品を高機能材料事業して、チタン事業と別セグメントとしています。
東邦チタニウムと同じセグメントの基準で、大阪チタニウムを製品の売上を分けたら、チタン事業の売上比率はもっと上がるかもしれません。
【参考メモ】として、東邦チタニウム、大阪チタニウムの直近3期分の上半期業績を載せていますが、
大阪チタニウムは、高機能材料事業も不振(赤字)です。
チタンの全体の生産が減り、固定費の関係で製造原価率が上がり、赤字なのかもしれません。
大阪チタニウムは2018年5月に中期経営計画(2018〜2020)を公表しています。
1.次代の成長に備えたスリムで筋肉質な経営基盤の構築
2.徹底したコスト削減による世界最強のチタンコスト競争力の確立
3.ポリシリコンの安定生産と品質の更なる向上による顧客ニーズへの対応と拡販機会の追求
4.需要の伸びが見込める高機能材料事業の成長機会の捕捉とチタン合金粉末の早期事業化
といった基本方針の計画ですが、
2020年にポリシリコン事業は撤退していますし、高機能材料事業も計画ほど成長していないのかもしれません。
▼参考メモ
東邦チタニウムと大阪チタニウムの業績について、有価証券報告書、決算説明資料に基づいて調べた内容を、共有します。
▼東邦チタニウム
【2022年3月期 上半期】
セグメント 売上 利益
金属チタン事業 142億円 ▲6億円
触媒事業 40億 14億円
化学品事業 80億 22億
【2021年3月期 上半期】
セグメント 売上
金属チタン事業 82億円
触媒事業 34億円
化学品事業 50億円
【2020年3月期 上半期】
金属チタン 145億円
機能化学品事業 69億円
▼大阪チタニウム
個人的な興味で東邦チタニウムより詳しく調べています。
【2022年3月期 上半期】 報告期間
セグメント 売上 利益
チタン事業 99億円 ▲6億円
高機能材料事業 15億円 利益 ▲6億円
その他 2億円 利益 2億円
TILOP(低酸素球状チタン粉末)の在庫評価損失5億円が影響しているもようです。
決算の主要数字
売上高 117億円
売上原価 107億円
減価償却費 12億円
売上総利益 9億円
販売費一般管理費 19億円
営業利益 ▲10億円
営業 CF 47億円
【2021年3月期 上半期】
セグメント 売上 利益
チタン事業 69億円 ▲12億円
高機能材料事業 12億円 0.6億円
その他 2億円 2億円
決算主要数字
売 上 高 83億円
売上 原価 70億円
減価償却費 12億円
売上総利益 12億円
販 管 費 22億円
営業 利益 ▲10億円
営業 CF ▲32億円
【2020年3月期 上半期】
セグメント 売上 利益
チタン事業 179億円 7.4億円
高機能材料事業 10億円 ▲0.43億円
その他 4億円 ▲0.06億円
決算主要数字
売 上 高 193億円
売上 原価 161億円
減価償却費 12億円
売上総利益 33億円
販 管 費 26億円
営業 利益 7億円
営業 CF 16億円
■海外売上比率は東邦チタニウムより大阪チタニウムが大きい
地域ごとの売上比率は、2020年3月期の数字で、
東邦チタニウム
日本 米国 欧州 アジア その他 合計
238億 100億 51億 64億 1億 455億
52.5% 22.1% 11.3% 14.0% 0.2% 100%
大阪チタニウム
日本 米国 中国 その他 合計
146億 186億 9億 41億 382億円
38.2% 48.7% 2.4% 10.7% 100%
となっています。
日本国内の売上比率は、東邦チタニウム52.5%、大阪チタニウム38.2%
海外の売上比率は、東邦チタニウム47.5%、大阪チタニウム61.8%と、
東邦チタニウムは国内に売上が多く、大阪チタニウムは海外の売上が多いことがわかります。
チタン金属の需要は、8割は航空機向と言われていますが、国内の需要に限ると航空機向の需要は2割程度のようです。大阪チタニウムは航空機向の売上が多く、コロナ禍が直撃したが、東邦チタニウムは航空機向の売上がそれほど多くなく、コロナ禍の直撃が少なくなかったと考えられます。
下記の資料は、経済産業省のサイト
https://www.meti.go.jp/policy/nonferrous_metal/strategy_top.html
から引用した資料です。
直近のデータが2005年と少し古いですが、航空機の需要は、500トン程度全体の3100トンから考えると、約16%程度です。
■チタン需要の回復
大阪チタニウムと東邦チタニウムの決算説明資料や調査会社のレポートを読むと、コロナ前の2019年度と同程度の需要に2024年に戻り、再び需要が成長することを考えると、両社とも数年保有する前提であれば、買い時なのかもしれません。
▼ 大阪チタニウム 2021年度 上期決算説明会 2021年11月19日
▼2021年11月17日東邦チタニウム 2022年3月期 第2四半期決算説明会資料
チタンの市場規模、2026年に335億米ドル到達予測|株式会社グローバルインフォメーションのプレスリリース
チタンの市場規模は、2021年の247億米ドルから2026年には335億米ドルに達すると予測されています。
2020年の市場は、形態別に、二酸化チタンが78.4%で最大シェアを占めており、2026年には253億米ドルに達すると予測されています。
また、二酸化チタン市場では、塗料・コーティング分野が最も高いCAGRを示し、2021年の103億米ドルから2026年には141億米ドルに成長すると予測されています。
金属チタン市場では、航空宇宙分野が最も高いCAGRである 8.3%を示し、2021年の41億米ドルから2026年には61億米ドルに達すると予測されます。
■直近の株価とコロナ前の株価
2021年12月27日は終値で、
東邦チタニウム927円
大阪チタニウム778円です。
コロナ前の株価を、コロナ前の年安値で考えると、
東邦チタニウム
2019年の安値 748円(8/26終値)
2018年の安値 910円(12/25終値)
2017年の安値 773円(5/29終値)
大阪チタニウム
2019年の安値 1452円(5/13終値)
2018年の安値 1526円 (8/13終値)
2017年の安値 1496円(9/4 終値)といった株価なので、
東邦チタニウムはもうすでにコロナ前の株価の安値を超えて、株価はコロナ前から回復しているといえそうです。
大きな反発を狙うなら、大阪チタニウムが狙い目かもしれません。
ただ、東邦チタニウムについては東海東京証券が、2021/12/20 新規「アウトパフォーム」、1340円といったレーティングを発表しているので、まだ割安なのかも知れません。
チタン需要、チタン事業の回復を期待して投資する場合、ハイリスクハイリターンを狙うなら、大阪チタニウム
それほど、リスクを取りたくないなら、東邦チタニウムがおすすめかもしれません。
■このブログの記事に興味を持った方へ
このブログに興味を持った方が興味がありそうな本をいくつか紹介します。
以上