原発ルネッサンスの再来で大復活するかも日本製鋼所、三菱重工
■はじめに
日本製鋼所、三菱重工の業績が急回復し、想定以上の業績で、株価も急上昇するかもしれないという話のブログ記事です。
■原発ルネッサンスで急上昇した日本製鋼所の株価
2006年1月に東芝が、 イギリスの英国核燃料会社(BNFL)から、ウェスティングハウス・エレクトリックを54億ドル(約6370億円)で買収し、加圧水型原子炉の技術を手に入れ、沸騰水型原子炉を含めた原子炉装置の世界三大製造メーカーの一つとして飛躍を目指したように、また、2002年から2010年ぐらいは、原発ルネッサンスという言葉が生まれたように、原子力発電の更新、建設計画がブームとなり、原子力発電が世界の主力電源になると注目を浴びていました。
2008年6月には12,125円の上場来最高値を付けています。
ただ、
連結業績 売上 純利益 一株当たりの利益
2008年3月期 2220億 174億 47.10円
2009年3月期 2271億 160億 43.19円
といった当時の業績を見ると、原発ルネッサンスの背景のもとの期待先行の株価だったかもしれません。
2007年には、新興財閥ロシア・アルミニウムが、日本製鋼所の買収を図りました。
また、同じ年に、フランスの原子力国策企業のアレバが、日本の大型鍛造品メーカー「日本製鋼所」の株式取得を狙っていると報道もありました。
同じ年の9月には、日本製鋼所は20%以上の株取得を目指す投資家に目的などの説明を求める「事前警告型」の防衛策を導入しています。
そういったM&Aの思惑からの株価上昇なのかもしれません。
その後2011年の福島の原発事故、安全対策のコスト高の問題、や2010年代のシェールガスの普及による安価な化石燃料の存在、太陽光、風力発電など自然エネルギー発言の台頭により、原発ルネッサンスはブームで終わり、原子力産業は斜陽の時代に入ります。
▼日本製鋼所の20年間の月足チャート
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■2021年は、樹脂製造加工機械事業により業績が急回復
日本製鋼所 <5631> も、セパレータフィルム用装置を主力製品として樹脂製造加工機械
に注力し業績が急回復し、株価は回復しています。
▼2021年1月からの1年チャート
業績をけん引するセパレータフィルム用装置を有するに関する記事は、
も参考にしてください。
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■原発ルネッサンスの再来もあるか。
2022年の年初から、原子力発電が注目されています。
https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/01/ac9c1a69b9dd0330.html
欧州委、EUタクソノミーに原子力や天然ガスを含める方針を発表(EU) | ビジネス短信 - ジェトロ
欧州委員会は1月1日、持続可能な経済活動を分類する制度である「EUタクソノミー」に合致する企業活動を示す補完的な委任規則について、原子力や天然ガスを含める方向で検討を開始したと発表した(同プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。EUタクソノミーは、EUが掲げる2050年までの気候中立の達成に実質的に貢献する事業や経済活動の基準を明確化することで、「グリーン」な投資を促進することを目指すもの。
https://news.yahoo.co.jp/articles/ff961eac2e1822eb9d84b7328a217fb47da8edfe
欧州委員、次世代原発の新増設に「65兆円の投資必要」(AFP=時事) - Yahoo!ニュース
ティエリ・ブルトン(Thierry Breton)欧州委員(域内市場担当)は仏週刊紙ジュルナル・デュ・ディマンシュ(Journal du Dimanche)のインタビューで、「既存の原子力発電所だけでも2030年までに500億ユーロ(約6兆5600億円)の投資が必要だ。次世代型であれば5000億ユーロが必要となる」と述べた。
ブルトン氏はまた、原子力発電と天然ガスを投資先として「グリーン」なエネルギーに分類するEUの草案は、投資を呼び込む上で極めて重要な一歩だと論じた。
脱炭素、環境負荷の低さという点で、原子力発電が注目を再び集めています。
2002年から2010年からの原発ルネッサンスのようにブームに終わるのかどうかわかりませんが、たとえ、ブームに終わるとしても、原子力発電関係の産業、企業がマーケットから注目を集めることになりそうです。
実際に、原子力発電の本命銘柄といえる三菱重工業、日本製鋼所は、1月の年初から急上昇しています。
終値 2021年12月30日 → 2022年1月7日
日本製鋼所 5631 3860円 → 4090円 (+230円 +5.95%)
三菱重工業 7011 2659円 → 2951円 (+292円 +10.09%)
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■日本製鋼所の競争力と技術力
原子力発電産業における日本製鋼所の競争力と技術力がわかる記事をいくつか紹介します。
日本原子力学会誌, Vol. 50, No. 7(2008)
神田 啓治 かんだ・けいじ
エネルギー政策研究所長 京都大学名誉教授 寄稿記事より
(2004年11月に経済産業省と外務省の強い後押しで日本 原子力産業会議の中に「原子力国際展開懇話会」が 設置された以降の)
各国との協議の中で忘れられないのは,日本製鋼所 (JSW)室蘭製作所のことである。世界的に原子炉が大型 化し,出力100万 kW 以上になるとどうしても JSW の鍛造技術に依らなければならない。フランスの EPR が 2基とも三菱重工を通じて JSW の圧力容器を購入した ことでもわかるように,米国,ロシアにおいても JSW の話題がしばしば出てくる。07年11月にワシントンで開 催された日米エネルギー会議における筆者の講演タイト ルも,「JSW について」で依頼されるほどであった。04 年に始まった懇話会では当初,日本の実力は外国から評価されているのかという議論があったが,各国を回るうちに,そのようなことは杞憂に終わった。予想を超える 評価のされ方であった。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2012/siryo47/siryo1-1.pdf
2012年10月30日 資源エネルギー庁資料第47回原子力委員会
資 料「原子力人材・技術に係る現状と課題について」
米国エネルギー省は、2005年、米国の原子力産業に関し以下の評価を行っている。
・米国企業には、第三世代原子炉の主要資機材(原子炉圧力容器、蒸気発生器等)を製造する能力はない。例えば、原子炉圧力容器に用いる品質の高い大型鍛造品は唯一日本製鋼(JSW)のみが製造しうる。
・こうした製造能力の欠如が、(国内の原発建設において)重大な建設遅延リスクやファイナンスリスクをもたらす
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/genshiryoku/
経済産業省サイト>ホーム 審議会・研究会 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会
2021年4月14日 資源エネルギー庁資料「原子力人材・技術・産業基盤の維持・強化について」より
日本製鋼所M&E(JSW M&E) (日本製鋼所の連結子会社)
原子炉の中核となる原子炉圧力容器の部材を供給するサプライヤ。
• 世界最大級の最大670トン鋼塊から鍛鋼品を製造可能であり、プラントメーカーの溶接・検査コスト低減に貢献
• 原発ルネサンス期の受注増に対応するため震災前にラインを増設するも、震
災後売上は1/10に低迷。
• 原子力発電所の新設が進む中国に対しても輸出をしているが、中国では原子
力製品の国産化が進み、納入件数は減少傾向。
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https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/genshiryoku/023.html
第23回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会(METI/経済産業省)
経済産業省サイト>ホーム 審議会・研究会 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会 第23回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会 開催日 2021年4月14日
「日本製鋼所 M&E における原子力発電所部材への取り組み」
(日本製鋼所 M&E 株式会社提出資料)
*様々な製品・設計対応のためマニュアル化が出来ない製品
*確実な技術・技能継承には実経験が必須
国内新規案件向けとしては約15年前が最後の実績
現在は海外の取替および新規案件が主
原子力発電所の建設に必要な主要な機器は、わが国のメーカーが製造しています。(中略)
たとえば、原子炉の心臓部である炉心を収納する分厚い鋼鉄製の原子炉圧力容器は、北海道の室蘭市にある日本製鋼所が作っています。アレバ社がフィンランドに建設中のEPR(欧州型PWR)の圧力容器も三菱重工を経由して、日本製鋼所に注文が入ります。日本製鋼所の原子炉圧力容器の世界シェアはなんと80%です。(北海道大学名誉教授奈良林直氏の発言より)
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■本の紹介
日本製鋼所、原子力発電、原子力産業を知るために参考となる本をいくつか紹介します。
上記では楽天のリンクで本を紹介してますが、アマゾンのリンクで紹介しておきます。