▼目次
■ はじめに
東京エレクトロンが1970年代に実施した不採算事業の撤退から学んだ製品戦略を紹介します。株式投資や就職活動など企業を選ぶ際に、参考になると思います。
東京エレクトロンの意外な歴史(ラジオ・ステレオ・電卓の製造・輸出といった事業からの撤退)が知れます。
東京エレクトロンの製品戦略とダブルスコープとの共通点も説明しているYoutube動画も紹介しています。
■ 東京エレクトロンの危機
半導体製造装置の企業で、2022年3月期で売上は2兆円を超え、営業利益・経常利益も約6000億円に達します。
2022年12月30日時点の株価では、株価38,880円で、時価総額6.1兆円で21位でしたが、去年株価が6万円を超えていた去年は、日本企業の時価総額10位内にランキングされたことも多かったです。日本を代表する大企業、優良企業です。
あまり知られていませんが、
東京エレクトロンは1970年ぐらいまではステレオ・電卓・ラジオなどを製造し、海外に輸出していました。そういった事業は1971年のニクションショックに起因する円高で不採算事業となり、1974年位から1976年ぐらいに撤退しています。
東京エレクトロンの歴史 | About TEL | 東京エレクトロン株式会社
には
1975
■民生機器の生産と輸出から撤退
と記載されている内容です。
第5章 危機・転機 「創立以来の最大の危機」「乾坤一擲(けんこんいってき)の撤退作戦」という見出しの部分で、当時の話が、記載されています。異端の男とその一族―火の玉集団・東京エレクトロンの奇跡 (1982年) は1982年(昭和57年)に発刊された古い本なので、まだ、当時の記録、記憶が多かったときともいえるので、貴重な記載かもしれません。
■ 創立以来の最大の危機
(輸出事業の赤字で、業績悪化の原因であった)当時、専務の久保のほかに、小高も含む常務が五人いた。久保と小高は、この危機を乗り切るには輸出業務からの完全撤退しかないと主張しか、それに反対する人もいた。
(中略)
久保と小高はすぐに輸出業務からの撤退作戦に取り掛かった。といっても、なにぶん、総売上の6割を占める輸出を、一挙にゼロにしようという荒療治である。
久保氏と小高氏も創業者で、1974年11月、久保氏は社長に就任して、小高氏は専務に就任しています。その前は、出資者の東京放送(TBS)から派遣された遠藤氏が社長でした。
完全撤退に反対する役員も多く、常務5人のうち、強硬に反対した1人が辞任し、他の2
人も辞任したらしいです。つまり、常務5人のうち、3人が辞任した異常事態であったことが推察されます。
売上も6割、人員も6割を占める事業を撤退する決断は大きな勇気が必要な決断、勇断といえるかと思います。
■ 乾坤一擲の撤退作戦-危機から学んだ製品戦略
小高は50年度(1975年4月度)を正念場としてとらえ、その正念場を乗り切る道には、撤退作戦の実行しかないと確認していたのである。さらに、小高はこの文章(昭和49年1974年12月の社内報)のなかで、東京エレクトロンが進むべきおよび商品戦略を明快に示している。やや長くなるが、同社の経営戦略の原点であるので、そのまま引用しておく。
「当社は、過去10年間、エレクトロニクス製品を取り扱うマーケティング・オーガニゼーション(市場・顧客志向の組織・運営)として発展してきたが、今後もこの分野に徹底すべきだと思う。
当社の10年間のノウハウの蓄積は、すべてこの分野であり、この道のエクスパートを揃えているのであるから、よほどのことがない限り、他へ転進することは効率的でない。エレクトロニクスの分野は、今後とも非常に発展する分野であり、不況により、一時的にマーケットがスローダウンすることがあっても、長期的には有望である。
ただ、この分野だからといって、なんでもよいということはない。まず、次の点を考慮して、なにを扱うかを判断すべきである。
1.マーケットが今から大きくなる分野の製品。
2.その製品について競争相手が少ないこと。とくに大メーカーの主力製品でないこと。
3 .他社が容易に参入できない製品。
4 .販売先が一流会社であり、代金回収についての心配がない製品であること。
5 .取り扱うのにあまり金がかからぬ製品であること。たとえば、その製品の販売のために、土地を購入して工場を建設する必要があるような製品は好ましくない。
6 .製品が在庫の間に値崩れしないこと。
7.付加価値の高い、利益率の高い製品であること。
こういろいろ挙げてくると、そんな製品がそう見つかるはずがないといわれるかも知れないが、実際に当社で扱っているLSI・テスター、PCボード・テスター、CADシステム、半導体製品用自動機械、データ・コレクション・システム、その他コンピュータ・コントロールの各種システム等は、すべてこれらの条件を満たしているのである」
そんな製品がそう見つかるはずがないと小高氏自身が述べているように、7つの条件全ては難しいかもしれません。だた、この7つの要素の多くが該当している製品、事業の企業が投資先、就職先として有望かも知れません。
●東京エレクトロンが危機から学んだ製品戦略-ダブルスコープの共通点
ブログ記事を紹介する形で、
東京エレクトロンの意外な歴史やダブルスコープの共通点など解説している動画です。
■ 投資先としての古本
2021年6月16日時点の販売価格は、中古品で18,480円です。
1年前見たときは、5000円ぐらいだった記憶があり、その時高いと思って買いませんでしたが、
買い時だったかもしれません。1982年の初版ですが、定価は、1,078円です。
東京エレクトロンの株価も1982年から見ると、10倍以上に上昇していると思いますが、株価と同じく、東京エレクトロンの創業者についての本も、10倍以上の上昇です。
こちらは、物価の上昇や金利など考えても、なかなかいい投資といえそうですね。
とう話をしました。
2021年6月16日時点の販売価格は、中古品で18,480円でしたが、2022年12月30日時点の今のAmazon価格は、34,900円でした。
1年半で約2倍弱まで価格が上がっています。
ちまなみに私は2021年6月にYahooオークションで、1万円(送料込みで1万310円)で購入しました。
売るつもりもなく、電子書籍化、再販化されたら古本価格は大きく下落すると思いますが、投資として古本を買うというは、面白いアイデアだと思いますので、紹介しておきます。
ここでいう投資は、自分への投資といった教育や自己啓発といった意味でなく
転売すれば金銭的な利益になるという意味の投資です。
前者の意味の投資になる古本が買うならおすすめです。
は、前者の意味でも、後者の意味でもいい古本だと思っています。