-第1章 日本の牙城-『電池の覇者 EVの命運を決する戦い』を読んで

 

電池の覇者 EVの命運を決する戦い | 佐藤 登 著 を読みました。その要約、所感、関連する話題など紹介したいと思います。今回は「第1章 日本の牙城」についてです。

 

■要約

車載用リチウムイオン電池としては、2015年頃まで日系勢が世界をリードしていたが、以降は韓国のLG化学、サムスンSDIが台頭し、2016年時点で合弁以外のフリーな事業を展開してリーな事業を展開しているトップ3は、パナソニック、LG化学、サムスンSDIとなった。

2017年にはトップ5と称され、上記3社に中国のCATL(寧徳時代新能源科技股、Contemporary Amperex Technology)とBYD(比亜迪)が加わった。2017年のリチウムイオン電池生産容量基準では、CATLがパナソニックを抜いてトップに躍り出た。今後を展望すれば、韓国のSKイノベーションが潤沢な資金を使い大規模投資を展開しており、トップ6になる勢いがある。

と「-第1章 日本の牙城(電池の覇者)」で、リチウムイオン電池リチウムイオンバッテリー)の需要の大半をしめる車載用電池について、韓国勢、中国勢がシェアが拡大し、日本勢のシェアが低下したきた歴史について、触れ、『日本の牙城』というより、『日本の牙城だった』というタイトルが適当なようです。

 

■所感

 

  • 電池の技術は、材料技術、プロセス加工技術、電気電子制御技術、熱制御技術などと多岐にわたり、日本には多岐にわたる幅広い教育・産業の基盤があること。
  • 電池の心臓部は正極材料、負極材料、セパレーター、電解液、バインダー、添加剤などの材料技術であり、日本が得意としてきた材料技術が大きな下支えをしてきたこと。
  • 製品の品質、生産技術の質の高さは世界トップ級である

と日本の強みを触れていますが、技術も品質も、製造する数、量に比例して、改善するでしょうし、世界シェアが減り製造する数、量が減った日本が本当に強みが今後も強みを発揮できるのか、という不安は残るような内容でした。

 

そもそも、日本は世界トップ級といいますが、競合する韓国、中国など競合する国も世界トップ級といえるように思えるので、「世界トップ級だから」というのはあまり意味がないように感じまし、そもそも何をもって世界トップ級なのかも疑問でした。

 

■関連する話題

リチウムイオンバッテリーの日本企業のシェア低下という話をきくと、

リチウムイオンバッテリーと同様に日本企業がシェアが落とし、韓国、台湾企業に完敗したDRAMを中心とした半導体産業についての歴史を思いだします。

 

韓国、台湾企業に完敗したDRAM事業を中心とした日本の半導体産業の歴史については、以下のブログも参考にしてください。

 

 

 

 

 

 

 

■佐藤登氏の著書

佐藤 登氏 の他の著作を紹介します。

 

 

 

 

■改めて本の紹介

 

 

●佐藤 登氏 の経歴

名古屋大学未来社会創造機構客員教授エスペック上席顧問
1953年秋田県生まれ。1978年横浜国立大学大学院工学研究科修士課程修了。同年本田技研工業入社。自動車の腐食制御技術開発に従事した後,1990年本田技術研究所基礎研究部門へ異動。1991年電気自動車用の電池研究開発部門を築く。チーフエンジニアであった2004年に韓国サムスンSDIに常務として移籍。中央研究所と経営戦略部門で技術経営を担当,2012年退社。2013年より現職。工学博士(東京大学,1988年)。論文,講演,コラム等多数。
主な著書に『危機を生き抜くリーダーシップ(国際文化会館新渡戸国際塾講義録3)』(共著,2013年,アイハウス・プレス),『人材を育てるホンダ 競わせるサムスン』(2014年,日経BP),『リチウムイオン電池の高安全・評価技術の最前線』(共監修,2014年,シーエムシー出版),『車載用リチウムイオン電池の高安全・評価技術』(共監修,2017年,シーエムシー出版)など。

 

●内容について

製造業の頂上決戦!
巨額投資で市場を席巻する中国、韓国企業。世界をリードしてた日本企業は勝機を見出せるか--。
パナソニックGSユアサ村田製作所、ATL、
サムスンSDI、LG化学、CATL、BYD……。
次世代革新電池を視野に入れた競争の最前線を徹底解説。

1887年に屋井先蔵が世界に先駆けて乾電池を発明して以来、日本の電池産業は長く世界をリードしてきた。とりわけ1960年代以降は隆盛期を迎え、次々と新たな電池を開発、生産を開始した。さらに1983年には旭化成の吉野彰氏らが経済社会を大きく変えることとなるリチウムイオン電池の原型を確立。1991年にソニーが世界初の製品化を実現した。
日本電池産業の輝かしい歴史も、21世紀に入ると様相が変わる。韓国企業が日本勢を追い上げ、2010年にはサムスンSDIがモバイル用リチウムイオン電池で世界シェアトップに立った。近年は、さらに高い性能を要求される自動車搭載用の大型リチウムイオン電池の世界で、中国勢が急速にシェアを伸ばしている。高性能電池の開発、製造の行方は、製造業の頂点に立つ自動車産業の未来をも左右する。世界の環境規制、中国の産業政策などもあいまって、日本の牙城だった電池産業が大きく変貌しようとしている。

 

●目 次

まえがき-まえがき-を読んで - 令和の未来カエルのブログ

第1章 日本の牙城
1 日本の底力
2 電池の基本的仕組み
3 車載用へと電池の用途広がる
4 日本の強み

 

第2章 モバイル用電池の明暗
1 電池革命を起こしたリチウムイオン電池
2 戦略の欠如
3 ソニーの電池事業撤退
4 ハイエンド偏重の日本、ローエンドも重視する韓国

第3章 EV開発の思惑と電池戦略
1 環境規制が主導する自動車の電動化
2 トヨタがEVを投入せざるを得ない事情
3 選ばれるEVとは?
4 テスラの巨額投資とリスク
5 急加速のEVシフトに潜む5つの課題
6 元素戦略と資源争奪戦
7 トップブランド参入で競争激化
8 環境対応車における日本のリード

第4章 中国市場の変化と欧米、インド
1 環境改善か下剋上か─EVシフトの先
2 翻弄される日韓企業
3 中国NEV規制への対応
4 驀進する中国EV、電池業界の異変
5 中国のEV政策変化は外資に追い風?
6 EVが減速する中国、加速する欧州
7 2020年、車載電池業界の勢力図が明確に
8 揺れる米国のルール
9 台頭するインドの電動化と矛盾

第5章 車載用電池の攻防
1 合弁が難しい電池事業--韓国勢はフリーを選ぶ
2 R&D投資でも激突する日中韓
3 戦略は随時見直してこそ生きる

第6章 定置型蓄電池の幕開け
1 定置用電池業界に第三勢力参入
2 韓国企業の火災事故
3 2019年からのFIT問題

第7章 品質競争─安全性と信頼性のビジネス
1 なぜサムスンの最新スマホは爆発したのか?
2 電池の安全性を要求する国連規則
3 中国製リチウム電池が信頼できない理由

第8章 成長への戦略
1 加速する次世代電池開発
2 次世代革新電池はいつ実現するか?
3 日本を取り巻く状況
4 日本勢の命運
5 ノーベル化学賞の栄誉

あとがきに代えて
参考文献・資料

 

以上