第8章 成長への戦略『電池の覇者 EVの命運を決する戦い』を読んで

 

電池の覇者 EVの命運を決する戦い | 佐藤 登 著 を読みました。その要点、所感など紹介したいと思います。今回は「第8章 成長への戦略」についてです。

 

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第7章 品質競争─安全性と信頼性のビジネス-『電池の覇者 EVの命運を決する戦い』を読んで - 令和の未来カエルのブログ

の続きとなるブログ記事です。

 

■全固体電池について


リチウムイオン電池の次世代電池といわれる全固体電池の開発状況もふれている。

全固体電池の実現が意味するところは、電池部材のサプライチェーンを大きく変えることになる。正極系と負極系はともかくとしても、三菱ケミカル宇部興産が事業展開している電解液、そこに電解質を供給する森田化学工業やステラケミファ、さらには旭化成東レ住友化学宇部興産が優良事業として推進しているセパレーターが不要になる。

とは言え、足元でのリチウムイオン電池の需要は高まる一方である。それが証拠に、セパレーター各社は日本や韓国で大々的な投資拡大を図ってきた。すなわち、長期的視点では全固体電池の実現がビジネスリスクとして向き合うことになっている反面、ビジネスチャンスとしての現状の需要拡大は、大きな原動力となっているのも事実だ。


まさに、全固体電池の開発、普及は、電池産業のゲームチェンジとなりそうです。

 

■成果の期待値

 

大学や研究機関、および企業での研究開発に対する成果の期待値は、研究に充てられる時間、研究に充てられる予算、そしてそこに携わる人材の積算値として、次のように表現できると著者は考える。次世代革新電池研究に関しても例外ではなく当てはまる。

成果の期待値= 研究時間 × 研究予算 × 研究人材

といった記述もあります。

 

研究開発という創造性が発揮されるような分野でも、『大軍に兵法なし』、『質より量』ということが当てはまるのかもしれない。

独創的、画期的、進歩的な研究開発の成果は、1時間の研究時間より、100時間の研究時間の方が生まれる確率が高いでしょう。
独創的、画期的、進歩的な研究開発の成果は、100万円の予算より、1億円の予算の方が生まれる確率が高いでしょう。
独創的、画期的、進歩的な研究開発の成果(を生み出す人)は、100人の研究開発者より、1万人の研究開発者の方が生まれる確率が高いでしょう。
そんな話なのかもしれません。


研究開発は、付加価値向上とコストダウンと、大きく二つの目的があります。
最終的に、全固体電池が全固体電池がリチウムイオン電池の後継となるのかわかりません。
ただ、全固体電池は、安全性など付加価値向上への研究開発が中心で、付加価値向上とコストダウンの両方で研究開発が進み、かつ、
研究時間、研究予算、研究人材の規模が、全固体電池より大きいと思われるリチウムイオン電池を市場を奪うのは難しいような印象です。

 

全固体電池については、以下のブログも参考にしてください。

 

 

『大軍に兵法なし』については、以下のブログも参考にしてください。

 

 

 

 

■佐藤登氏の著書

佐藤 登氏 の著作を、アマゾンのリンクで紹介します。

 

 

 

 

 

■改めて本の紹介

 

 

●佐藤 登氏 の経歴

名古屋大学未来社会創造機構客員教授エスペック上席顧問
1953年秋田県生まれ。1978年横浜国立大学大学院工学研究科修士課程修了。同年本田技研工業入社。自動車の腐食制御技術開発に従事した後,1990年本田技術研究所基礎研究部門へ異動。1991年電気自動車用の電池研究開発部門を築く。チーフエンジニアであった2004年に韓国サムスンSDIに常務として移籍。中央研究所と経営戦略部門で技術経営を担当,2012年退社。2013年より現職。工学博士(東京大学,1988年)。論文,講演,コラム等多数。
主な著書に『危機を生き抜くリーダーシップ(国際文化会館新渡戸国際塾講義録3)』(共著,2013年,アイハウス・プレス),『人材を育てるホンダ 競わせるサムスン』(2014年,日経BP),『リチウムイオン電池の高安全・評価技術の最前線』(共監修,2014年,シーエムシー出版),『車載用リチウムイオン電池の高安全・評価技術』(共監修,2017年,シーエムシー出版)など。

●内容について

製造業の頂上決戦!
巨額投資で市場を席巻する中国、韓国企業。世界をリードしてた日本企業は勝機を見出せるか--。
パナソニックGSユアサ村田製作所、ATL、
サムスンSDI、LG化学、CATL、BYD……。
次世代革新電池を視野に入れた競争の最前線を徹底解説。

1887年に屋井先蔵が世界に先駆けて乾電池を発明して以来、日本の電池産業は長く世界をリードしてきた。とりわけ1960年代以降は隆盛期を迎え、次々と新たな電池を開発、生産を開始した。さらに1983年には旭化成の吉野彰氏らが経済社会を大きく変えることとなるリチウムイオン電池の原型を確立。1991年にソニーが世界初の製品化を実現した。
日本電池産業の輝かしい歴史も、21世紀に入ると様相が変わる。韓国企業が日本勢を追い上げ、2010年にはサムスンSDIがモバイル用リチウムイオン電池で世界シェアトップに立った。近年は、さらに高い性能を要求される自動車搭載用の大型リチウムイオン電池の世界で、中国勢が急速にシェアを伸ばしている。高性能電池の開発、製造の行方は、製造業の頂点に立つ自動車産業の未来をも左右する。世界の環境規制、中国の産業政策などもあいまって、日本の牙城だった電池産業が大きく変貌しようとしている。

 

●目 次

まえがき-まえがき-を読んで - 令和の未来カエルのブログ

 

第1章 日本の牙城

-第1章 日本の牙城-を読んで - 令和の未来カエルのブログ 1

1日本の底力

2 電池の基本的仕組み
3 車載用へと電池の用途広がる
4 日本の強み

 

第2章 モバイル用電池の明暗

第2章 モバイル用電池の明暗-『電池の覇者 EVの命運を決する戦い』を読んで - 令和の未来カエルのブログ

1 電池革命を起こしたリチウムイオン電池
2 戦略の欠如
3 ソニーの電池事業撤退
4 ハイエンド偏重の日本、ローエンドも重視する韓国

 

第3章 EV開発の思惑と電池戦略

第3章 EV開発の思惑と電池戦略-『電池の覇者 EVの命運を決する戦い』を読んで - 令和の未来カエルのブログ (hatenablog.com)


1 環境規制が主導する自動車の電動化
2 トヨタがEVを投入せざるを得ない事情
3 選ばれるEVとは?
4 テスラの巨額投資とリスク
5 急加速のEVシフトに潜む5つの課題
6 元素戦略と資源争奪戦
7 トップブランド参入で競争激化
8 環境対応車における日本のリード

 

第4章 中国市場の変化と欧米、インド

第4章 中国市場の変化と欧米、インド-『電池の覇者 EVの命運を決する戦い』を読んで - 令和の未来カエルのブログ

1 環境改善か下剋上か─EVシフトの先
2 翻弄される日韓企業
3 中国NEV規制への対応
4 驀進する中国EV、電池業界の異変
5 中国のEV政策変化は外資に追い風?
6 EVが減速する中国、加速する欧州
7 2020年、車載電池業界の勢力図が明確に
8 揺れる米国のルール
9 台頭するインドの電動化と矛盾

 

第5章 車載用電池の攻防

第5章 車載用電池の攻防-『電池の覇者 EVの命運を決する戦い』を読んで - 令和の未来カエルのブログ

1 合弁が難しい電池事業--韓国勢はフリーを選ぶ
2 R&D投資でも激突する日中韓
3 戦略は随時見直してこそ生きる

 

第6章 定置型蓄電池の幕開け

第6章 定置型蓄電池の幕開け-『電池の覇者 EVの命運を決する戦い』を読んで - 令和の未来カエルのブログ (hatenablog.com)

1 定置用電池業界に第三勢力参入
2 韓国企業の火災事故
3 2019年からのFIT問題

 

第7章 品質競争─安全性と信頼性のビジネス

第7章 品質競争─安全性と信頼性のビジネス-『電池の覇者 EVの命運を決する戦い』を読んで - 令和の未来カエルのブログ (hatenablog.com)

1 なぜサムスンの最新スマホは爆発したのか?
2 電池の安全性を要求する国連規則
3 中国製リチウム電池が信頼できない理由

 

第8章 成長への戦略
1 加速する次世代電池開発
2 次世代革新電池はいつ実現するか?
3 日本を取り巻く状況
4 日本勢の命運
5 ノーベル化学賞の栄誉

あとがきに代えて
参考文献・資料

 

 

以上

銘柄メモ

三菱ケミカル 宇部興産 ステラケミファ 旭化成 東レ 住友化学 WSCOPE

4188 4208 4109 3407 3402 4005 6619