W-SCOPEの2021年12月期業績予想の修正(2022/2/10付)

■はじめに

ダブルスコープ(6619)の『2021 年 12 月期通期連結業績予想の修正(2022年 2月10日付)』に決算直前に開示した理由や株価への影響などについて考察したブログ記事です。

 

 

 

■業績予想修正の内容

まず、開示された業績予想修正の内容をそのまま引用します。

各 位                                                                           2022 年 2 月 10 日

会 社 名 ダブル・スコープ株式会社

                                代表者名 代表取締役社長 崔 元 根(コ ー ド 番 号 6619 東 証 第 一 部 )

                             問 合 せ 先 取 締 役 大 内 秀 雄

 

     2021 年 12 月期通期連結業績予想の修正に関するお知らせ

 

2021 年 11 月 15 日公表の 2021 年 12 月期連結累計期間(2021 年1月1日~2021 年 12 月 31 日)の連結業績予想を下記のとおり修正することとなりましたのでお知らせいたします。

           記

2021 年 12 月期通期連結業績予想数値の修正(2021 年1月1日~2021 年 12 月 31 日)

 

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業績予想の修正

【通期業績予想修正の理由】

連結会計年度の売上高は、当第 4 四半期連結会計期間の海運事情が比較的落ち着いて推移したため、出荷がおお むね順調に進んだことから、28,000 百万円の見込みに対し 1,900 百万円上回り 29,900 百万円となる見通しです。営 業利益についても、出荷量が増加したことに加え、製品輸送のコスト負担が前回公表時より軽減されたことで、600 百 万円改善し 1,800 百万円の見通しとなりました。

また、子会社が発行した転換社債新株予約権のオプション評価額が確定し、子会社価値上昇に伴うデリバティブ 損失額が確定したことにより、通期の経常利益は△3,400 百万円、親会社株式に帰属する当期純利益は△3,000 百万円 となる見通しです。

なお、このデリバティブ転換社債を発行している間、転換社債発行会社の評価価値が上昇した 場合に損失が発生します。 以上の要因から、2021 年 11 月 15 日付の公表数値を修正いたします。

 

【業績予想に関する留意事項】

業績予想につきましては、現時点において入手可能な情報に基づき作成したものであり、実際の業績は、今後様々な要因によって予想値と異なる場合があります。

 

以 上

■決算発表直前の業績予想修正について

決算発表の前営業日の2月10日の業績予想修正について、『2月14日の決算発表と同時でもよかったのでは』と思いますが、別に珍しくないようです。

東京証券取引所東証)は、上場会社に対して、

新たに算出した予想値又は当連結会計年度の決算における数値を公表がされた直近の予想値(当該予想値がない場合は、公表がされた前連結会計年度の実績値)で除して得た数値が
a.連結売上高にあっては1.1以上又は0.9以下
b.連結営業利益にあっては1.3以上又は0.7以下
c.連結経常利益にあっては1.3以上又は0.7以下
d.親会社株主に帰属する当期純利益にあっては1.3以上又は0.7以下
のいずれかの場合は、
上場会社は、「上場会社の属する企業集団の売上高、営業利益、経常利益又は純利益について、公表がされた直近の予想値(当該予想値がない場合は、公表がされた前連結会計年度の実績値)に比較して、新たに算出した予想値又は決算において差異が生じた場合」は、直ちにその内容を開示することを義務としています。

 

https://faq.jpx.co.jp/disclo/tse/web/knowledge6851.html

東証のサイト上場会社向けナビゲーションシステム​>業績予想、配当予想の修正等 >業績予想の修正等 >業績予想の修正、予想値と決算値との差異等 より

 

今回は、連結営業利益が、直近の予想数値12億円から、18億円と50%の増加、1.5倍となったため、修正が必要になったケースです。
こういった規則があるため、決算発表の直前に業績の予想修正をする必要もあるようです。
「直ちにその内容を開示」の「直ちに」の定義は細かく決まっていないようですが、1日ぐらい待って、決算発表(イコール業績の予想修正)をすればいいのにという疑問は残ります。あえて、決算発表より別の日に開示したい理由があったのかもしれません。

 

【業績予想に関する留意事項】 業績予想につきましては、現時点において入手可能な情報に基づき作成したものであり、実際の業績は、今後様々 な要因によって予想値と異なる場合があります。

という内容はさすがに休日明けの2月14日に発表する決算も確定しているでしょうから、余計かなと思います。ただ、業績予想のお作法、お約束の文言ですので、気にする必要はなく、今回の業績予想の数字 イコール 決算での業績と考えていいでしょう。

 

 

■取引時間外のPTS(私設取引市場)の株価の急騰

業績予想の修正を受けて、取引時間外のPTS(私設取引市場)の株価は急騰しています。
2月10日のPTSの終値は875円と取引時間終値 789円からプラス96円 約12%の上昇です。出来高も上位ランキング26位と結構な数ですので、誤発注や特定の少数の投資家の取引で付けた株価でもないようです。

SBI証券でのPTSでの株価と出来高ランキング(2022年2月10日)

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SBI証券でのPTSでの株価と出来高ランキング(2022年2月10日)

発行済株式数は、54,471,600株ですから、時価総額が52億円増えた計算です。

経常利益、当期純利益は大幅な赤字の予想で、営業利益が6億円増えただけで、株価がここまで急騰するのか疑問に思うかもしれません。

 

■今期の業績予想比較

まず、今期の業績予想ですが、四季報予想などと比べて、今回の業績予想のインパクトを考えたいです。

 

▼2021年12月期の業績予想

【業績】 売上高  営業利益 経常利益 純利益 1株益(円)            

四季報        28,000   1,200     -2,500     -2,100         -38.6     

SBI証券       29,000   1,500     -2,800     -2,300         -42.2

会社修正前   28,000   1,200   ―    ―    ― 

会社修正後  29,900  1,800    -3,400   -3,000     -55.08 

 

四季報SBI証券の予想と比べて、売上高、営業利益は改善していますが、経常利益、純利益は悪化しています。

ただ、2022年4Qの売上は96億円、営業利益率は14億円と営業利益は約15%、3Qの営業利益率約2%から大きく改善しています。

直近の業績予想では4Qの売上77億円、営業利益は8億円でしたから、営業利益率は約10%でした。

 

売上がさらに増える来期には、20%以上の営業利益率も可能になるでしょう。

営業利益率の改善の見込みについては、↓のブログ記事でも解説しています。

 

W-SCOPE 2021年12月期第3四半期決算のプラス面とマイナス面 - 令和の未来カエルのブログ

 

今回の業績修正で、

2021年3Qの売上は69億円でしたから、対同年3Q比 11%から39%の増収率に

2020年4Qの売上は52億円でしたから、対前年4Q比で、48%から52%の増収率に変化します。

一般的に売上成長が続いている会社は高いPER(株価収益率)、高い株価が許容されます。

この点については、↓のブログ記事も参考にしてください。

W-SCOPEの2021年度3Q決算と今後の株価について(速報版) - 令和の未来カエルのブログ

株価は、先行指標的な要素があり、過去の業績より、将来の業績で株価は大きく変動します。今回の業績の予想修正で、来期以降のダブルスコープの強い業績に確信が持て、それが株価急騰した原因だと思います。

 

 

■来期の業績予想から株価を見積もる

まず、今期の業績予想ですが、四季報予想などと比べて、今回の業績予想のインパクトを考えたいです。

 

▼2022年12月期の業績予想

    売上高    営業利益    経常利益    純利益    1株益(円)    
四季報     34,000    2,000      2,000     1,400     25.7   (営業利益率8%)

SBI証券    39,000    8,000      7,000     6,200     113.8(営業利益率20%)

 

 

2022年2月10日時点で、東証1部全銘柄の来季予想PERは平均で14.88倍です。
過去3年間で毎年40%以上の年平均売上成長率を達成し、来期以降も20%から30%の売上成長をを達成している会社です。
保守的に見ても市場平均程度のPERの評価はされるでしょう。

仮にSBI証券の業績予想の数字を採用して、市場平均のPERで株価を計算すると
113.8 × 14.88=1693円

 

控えめな四季報予想の数字を利用した場合は
25.7 ×14.88 =約382円となります。

ただ、限界利益率が60%以上の固定費の高い事業で、15%の営業利益は達成しているので、売上が30%程度増えて、四季報予想の営業利益率は考えられません。

保守的な数字として四季報予想の売上を340億円を採用して、保守的な数字として直近の今期4Qの15%の営業利益率から営業利益を計算し、その60%程度が純利益だとすると
営業利益は51億円、純利益は30億円、一株益は56.1円です。
56.1 ×14.88 =835円となります。

この835円ぐらいが、控えめに、保守的に来期の業績から見積もった時の株価といえるのではにでしょうか。

つまり、弱気な人は、四季報の予想ぐらいの業績で株価は382円ぐらいまで下がるかもと考えていた。そんな人も下がっても835円ぐらいと考えるようになった。700円台の株価は安すぎると思って買っているのが、2月10日のPTS市場だと思います。

 

■2022年2月14日の決算発表は期待できるか

業績予想修正の内容から、2021年12月期の決算の内容はほぼ決まりました。
そのため、2月14日に発表される来期の業績予想の数字がより重要になってきます。

いままでのダブルスコープの決算前後の株価の動きを見ると、決算前に株価が上がっている場合は決算後下がり、決算前に株価が下がっている場合は決算後上がるように
決算前後で逆の動きが多かった印象です。

今回の業績予想修正を受けて、2月14日の株価は2月10日のPTSでの株価と同程度の860円から890円ぐらいの株価が予想されます。
決算前に株価が上がるパターンになるので、決算後に下がるのではとやや心配になります。

 

といった著書もある公認会計士でもある足立武志氏のコラム記事

株価急変動も!最も怖い「業績予想修正」と「決算発表」のパターンとは? | トウシル 楽天証券の投資情報メディア

より引用です。

最も怖い「業績予想修正」と「決算発表」のパターンとは
3月決算の会社の本決算が発表されるこの時期、最も怖いパターンがあります。それが「2021年3月期の業績は絶好調。でも2022年3月期は失速」というものです。


2月14日の決算発表が、『最も怖いパターン』でないことを期待したいです。
株価の反応したように、今期の業績上方修正から、来期の業績予想も期待できる可能性が高いと私は思っています。
2月10日に好材料の開示だけして、2月14日に悪材料が待っている可能性もゼロではありません。
その場合、2月14日に業績予想で好反応した高値で株価を売れた人は、ラッキーかもしれません。

2月14日にどのような株価になるかまだわかりませんが、今後の株価は、決算発表で来期の業績予想次第ですから、
急いで慌てて買うのでなく、2月14日の決算発表後の反応を見て、買うのが安全だと思います。

↓のブログ記事に説明していますが、決算での業績予想がよくても、決算後に急騰してもても1か月後には下がっていることも多いので、

 

W-SCOPE 決算後の株価の動き - 令和の未来カエルのブログ

↑のブログ記事にある通り、決算での業績予想がよくても、決算後に急騰してもても1か月後には下がっていることも多いです。
急いで買う必要はなさそうです。目安として5日、25日など比較的短期の移動平均線近くまで、もしくは下回るぐらいまで待って買うのがいいかもしれません。
なお、↑のブログ記事にある通り、決算での業績予想が悪く一時的に下がった場合は、絶好の買い場かもしれません。

ただ、2月14日に急騰した場合でも、決算発表前のリスクもありますが、根拠もない感覚で恐縮ですが、25日の移動平均線861円ぐらいまでは、積極的に買っていい株価のような感じています。

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2022年2月10日W-SCOPEの移動平均価格

 

 

■足立武志氏の著書の紹介

公認会計士でもある足立武志氏の著書は、『低PER株の落とし穴』『高成長株の落とし穴』など株式投資で成功するためのノウハウというより、失敗しないためのノウハウがよくまとまっているのでおすすめです。記事の中では楽天のリンクで紹介しましたが、アマゾンのリンクでも紹介しておきます。

ああ

 

公認会計士でもある足立氏の視線で、チャートの先見性を解説している本です。

以上

 

 

 

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